前回は、登録申請を受けた行政庁の手続について触れましたが、今回は、登録申請を受けた行政庁が、その登録を拒否する場合について概観します。
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登録拒否の目的
旅行業法6条は、旅行業・旅行業者代理業の登録申請を受けた行政庁が、その登録を拒否しなければならない場合として11の欠格事由を掲げています。
○旅行業法
(登録の拒否)
第六条 観光庁長官は、登録の申請者が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を拒否しなければならない。
一 第十九条の規定により旅行業若しくは旅行業者代理業の登録を取り消され、又は第三十七条の規定により旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から五年を経過していない者(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る
聴聞の期日及び場所の公示の日前六十日以内に当該法人の役員であつた者で、当該取消しの日から五年を経過していないものを含む。)
二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過していない者
四 申請前五年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
五 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその
法定代理人が前各号又は第七号のいずれかに該当するもの
六 心身の故障により旅行業若しくは旅行業者代理業を適正に遂行することができない者として
国土交通省令で定めるもの又は破産手続開始の決定を受けて
復権を得ない者
七 法人であつて、その役員のうちに第一号から第四号まで又は前号のいずれかに該当する者があるもの
九 営業所ごとに第十一条の二の規定による旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者
十 旅行業を営もうとする者であつて、当該事業を遂行するために必要と認められる第四条第一項第三号の業務の範囲の別ごとに
国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないもの
十一 旅行業者代理業を営もうとする者であつて、その代理する旅行業を営む者が二以上であるもの
2 略
このように、旅行業法が予め欠格事由を定めているのは、旅行業法そのものの目的によります。すなわち、第2回の記事で取り上げたように、旅行業法が制定された目的は、①旅行業務に関する取引の公正の維持,②旅行の安全の確保,③旅行者の利便の増進の3つでした。適正な旅行業者・旅行業者代理業者が適切に業務を遂行するのでなければ、旅行者の利益が害されるおそれがあります。したがって、これらの目的達成のためには、予め旅行業者・旅行業者代理業者となろうとする者に対して、業務の適正を維持させるための一定の要件を課し、これを満たさない者については、適正な業務が期待できないものとして旅行業者・旅行業者代理業者から排除する必要があります*1。この一定の要件を掲げ、登録制度の実効性を確保しているのが法6条1項です。
欠格事由
欠格事由の分類
上記のように、法6条1項は、欠格事由を11項目規定しています。これらの欠格事由は、主に次の3つの観点から分類されます*2。
⑴ 信頼性の確保
- 旅行業法を遵守しなかった旅行業者・旅行業者代理業者、またはそれに準ずる者の一定期間の排除(法6条1項1号、4号、5号、7号)
- 無登録で営業を行った者の一定期間の排除(法6条1項2号、5号、7号)
- 一般に刑罰(特に詐欺、横領などの財産に関するものを含む)に処せられた者の一定期間の排除(法6条1項2号、5号、7号)
- 暴力団の排除(法6条1項3号、8号)
⑵ 健全経営の確保
- 一般的に財産管理能力がないとされている者の排除(法6条1項6号、7号)
- 旅行業を営んでいくのに最低限必要と思われる財産的基礎のない者の排除(法6条1項10号)
⑶ 旅行業法遵守の確保
- 前記⑴①②と同様
- 旅行業務取扱管理者を選任することができない者の排除(法6条1項9号)
- 取引関係の不明確さをもたらすような者の排除(法6条1項11号)
欠格事由各論
第1号事由(登録取消し後の一定期間拒否)
法19条及び法37条は、法の規定に違反する行為(以下「法違反行為」といいます。)を行った者に対して、行政上のペナルティとして、6か月以内の業務停止又は登録取消しを行うことができる旨を定めています。本号は、このうち、より処罰の程度が重い登録取消しが行われた者に限定して、再度の登録を一定期間拒否する旨を規定しています。
かっこ書きは、法19条により、法人が旅行業の登録を取り消された場合において、取消処分のときには役員でなかった者でも、取消事由となった事柄に役員として参画していたときには、その者にも責任があるから、5年間は旅行業の登録を与えない趣旨です*3。ここでいう「役員」とは、例えば、①株式会社にあっては取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)及び監査役、②合名会社、合資会社及び合同会社にあっては定款をもって業務を執行する社員を定めた場合は当該社員、その他の場合は総社員、③公益財団法人、公益社団法人、一般財団法人及び一般社団法人にあっては理事及び監事、④独立行政法人等にあっては、総裁、理事長、副総裁、副理事長、専務理事、理事、監事等法令により役員として定められている者をいいます(旅行業法施行要領第二.2.6))。
第2号事由(刑罰を受けた者の拒否)
本号は、法違反行為か否かに関わらず禁錮以上の刑に処せられた者、又は法違反行為により罰金刑に処せられた者の登録を一定期間拒否する旨を定めています。
刑事罰における刑の軽重は、【重い方←】死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料【→軽い方】の順となりますので(刑法9条、10条1項)、「禁錮以上の刑」とは、死刑、懲役及び禁錮をいいます。したがって、拘留や科料の刑に処せられたに留まる者は、本号の欠格事由には該当しません。また、刑法上あるいは旅行業法以外の特別法違反を理由とする罰金刑に処せられた者も、本号の事由には該当しませんが、旅行業法に違反する行為を理由に罰金刑に処せられた者は、本号の欠格事由に該当します。
なお、現在、懲役及び禁錮を拘禁刑に一本化する旨の刑法の改正が行われ、これが令和7年6月1日に施行される予定ですが、これに伴い、本号の「禁錮以上の刑」も「拘禁刑以上の刑」に改められます(刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)367条)。
「この法律に違反して罰金の刑に処せられ」の意義
第1号事由において説明したように、法違反行為に対しては、業務停止又は登録取消しの処分も定められていますが、第1号事由では、このうち、登録取消処分だけが欠格事由に該当することになっています。このことから、法は、業務停止処分に留まった者に対しては登録拒否までは行わないという態度を明らかにしているものと考えられます。
一方で、法違反行為の多くに対しては罰金刑が定められていますが、行政上の処分が業務停止に留まる場合にも罰金刑を受けたことをもって登録拒否するとなれば、第1号事由において業務停止に留まる者を除外した取扱いと矛盾してしまいます。
そのため、「この法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ」は、無登録で営業していたため、法74条により100万円以下の罰金刑を受けた者が、旅行業者となることを5年間禁ずるためのものであり、それに限られると解されています*4。
第3号事由(暴力団員等の拒否)
本号は暴力団員が旅行業界に参入するのを阻止するための規定です。本号は、通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律(平成29年法律第50号・平成30年1月4日施行)による法改正で新設されたものです。
「暴力団員」とは、暴力団の構成員をいい(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号)、「暴力団」とは、その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいいます(同条2号)。
登録審査の実務においては、登録申請者が暴力団員等に該当するか否かの確認は、登録申請者から暴力団員等に該当しない旨の誓約書の提出を受けることをもって担保しています*5。
第4号事由(不正行為者の拒否)
本号は、旅行業務に関し不正な行為をしたことがある者を一定期間排除する旨を定めています。
「旅行業務に関し不正な行為をした」とは、旅行業者、旅行業者代理業者又は旅行サービス手配業者の役員又は使用人として横領、脱税、詐欺、粉飾決算等の主に経済事犯に問われた場合のほか、旅行業者又は旅行業者代理業者及び旅行サービス手配業者の登録の取消処分のための聴聞通知を出したところ、事業廃止届出書を提出してきたため、処分されなかった場合も含まれます(旅行業法施行要領第三.1)*6。
第5号事由(未成年者の拒否)
本号は、未成年者による旅行業の登録を原則として拒否する旨を規定しています。
「未成年者」とは、年齢18歳に達しない者をいいます(民法4条)。
「行為能力」とは、法律行為を自分一人で確定的に有効に行うことができる資格をいいます*7。
「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」とは、一種若しくは数種の営業を許されていない未成年者、これを許された未成年者であるものの当該営業に旅行業等が含まれない未成年者、旅行業等を含んだ営業を許されたものの法定代理人にその許可を取り消され、又は制限された未成年者をいいます(民法6条参照)。
未成年者は、原則、法律行為をするにあたり法定代理人の同意を要し(民法5条1項)、法定代理人の同意を得ずに行われた法律行為は取り消すことができ(同条2項)*8、取消権の行使として取消しの意思表示がされると、当該法律行為は初めから無効であったものとみなされます(民法121条)。そのため、全ての未成年者が旅行者との間で旅行に関する法律行為を行うことができるとすると、都度、法定代理人の同意を得る必要があるうえ、未成年者側が同意を得ずして旅行業に関する法律行為を行った場合にはいつでもこれを取り消して無効とすることができてしまいます。それでは、旅行者からすれば、法律関係が不安定になり、不測の不利益を与えることになりかねません。そこで、旅行業の登録をするに当たっては、未成年者が予めその法定代理人から許可を得て、旅行業に関する法律行為を単独で有効に行うことができる状態にあることを必要としています。
なお、未成年者が営業を行うときは、その登記をする必要があります(商法5条)*9。法定代理人の許可を公示する一般的な方法はありませんが、上記登記の申請をする際には、法定代理人の許可を得たことを証する書面を申請書に添付する必要があるため(商業登記法37条1項)*10、上記登記をもって事実上法定代理人の許可を受けているか否かを前もって確認することができます。
第6号事由(心身故障者等の拒否)
本号は、業務の適正な遂行が期待できない者及び破産手続開始決定後復権を得ていない者について登録を拒否するものです。
心身故障者等の場合
「心身の故障により旅行業若しくは旅行業者代理業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの」については、施行規則2条の2にその定めがあります。
○旅行業法施行規則
(心身の故障により旅行業又は旅行業者代理業を適正に遂行することができない者)
第二条の二 法第六条第一項第六号の
国土交通省令で定める者は、精神の機能の障害により旅行業又は旅行業者代理業を適正に遂行するに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。
本号の心身故障者等に関する部分は、従前、「成年被後見人若しくは被保佐人」(以下「成年被後見人等」といいます。)と定められていました。しかし、成年後見制度の利用の促進に関する法律(平成28年法律第29号)*11に基づく措置として、成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等を資格・職種・業務等から一律に排除する欠格条項を設けている各制度について、心身の故障等の状況を個別的・実質的に審査し、各制度ごとに必要な能力の有無を判断する規定へと適正化する必要がありました。その一環として、旅行業に登録する者の欠格事由についても、個別的審査を可能とするように改正がなされました(成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号・同年9月14日施行)151条)。
なお、上記の改正経緯に関連して、同じく業法である警備業法において、被保佐人であることを欠格事由とする定めがおかれていたところ、この規定が制定当初から憲法14条、22条1項に反するものであり、国会が同規定を改廃しなかったのが国家賠償法の適用上違法であるとされた裁判例があります*12。この裁判例では、家庭裁判所における保佐開始の審判の手続においては、自己の財産を管理・処分する能力を離れ、認知能力、判断能力等の全般的な能力や警備業務を適正に行うことが期待できるか否かが医学的に診断ないし鑑定されるものではないこと、警備業務として盗難等から財産を守るのに、契約等についてその利害得失を判断する能力や抽象的、概念的思考等が必要とされているとは考え難いし、交通誘導の警備業務において、他人の財産を預かり管理することが求められているとは通常考えられないことなどが指摘されています。それでは、旅行業法においてもかつて被後見人等が欠格事由とされていたことについて、同様に違憲違法といえるかが問題となりますが、旅行業においては旅行者から財産を直接財産を預かって旅行商品を提供したり旅行者に代わって運送サービス等の手配を行うこと、そのため旅行業者には財産的基礎が要求されていることなどからすると、旅行業の営業にあたっては自己の財産を管理・処分する能力そのものが問題とされることとなります。そうすると、旅行業法が、被後見人等を欠格事由としていたことが不合理であるとは直ちにはいえないと思います。したがって、上記裁判例の射程は、旅行業法のケースには及ばないものと考えます。
「精神の機能の障害により旅行業又は旅行業者代理業を適切に遂行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うこと」ができるか否かの確認は、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課が関係部署に宛てた通達において、誓約書等により候補者本人にこれらの者に該当しないことの確認を行う方法で差し支えなく、必要に応じて医師の診断書等により確認することが考えられる旨述べていることが参考になります。上記のような本号の改正の趣旨からすれば、成年被後見人又は被保佐人であることのみをもって本号の欠格事由に当たるとすることはできません。観光庁は、第1種旅行業の登録申請の際に、本号所定の事由を包含した欠格事由に該当しない旨の誓約書を提出させることとしており*13、都道府県においても概ね同様の宣誓書を提出させることとしているようです。
破産者の場合
「復権」とは、破産者が破産手続開始決定により喪失した法律上の資格を回復することをいいます。
「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」とは、破産手続開始決定を受けた者で、破産法255条1項各号事由に該当せず、同法256条1項の復権の決定を受けていないものをいいます。
○破産法
第二百五十五条 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、
復権する。次条第一項の
復権の決定が確定したときも、同様とする。
一 免責許可の決定が確定したとき。
二 第二百十八条第一項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
三 再生計画認可の決定が確定したとき。
四 破産者が、破産手続開始の決定後、第二百六十五条の罪について有罪の確定判決を受けることなく十年を経過したとき。
2、3 略
第二百五十六条 破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、
復権の決定をしなければならない。
2~6 略
第7号事由(一定の法人の拒否)
本号は、法人が旅行業の登録をしようとするときに、当該法人の役員の中に第1号事由から第4号事由まで又は第6号事由のいずれかに該当する者がある場合に、登録を拒否する旨を定めています。
第8号事由(暴力団員等支配事業活動者の拒否)
本号は、第3号事由において規定される暴力団員等に事業活動を支配されている者の登録を拒否する旨を定めています。
例えば、暴力団員を反復的に利用したり、便宜供与等を通じて暴力団と一体であるとみなせる場合は本号の欠格事由に該当すると考えられます*14。産業廃棄物処理業の事案ですが、産業廃棄物処理業を営む法人の実質的な経営者が、暴力団を脱退後も当該暴力団の構成員と頻繁に連絡をとっていた等の事情を考慮して、暴力団員等がその事業活動を支配する者に該当すると判断したものとして、名古屋地判平成15年6月25日判時1852号90頁が参考になります。
また、暴力団員等が事業活動を支配しているか否かについて、同様の欠格事由が定められている住宅宿泊事業者の場合は、住宅宿泊事業者に係る情報を警察と共有し、連携を図りながら把握していくこととされていますが*15、旅行業者についても同様の措置が採られているものと思われます。
第9号事由(旅行業務取扱管理者選任要件)
本号は、旅行業務取扱管理者を必要な人数配置できない者の登録を拒絶する旨を定めています。
「旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者」とは、旅行業取扱管理者としての資格を有する者が、社員として自社の営業所の数に匹敵するだけいないような者をいいます*16。旅行業務取扱管理者は、原則、他の営業所の旅行業務取扱管理者となることができません(複数の営業所を掛け持ちすることが許されません)ので(法11条の2第4項)、営業所の数だけ旅行業務取扱管理者の人数が必要です(例外として複数の営業所を掛け持ちできる場合がありますが、これは法11条の2について扱う回で詳説します。)。
営業所とは、案内所、出張所、連絡書、サービスステーション等の名所の如何を問わず、実質的に旅行業務を取り扱う場所をいい(旅行業法施行要領第ニ.2.1))、営業所の登録が必要になりますが(法4条1項2号)、登録した営業所には旅行業務取扱管理者の選任が必要となります。
なお、旅行業務取扱管理者は、どの営業所にも1人選任すればよいというものではなく、所属する従業員が10名以上の大規模な営業所において1人の旅行業務取扱管理者では所定の業務に関し管理、監督が十分できない場合には、2人以上の旅行業務取扱管理者を選任しておく必要があり(旅行業法施行要領第八.1))、この点も登録申請時に審査されるようです(例えば、東京都産業労働局「旅行業の新規登録を申請される方へ(第2種・第3種・地域限定)」第3⑸③参照)。
第10号事由(財産的基礎要件)
本号は、登録業務範囲に応じて定められた基準資産額を満たさない者の登録を拒否する旨を定めています。
基準資産額については、規則3条及び4条に定めがあります。
○旅行業法施行規則
(財産的基礎)
第三条 法第六条第一項第十号の
国土交通省令で定める基準は、次条に定めるところにより算定した資産額(以下「基準資産額」という。)が、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める額以上であることとする。
一 登録業務範囲が第一種旅行業務である旅行業(以下「第一種旅行業」という。)を営もうとする者 三千万円
二 登録業務範囲が第二種旅行業務である旅行業(以下「第二種旅行業」という。)を営もうとする者 七百万円
三 登録業務範囲が第三種旅行業務である旅行業(以下「第三種旅行業」という。)を営もうとする者 三百万円
四 登録業務範囲が地域限定旅行業務である旅行業(以下「地域限定旅行業」という。)を営もうとする者 百万円
第四条 基準資産額は、第一条の四第一項第一号ニ又は第二号ハに規定する
貸借対照表又は財産に関する調書(以下「基準資産表」という。)に計上された資産(創業費その他の繰延資産及び営業権を除く。以下同じ。)の総額から当該基準資産表に計上された負債の総額及び法第八条第一項に規定する営業保証金の額(新規登録の申請に係る基準資産額を算定する場合であつて申請者が保証社員(法第四十八条第一項に規定する保証社員をいう。以下同じ。)となることが確実であるとき、又は更新登録の申請に係る基準資産額を算定する場合であつて申請者が保証社員であるときには、法第四十九条の規定により納付すべきこととされる弁済業務保証金分担金の額)に相当する金額を控除した額とする。
2 前項の場合において、資産又は負債の評価額が基準資産表に計上された価額と異なることが明確であるときは、当該資産又は負債の価額は、その評価額によつて計算するものとする。
3 第一項の規定にかかわらず、前二項の規定により算定される額に増減があつたことが明確であるときは、当該増減後の額を基準資産額とするものとする。
「繰延資産」とは、会社計算規則74条に規定する繰延資産をいい、「営業権」とは、同規則74条に規定するのれんをいいます(旅行業法施行要領第三.2.1)、2))。
施行規則4条2項により資産の増加が認められる場合とは、固定資産の市場評価額が高騰しているなど市場性のある資産の再販売価格の評価額が、基準試算表計上額を上回る旨の証明があった場合とされ、同項により資産の額が減額される場合とは、①債権が保全されておらず、請求権の行使ができない資産、又は相手方の倒産等により回収不能と認められる資産を計上していた場合、②債権の存在が明らかでない資産を計上していた場合とされています(旅行業法施行要領第三.2.3)、4))。
同条3項により資産の増減がなされる場合とは、①公認会計士又は監査法人による監査証明を受けた中間決算による場合、②増資、贈与、債務免除等があったことが証明された場合とされています(旅行業法施行要領第三.2.5))。
本号は、旅行業を営もうとする者に対してのみ適用され、旅行業者代理業を営もうとする者に対しては適用されません。旅行業者代理業者は、所属旅行業者を代理して業務を行うものですので、所属旅行業者が財産的基礎要件を満たしていれば、旅行者が不利益を被ることはないためです*17*18。
なお、旅行業界は利益率が、第1種旅行業者であっても1%未満であること*19から、基礎資産要件を緩和すべきとの意見も出ています。これに対して、国土交通省は、現時点では、旅行業者の状況に応じ、資産の再評価や増資を通じて基準資産要件を満たすことを確認するなど、柔軟な対応を行っているものの、消費者保護の観点から基準資産要件を抜本的に見直すことは考えていない旨述べています*20。私見としても、旅行者の利益を保護する観点から設けられた基準資産要件を緩和するのは、妥当とは言えないと考えます。
第11号事由(二者以上の代理の禁止)
本号は、旅行業者代理業を営もうとする者が複数の旅行業者を代理する場合に、その登録を拒絶する旨を定めています。
財産的基礎のない旅行業者代理業者が、自己の名において、または無権代理によって業務を行ったとすれば、旅行者の利益が害されてしまいます。そこで、本号は、旅行業者代理業者は所属旅行業者の専属として、所属旅行業者の監督責任を強化しようとする趣旨に出たものです。所属旅行業者の専属とすることで、仮に無権代理行為が発生した場合であっても、所属旅行業者の表見代理が成立し、旅行者の保護が図られる余地が高くなります*21。
登録拒否の通知
登録申請を受けた行政庁が採るべき手続は、次のとおり定められています。
○旅行業法
(登録の拒否)
第六条 略
2 観光庁長官は、前項の規定による登録の拒否をした場合においては、遅滞なく、理由を付して、その旨を申請者に通知しなければならない。
登録申請を受けた行政庁は、登録拒否をした場合には、申請者に対して、理由を付したうえで登録拒否した旨を通知する必要があります。行政処分の手続の公正を確保するとともに、登録拒否された申請者に対して不服申立ての資料を提供する趣旨で行われるものです。
当該通知の法的性質等については、第7回の記事において詳説しましたので、そちらをご確認ください。
まとめ
旅行業の登録審査は、行手法の適用があるため、欠格事由に対する審査基準がある程度明確に定められています。登録申請を行う際には、各登録行政庁のホームページ等を確認するようにしてください。
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