弁護士清水大地のブログ

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旅行法令研究〔第9回〕~旅行業法編:旅行業・旅行業者代理業の登録制度⑤(第6条の2)~

 今回は、旅行業法における登録制度を支える重要な要素の一つである、有効期間に関する規定について概観します。

 前回の記事はこちら↓↓↓

ds-law.hatenablog.jp

 

 

旅行業の登録の有効期間

 旅行業法6条の2は、旅行業の登録の有効期間を、登録の日から起算して5年とする旨を定めています。

○旅行業法
(登録の有効期間)
第六条の二 旅行業の登録の有効期間は、登録の日から起算して五年とする。

 

 「登録の日」とは、登録行政庁に備える登録簿に搭載された日をいいます(登録申請書類等を提出した日ではありません。)。登録日は、登録行政庁から送られてくる通知等で確認することができます。

 旅行業法は、消費者保護の観点から、3条以下で登録制度を採用しており、登録にあたっては、登録範囲に応じた財産的基礎が要求されています(法6条1項10号)。財産的基礎は、登録の可否の基準の中で最も重要であり、旅行業者が営業を継続する間この要件を満たし続けなければ消費者保護に欠けてしまいます。そのため、旅行業者が財産的基礎の要件を満たしているか否かのチェックは、登録申請時だけでは不十分であり、定期的な確認が必要です。そのため、旅行業法は、旅行業の登録の有効期間を設けて、5年ごとに登録基準に適合しているか否かを確認することとしました*1

 なお、この有効期間は、かつては登録の日から3年とされていましたが、許可等の有効期間の延長に関する法律(平成9年法律第105号・同年11月21日施行)*215条に基づく法改正により、5年に延長されました。

 

本条の適用範囲

 本条は、「旅行業の登録の有効期間」と規定されていることから分かるように、旅行業に対してのみ適用されます。したがって、旅行業者代理業に対しては本条の適用はないため、旅行業者代理業の登録には有効期間の定めはありません。

 旅行業者代理業については、登録審査に当たり、財産的基礎の確認が行われないうえ(法6条1項10号)、経営者・役員の適格性や旅行業務取扱管理者の存否に対する確認は、所属旅行業者の登録の更新を通して行われるとともに、随時行う立入検査(法70条3項、4項)によって担保されるため、あえて有効期間を設けて適格性を審査する必要性が乏しいからです*3

 

本条違反の効果

 有効期間を過ぎた登録によって旅行業を営むことは、当然に無登録営業となり、罰則(法74条1号)の適用があるほか、再度の登録審査における欠格事由(法6条1項2号)となります。

 

まとめ

 以上のように、旅行業の登録の有効期間は、旅行業の登録制度を支える重要な要素の一つです。旅行業を5年を超えて継続するのであれば、当然に登録を更新する必要がありますが、登録の更新時期に合わせて登録範囲の変更等を考える場合には、有効期間内に登録範囲の変更手続も間に合うように留意が必要です。

 

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*1:旅行法制研究会『旅行業法解説〔第3版〕』(トラベルジャーナル,1992年)83頁

*2:この法律は、平成9年2月の閣議決定「申請負担軽減対策」に基づき、申請等に伴う手続きの簡素化、電子化、ペーパーレス化などを迅速かつ強力に推し進め、今世紀中に申請等に伴う国民の負担感を半減することを目標として、諸対策の実現に努めるとされたところ、その一環として、有効期間のある許認可等について、「明らかに不適切なものを除き、原告の有効期間を倍化する。倍化が困難なケースでも最大限延長する。」という方針に沿って見直しを行い、16法律にわたる改正を一括法として取りまとめたものです。第141回国会衆議院本会議第8号小里貞利中央省庁改革等担当大臣発言006。

*3:前掲旅行業法解説83頁