弁護士清水大地のブログ

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旅行法令研究〔第6回〕~旅行業法編:旅行業・旅行業者代理業の登録制度②(第4条)~

前回から,旅行業と旅行業者代理業の登録制度について取り上げていますが,今回は登録手続についてです。前回の記事はこちら↓↓↓

ds-law.hatenablog.jp

 

 

登録申請書の作成

 旅行業又は旅行業者代理業の登録を受けるためには,それらの登録の申請手続を行う必要があります。

 法4条1項は,旅行業・旅行業者代理業の登録を受けようとする者は,申請書(以下「登録申請書」といいます。)を提出しなければならないとしています。したがって,申請手続をするにあたっては,まずは法4条1項に定める事項を記載した申請書を作成することになります。

 

○旅行業法
(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を観光庁長官に提出しなければならない。
 氏名又は商号若しくは名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
 主たる営業所及びその他の営業所の名称及び所在地
 旅行業を営もうとする者にあつては、企画旅行(第二条第一項第一号に掲げる行為を行うことにより実施する旅行をいう。以下同じ。)を参加する旅行者の募集をすることにより実施するものであるかどうかその他の旅行業務に関する取引の実情を勘案して国土交通省令で定める業務の範囲の別
 旅行業を営もうとする者にあつては、旅行業者代理業を営む者に旅行業務を取り扱わせるときは、その者の氏名又は名称及び住所並びに当該旅行業務を取り扱う営業所の名称及び所在地
 旅行業者代理業を営もうとする者にあつては、その代理する旅行業を営む者の氏名又は名称及び住所
 (略) 

 

 ここに定められているように,登録申請書には,

 ① 氏名,商号,名称(法人の場合はあわせて代表者の氏名)

 ② 営業所の名称・所在地

 ③ 業務範囲の別(旅行業の場合)

 ④ 旅行業者代理業者の氏名,名称・住所・旅行業務を取り扱う営業所の名称・所在地(旅行業者が旅行業者代理業者を使う場合)

 ⑤ 所属旅行業者の氏名,名称・住所(旅行業者代理業者の場合)

の5つを記載する必要があります。これらの記載がないものを提出しても,要件不備であるため,窓口で受理されない可能性があります。

 もっとも,登録申請書の様式はインターネットから取得することができますので,実際はその空欄を埋めるだけで足ります(様式はこちら)。

 

業務の範囲の別

 法4条1項3号は,旅行業の登録を受けようとする場合は,「国土交通省令で定める業務の範囲の別」を申請書に記載することを求めています。ここでいう「国土交通省令」とは施行規則のことで,施行規則1条の3には,①第1種旅行業務,②第2種旅行業務,③第3種旅行業務,④地域限定旅行業務の4業種が設けられ,それぞれの業務の範囲が定められています。したがって,旅行業の登録を受けようとするのであれば,いずれの業務範囲で申請をすべきなのかを検討する必要があります。

 

○旅行業法施行規則
(業務の範囲)
第一条の三 法第四条第一項第三号の国土交通省令で定める業務の範囲(以下「登録業務範囲」という。)の別は、次のとおりとする。
 第一種旅行業務(法第二条第一項各号に掲げる行為(法第十四条の二第一項の規定により他の旅行業者を代理して企画旅行契約を締結する行為を含む。以下この条において同じ。))
 第二種旅行業務(法第二条第一項各号に掲げる行為のうち本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。次号において同じ。)の実施に係るもの以外のもの)
 第三種旅行業務(法第二条第一項各号に掲げる行為のうち企画旅行(一の企画旅行ごとに一の自らの営業所の存する市町村(特別区を含む。以下同じ。)の区域、これに隣接する市町村の区域及び観光庁長官の定める区域(次号及び第十条の五において「拠点区域」という。)内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの以外のもの)
 地域限定旅行業務(法第二条第一項各号に掲げる行為のうち企画旅行(一の企画旅行ごとに一の拠点区域内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの及び同項第三号から第五号までに掲げる行為(一の行為ごとに一の拠点区域内における運送等サービスの提供に係るものを除く。)に係るもの以外のもの)

 

第1種旅行業務

 第1種旅行業務は,法2条1項各号に掲げる全ての行為を取り扱う業務をいいます(施行規則1条の3第1号)。つまり,海外・国内の募集型・受注型企画旅行の企画・実施,海外旅行・国内旅行の手配旅行,及び他社の募集型企画旅行の代売を行うことができます*1。登録業務範囲が第1種旅行業務である旅行業を「第1種旅行業」といい(施行規則3条1号),第1種旅行業務を取り扱う旅行業者を「第1種旅行業者」といいます。

 

第2種旅行業務

 第2種旅行業務は,法2条1項各号に掲げる旅行業務のうち,海外の募集型企画旅行を除いた範囲を取り扱う業務をいいます(施行規則1条の3第2号)。つまり,国内の募集型企画旅行の企画・実施,海外・国内の受注型企画旅行の企画・実施,海外旅行・国内旅行の手配旅行,及び他社の募集型企画旅行の代売を行うことができます*2。登録業務範囲が第2種旅行業務である旅行業を「第2種旅行業」といい(施行規則3条2号),第2種旅行業務を取り扱う旅行業者を「第2種旅行業者」といいます。

 

第3種旅行業務

 第3種旅行業務は,法2条1項各号に掲げる行為のうち,拠点区域内において実施されるもの以外の募集型企画旅行を除いた範囲を取り扱う業務をいいます(施行規則1条の3第3号)。なお,同号でいう「企画旅行」は募集型企画旅行を指します(同条2号参照)。したがって,海外・国内の受注型企画旅行の企画・実施,海外旅行・国内旅行の手配旅行,及び他社の募集型企画旅行の代売を行うこと,さらに,実施する区域を拠点区域に限定し,国内の募集型企画旅行の企画・実施が可能です*3。登録業務範囲が第3種旅行業務である旅行業を「第3種旅行業」といい(施行規則3条3号),第3種旅行業務を取り扱う旅行業者を「第3種旅行業者」といいます。

 

地域限定旅行業務

 1.概要

 地域限定旅行業務は,法2条1項各号に掲げる行為のうち,拠点区域内において実施されるもの以外の企画旅行と,拠点区域内における運送等サービスの提供に係るもの以外の手配旅行の大きく2つを除いた範囲を取り扱う業務をいいます(施行規則1条の3第4号)。つまり,①拠点区域内で実施される企画旅行と,②拠点区域内における運送等サービスの提供に係る手配旅行に範囲が限られているということです。登録業務範囲が地域限定旅行業務である旅行業を「地域限定旅行業」といい(施行規則3条4号),地域限定旅行業務を取り扱う旅行業者を「地域限定旅行業者」といいます。

 

 2.改正の経緯

 地域限定旅行業は,平成29年の法改正によって新たに導入された形態の旅行業です。

 近年,訪日外国人の増加が顕著であり,法改正が行われた前年の平成28年には,令和2年の目標であった2000万人を早くも超えることとなりました。訪日外国人の多くは,やはりゴールデンルートに集中しているため,地方創生の意味合いからも,この訪日外国人を全国各地に呼び込むことが重要な課題となりました*4。また,リピーターの訪日外国人からは,地域独自の文化やさんぎょうま体験・交流などを重視した旅行商品に対するニーズが高まりつつありました*5

 これまでの旅行商品は,出発地側の旅行業者が企画する形態になっていたため,旅行商品の内容が平板なものになりがちで,地域の魅力を十分に活かした旅行商品を提供できていませんでした。

 しかし,上述のように,訪日外国人を始めとして,旅行スタイルが,団体旅行から個人旅行へ,物の消費から事の消費へ大きく変化する中では,地域の魅力を活かした体験交流型の旅行商品を企画,販売しやすくする環境を整備することが重要となります*6

 そこで,目的地側の関係で旅行商品を企画することで,地域の観光資源・魅力を活かし,消費者のニーズに合った多様な旅行商品の提供を可能とするように,地域限定旅行業を創設することとなりました。これに伴い,旅行業務取扱管理者の営業所への配置に関する規制を緩和し,地域に限定した知識のみで取得可能な地域限定の旅行業務取扱管理者の資格制度を創設して,地域の旅館,ホテル棟が地域の魅力を活かした体験交流型の旅行商品を販売しやすくなる環境が整備されることが期待されています*7

 

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その他の記載事項

主たる営業所の意義

 「主たる営業所」とは,旅行業務に関する営業の本拠となる営業所をいい,申請者の住所,登記簿上の会社の本店の所在地とは必ずしも一致する必要はありません(旅行業法施行要領第二.2.5))。

 

添付書類

 登録申請書の本体を作成しても,それだけでは登録の申請手続をすることができません。法4条2項は,登録申請書には,別途書類を添付しなければならないとしています。

 

○旅行業法
(登録の申請)
第四条 (略)
 申請書には、事業の計画その他の国土交通省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。

 

 この添付書類が何であるかは,施行規則1条の4に定められています。同条1項に定められているように,大きく,旅行業・旅行業者代理業の登録を受けようとする者が「法人」なのか「個人」なのかによって,添付書類が異なります。したがって,まずは,法人として登録を受けるのか,個人として登録を受けるのかを確認する必要があります。

 

○旅行業法施行規則
(新規登録の添付書類)
第一条の四 法第四条第二項の国土交通省令で定める事項を記載した書類は、次のとおりとする。
 申請者が法人である場合にあつては、次に掲げる書類
 定款又は寄附行為
 登記事項証明書
 次に掲げる事項を記載した書類
(1) 旅行業務に係る事業の計画
(2) 旅行業務に係る組織の概要
 旅行業に係る申請については、次に掲げる書類
(1) 最近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書
(2) 申請者の登録業務範囲が第一種旅行業務である場合にあつては、(1)に掲げる書類について公認会計士公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。)、監査法人、税理士又は税理士法人の確認を受けたことを証明する書類
 法第六条第一項第一号、第二号、第四号及び第六号から第十号まで(旅行業者代理業に係る申請については、同項第一号、第二号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号)のいずれにも該当しないことを証する書類
 旅行業者代理業に係る申請については、代理業契約(旅行業者代理業に係る契約をいう。以下同じ。)の契約書の写し
 申請者が個人である場合にあつては、次に掲げる書類
 住民票の写し
 申請者が未成年者であるときは、その法定代理人の氏名及び住所(法定代理人が法人である場合にあつては、その商号又は名称及び住所並びにその代表者の氏名)を記載した書類(申請者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者であるときは、その法定代理人の許可を受けたことを証する書面)
 旅行業に係る申請については、第二号様式による財産に関する調書
 法第六条第一項第一号から第六号まで及び第八号から第十号まで(旅行業者代理業に係る申請については、同項第一号から第六号まで、第八号、第九号及び第十一号)のいずれにも該当しないことを証する書類
 前号ハ及びヘに掲げる書類
 (略)

 

 もっとも,上記に掲げる書類以外にも,追加書類が必要となる場合がありますので,登録を受ける役所に事前に確認しておくべきでしょう。たいていの場合必要になる書類について,以下に記載します。

 

第1種旅行業,第2種旅行業,第3旅行業,地域限定旅行業の登録を受ける場合

 旅行業の登録を受ける場合には,下記の添付書類が必要となります*8

 ① 定款又は寄附行為(個人の場合は不要)

 ② 会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)(個人の場合は「住民票」)

 ③ 役員の欠格事由に該当しない旨の宣誓書(個人の場合は本人分)

 ④ 旅行業務の事業計画・組織概要を記載した書面

 ⑤ 最近の事業年度における貸借対照表損益計算書(個人の場合は「財産に関する調書」)

 ⑥ 公認会計士または監査法人による財務監査を受けている場合は当該監査証明。それ以外は納税申告書の写し等。

 ⑦ 旅行業協会が発行する「入会確認書」の写し

 ⑧ 旅行業務取扱管理者選任一覧表

 ⑨ 選任した旅行業務取扱管理者の合格証の写し

 ⑩ 選任した旅行業務取扱管理者の履歴書

 ⑪ 選任した旅行業務取扱管理者が欠格事由に該当しない旨の宣誓書

 ⑫ 事故処理体制についての書類

 ⑬ 旅行業約款

 

旅行業者代理業の登録を受ける場合

 旅行業者代理業の登録を受ける場合には,下記の添付書類が必要となります*9

 ① 旅行業者代理業業務委託と契約書の写し

 ② 定款又は寄附行為(個人の場合は不要)

 ③ 会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)(個人の場合は「住民票」)

 ④ 役員の欠格事由に該当しない旨の宣誓書(個人の場合は本人分)

 ⑤ 旅行業務の事業計画・組織概要を記載した書面

 ⑥ 旅行業務取扱管理者選任一覧表

 ⑦ 選任した旅行業務取扱管理者の合格証の写し

 ⑧ 選任した旅行業務取扱管理者の履歴書

 ⑨ 選任した旅行業務取扱管理者が欠格事由に該当しない旨の宣誓書

 

 なお,旅行業・旅行業者代理業のいずれも,個人で登録を受ける場合には,本人確認情報の提供をもって,住民票の添付が不要となります(施行規則1条の4第2項,第3項)

 

○旅行業法施行規則
(新規登録の添付書類)
第一条の四 (略)
 前項の規定にかかわらず、観光庁長官が住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第三十条の九の規定により地方公共団体情報システム機構から当該申請者に係る機構保存本人確認情報(同法第三十条の九に規定する機構保存本人確認情報をいう。以下同じ。)のうち住民票コード(同法第七条第十三号に規定する住民票コードをいう。以下同じ。)以外のものの提供を受ける場合の法第四条第二項の国土交通省令で定める事項を記載した書類は、前項第一号及び第二号ロからホまでに掲げるものとする。
 第一項の規定にかかわらず、都道府県知事が住民基本台帳法第三十条の十一第一項(同項第一号に係る部分に限る。)の規定により地方公共団体情報システム機構から当該申請者に係る機構保存本人確認情報のうち住民票コード以外のものの提供を受ける場合又は同法第三十条の十五第一項(同項第一号に係る部分に限る。)の規定により当該申請者に係る都道府県知事保存本人確認情報(同法第三十条の八に規定する都道府県知事保存本人確認情報をいう。以下同じ。)のうち住民票コード以外のものを利用する場合の法第四条第二項の国土交通省令で定める事項を記載した書類は、第一項第一号及び第二号ロからホまでに掲げるものとする。

 

登録申請書の提出

 登録申請書の準備が整ったら,それらを役所に提出することになります。登録申請書等の提出先がどこであるかは,施行規則1条の2に定められています。

 

○旅行業法施行規則
(新規登録及び更新登録の申請手続)
第一条の二 法第三条の規定による旅行業又は旅行業者代理業の登録(以下この節において「新規登録」という。)又は法第六条の三第一項の規定による有効期間の更新の登録(以下「更新登録」という。)の申請をしようとする者は、次の区分により、当該各号に掲げる行政庁に、第一号様式による新規登録(更新登録)申請書を提出しなければならない。この場合において、更新登録の申請については、有効期間の満了の日の二月前までに提出するものとする。
 業務の範囲が次条に規定する第一種旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 観光庁長官
 業務の範囲が次条に規定する第二種旅行業務、第三種旅行業務又は地域限定旅行業務である旅行業の新規登録又は更新登録の申請をしようとする者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
 旅行業者代理業の新規登録の申請をしようとする者 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事

 

 同条に定めるように,登録申請書の提出先は,その登録を受けようとする旅行業務の範囲によって異なります。すなわち,

 ・ 第1種旅行業 → 観光庁長官

 ・ それ以外の旅行業 → 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事

と区分されています。

 現実問題として書類を持って行く先となる場所は,下記のリンク先にに一覧が掲載されていますので,そちらで確認してください。

 ⇒ 日本旅行業協会「登録行政庁

 

第6回のまとめ

 旅行業・旅行業者代理業の登録を受けるにあたっては,まずどの業務範囲の登録を受ければいいのかを検討したうえで,必要となる書類を作成し,所定の登録行政庁へ提出する必要があります。登録申請手続をするだけでもある程度の時間を要することが理解いただけると思いますし,書類の一つを集めるだけでも手間がかかります。旅行業・旅行業者代理業の登録を受けることを検討する場合には,時間的余裕をもってされるのがよろしいでしょう。

 

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*1:日本旅行業協会「「旅行業」とは【「旅行業」の定義-旅行業法第2、3条】

*2:前掲「旅行業」とは

*3:前掲「旅行業」とは

*4:第193回国会衆議院国土交通委員会第15号神谷委員発言032・田中国土交通副大臣発言033

*5:観光庁旅行業法の改正について」13頁

*6:第193回国会参議院国土交通委員会第17号石井国土交通大臣発言020

*7:前掲国土交通委員会第15号田中国土交通副大臣発言033

*8:日本旅行業協会「旅行業新規登録申請/申請書類一覧【G】

*9:日本旅行業協会「旅行業者代理業新規更新登録申請/申請書類一覧【H】