弁護士清水大地のブログ

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旅行法令研究〔第3回〕~旅行業法編:定義規定(第2条)①~

 前回から,旅行業法の特集となっていますが,今回から各論,逐条で条文を見ていく回になります。前回記事はこちら ↓ ↓ ↓

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 第1条の目的規定は前回記事で取り上げているので,今回と次回に分けて第2条の定義規定をみていくこととします。

 

 

定義規定の意義

 近年立法される法律には,その多くに定義規定が置かれており,その法律の中で登場する主な用語の定義が一つ一つ示されています。この定義規定は,その法律において使用される用語が社会通念からすればその意義に広狭があり,あるいはいろいろに解釈される余地があるため,法律を分かりやすくし,また解釈上の疑義を少なくするために設けられています*1

 条文を読んでいて,ある用語がどのような意味で使われているのかよく分からないという場合には,定義規定に戻って,その法律でその用語がどのように使われているのかを確認することが有用です。

 

「旅行業」の定義

(定義)
第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
 前号に掲げる行為に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービス(以下「運送等関連サービス」という。)を旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等関連サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等関連サービスを提供する者との間で締結する行為
 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
 運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為
 前三号に掲げる行為に付随して、旅行者のため、運送等関連サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
 第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、運送等関連サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等関連サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
 第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
 旅行に関する相談に応ずる行為
 (略)
 この法律で「企画旅行契約」とは、第一項第一号、第二号及び第八号(同項第一号に係る部分に限る。)に掲げる旅行業務の取扱いに関し、旅行業を営む者が旅行者と締結する契約をいう。
 この法律で「手配旅行契約」とは、第一項第三号、第四号、第六号(同項第三号及び第四号に係る部分に限る。)、第七号(同項第三号及び第四号に係る部分に限る。)及び第八号(同項第三号及び第四号に係る部分に限る。)に掲げる旅行業務の取扱いに関し、旅行業を営む者が旅行者と締結する契約をいう。
 (略)

 

 法2条1項柱書を読むと,「旅行業」の定義が示されています。ここでは「報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業……をいう」とされているため,「旅行業」といえるための要件は,①次に掲げる行為,すなわち法2条1項各号に該当する行為を行うこと,②法2条1項各号の行為を事業として行っていること,③法2条1項各号の行為を報酬を得て行っていること,の3つとなります。

 

①法2条1項各号に掲げる行為

 「旅行業」にあたるかどうかを考える上で,まずは,一つ目の要件である,法2条1項各号に掲げる行為にあたるかどうかの判定を行います。これから行おうとする行為が,法2条1項各号のいずれにも該当しないという場合には,その行為は「旅行業」にはあたらないため,旅行業の登録を受けることなく行うことができるということになります。

 旅行業は,「基本的旅行業務(運送又は宿泊についての業務)」と「付随的旅行業務(運送又は宿泊以外のサービスについての業務)」とに区分されます(旅行業法施行要領第一.1.3))。以下では,各号の行為について,これらの区分に従って確認していきます。

 

基本的旅行業務

1号の行為(企画旅行)

 1.概要

 1号は,基本的旅行業務としての企画旅行についての規定です。企画旅行を行う事業者は「旅行業者」の登録が必要となることが示されています。企画旅行は,「募集型企画旅行」と「受注型企画旅行」に二分されますが,本号はその両者について規定しています。これらの業務の取扱いに関し,旅行業者と旅行者とが締結する契約を「企画旅行契約」といいます(法2条4項)。

 2.改正の経緯

 現在の「企画旅行」の概念は,旅行業法が平成17年4月1日に改正された時に導入されたもので,それまでは「主催旅行」と「企画手配旅行」という概念で区別されていました。「主催旅行」とは,旅行会社が予めツアーの日程やコース,価格等を設定し,参加する旅行者を募集して実施する形態の旅行を指します。一方,「手配旅行」とは,旅行会社が予めツアーを組むのではなく,旅行者の求めに応じて,交通機関や宿泊施設の予約等を行い実施する形態の旅行を指します。そして,手配旅行のうち,旅行会社が,旅行者から個別の依頼を受けて,単発の手配だけでなく旅行計画全体を策定するものを「包括料金特約付企画手配旅行」といいました。当時の旅行業法では,主催旅行契約を締結した旅行業者に対しては,旅程管理責任や旅程保証責任が課せられていましたが,企画手配旅行契約を締結した旅行業者にはこれらの責任が課せられていませんでした*2

 平成17年改正当時,旅行需要がますます多様化,高度化する中で,旅行者の依頼に応じて,旅行業者が自らの知見や取引関係を利用し,旅行者の個別の希望に対応しながら旅行計画を作成する旅行形態が増加するとともに,苦情や紛争も,旅行計画の作成から旅程管理に至るまで,幅広く生じるようになってきました。そのため,旅行者の保護の充実を図ることが重要な課題となっていました*3

 そこで,新たな旅行契約の態様として,あらかじめ又は旅行者からの依頼により,旅行に関する計画を作成するとともに,運送又は宿泊のサービスの提供に係る契約を自己の計算において締結する企画旅行契約を設定し,この企画旅行の実施について旅程管理業務を講ずることとされました。そして,ここでの企画旅行は「募集型企画旅行」と「受注型企画旅行」の2つに分け,従来の主催契約を前者,従来の包括料金特約付企画手配旅行を後者に位置づけました*4

 つまり,ここでの改正の最大の狙いは,従来の包括料金特約付企画手配旅行についても,旅行業者の旅程管理責任,旅程保証責任を負わせる点にあったといえます(旅程管理責任や旅程保証責任の詳細については,各項目で触れることとします。)。

 3.企画旅行の種類と内容

 企画旅行は,前述のように,「募集型企画旅行」と「受注型企画旅行」の2つに区別されます。

 

 -募集型企画旅行-

  a.概要

 募集型企画旅行とは,従来の主催旅行のことで,いわゆるパッケージツアーのことを意味します。上記の条文では,「旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス……の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ……作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為」の部分が募集型企画旅行のことを示しています。

  b.「募集」の意義

 本号でいう「募集」とは,旅行契約の申込みを(不特定又は多数の)旅行者に対し誘引することをいいます(旅行業法施行要領第一.3.3)(1))。一定の参加基準が設けられていたとか,参加の可否を募集人が決定できたといった事情は「募集」該当性の判断を左右しません*5。また,上記の定義からして,運送事業者又は宿泊事業者の代理人として運送契約又は宿泊契約の申込みを誘引するにすぎないものは,ここでいう「募集」にはあたりません。このため,単一の運送事業者又は宿泊事業者によって提供されるサービスについての宣伝,広告であって,契約の当事者が当該運送事業者又は宿泊事業者であることが明示されているものは,ほとんどの場合,旅行者の募集に該当しません(旅行業法施行要領第一.3.3)(1))。

 募集の方法は問わないため,新聞等への広告,ポスター,パンフレット,ちらし,口頭による勧誘,ダイレクトメール,インターネットのいずれであっても,それが旅行契約の申込みを誘引するものであれば「募集」となります(旅行業法施行要領第一.3.3)(2))。 

  c.「自己の計算において」の意義

 「自己の計算において」とは,旅行業者が運送事業者,宿泊事業者等の旅行サービス提供機関との間で,数量・価格その他の取引条件に付いて自由に交渉を行い,合意の内容に沿って旅行サービスを仕入れ,その結果として,当該旅行サービスで構成される旅行商品の販売価格についても自己のリスクにおいて任意に設定できることをいいます。したがって,その取引から生じた経済的損益は旅行業者に帰属します。(旅行業法施行要領第一.3.4))。

 たとえ旅行業者が,旅行契約中の一部である運送や宿泊について第三者に手配を依頼したために,それに関して自由な料金設定をすることができないとしても,自らの判断で運送サービスに係る費用を含んだ旅行価格を設定し,その経済的効果がその旅行業者に帰属するのであれば,その運送サービスの提供に係る部分についても,自己の計算によるものとされます*6

 なお,旅行業者は,仕入取引の条件について,旅行者に対して開示する必要はありません(旅行業法施行要領第一.3.4))。

 

 -受注型企画旅行-

 受注型企画旅行とは,前述のように,従来の包括料金特約付企画手配旅行のことで,旅行者から依頼を受けて旅行サービスの内容等を定めた旅行計画を作成・実施する旅行をいいます。上記の条文では,「旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス……の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、……旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為」の部分が受注型企画旅行のことを指します。

 募集型企画旅行は旅行業者が旅行サービスの内容等を全て策定するのに対し,受注型企画旅行は旅行者の方から注文して旅行サービスの内容等を決めていくことができる点が異なります。このように旅行計画の内容が旅行者の意向に依存しているため,一度契約内容が確定した後でも,旅行者がこれを変更することができます*7(標準旅行業約款〔受注型企画旅行契約の部〕第3章参照)。

 なお,「自己の計算において」の意義は,募集型企画旅行の場合と同義です。

 

 -募集型企画旅行と受注型企画旅行の区別-

 企画旅行の多様化に伴い,その旅行形態が募集型企画旅行なのか受注型企画旅行なのかの判別が難しくなってきています。両者の区別が判然としない場合には,これを考えるにあたっての一定の方向性が旅行業法施行要領に示されているので,これを参照して決定することになります。

3 企画旅行契約について(法第2条第4項)

 1) (略)

 2) 旅行に関する計画の要件について

  (1) (略)

  (2) 以下のような事例は、複数の旅行に関する計画が、参加する旅行者の募集をするためにあらかじめ定められているもの(募集型企画旅行)として扱う。

     (例)① 出発日が一定期間中何時でも可とするもの

        ② 幾つかのオプションを組み合わせることができるアラカルト型の旅行であるもの

  (3) 旅行の目的地が明示されないミステリーツアー等の場合であっても、当該旅行の性質上、単に明示されていないだけであるから、旅行に関する計画が、参加する旅行者の募集をするためにあらかじめ定められているもの(募集型企画旅行)として扱う。

  (4) 旅行業者が手配すべき個々の運送・宿泊期間等を予め選定し、その中から旅行者がサービスを選択して旅行計画を組み立てる旅行取引(いわゆる「ダイナミックパッケージ」)については、旅行計画を構成する個々のサービスを旅行業者が予め選定すること自体が募集のための計画作成と認められ、さらに、個々のサービスについて旅行業者が自らの計算において対価を定め、最終的に旅行代金として包括して徴収するものであることから、募集型企画旅行に該当する。

 3) 募集について

  (1),(2) (略)

  (3) 旅行業者又は旅行業者代理業者以外の者(以下「オーガナイザー」という。)が旅行者の募集に関与する場合の取扱いについては、以下による。

     イ) (略)

     ロ) 次の例のように、相互に日常的な接触のある内部団体で参加者が募集され、オーガナイザーが当該団体の構成員であることが明らかな場合におけるオーガナイザーによる参加者の募集は、企画旅行の実施のための直接的な旅行者の募集とみなされない。この場合、旅行業者は、参加者全体の契約責任者としてのオーガナイザーからの依頼を受けて実施する企画旅行(以下「受注型企画旅行」という。)又は手配旅行として引き受けて差し支えない。

       (例)① 同一職場内で幹事が募集する場合

          ② 学校等により生徒を対象として募集する場合

          ③ 権利能力なき社団の機関決定に基づき、当該遮断の構成員を対象として募集する場合

     ハ) 次の例のように、オーガナイザーが参加者の旅行代金の全額を負担する場合における参加者の募集は、オーガナイザーによる企画旅行の実施のための直接的な旅行者の募集とみなされない。この場合、旅行業者は、受注型企画旅行又は手配旅行として引き受けて差し支えない。

       (例)① 企業等が自ら旅行代金の全額を負担して参加者を募集する場合(いわゆる招待旅行)

          ② 企業等が取引先の従業員等を対象として、旅行代金の全額を自ら負担して参加者を募集する場合

          ③ 企業等が従業員を対象に実施するレクリエーション旅行や研修旅行であって、企業等が自ら旅行代金の全額を負担して実施する場合

     ニ) ロ)、ハ)に規定する以外のオーガナイザーからの依頼があった場合には、当該オーガナイザーの集客募集等が実質的に旅行業者による企画旅行の実施のための直接的な旅行者の募集と類似しており、旅行者に混乱を与え得るものであることから、旅行業者は旅行者の直接的な募集により実施する企画旅行(募集型企画旅行)として取り扱わなければならない。この場合に旅行業者は、当該オーガナイザーを関与させることなく、直接に旅行者から旅行代金を収受して旅行契約を締結しなければならない。

 

 4.企画旅行契約の範囲

 企画旅行契約は,旅行業務の取扱いに関する契約であり,旅行業務の取扱いの結果成立した運送契約,宿泊契約及び食事,観光,ガイドその他の運送等関連サービスの提供に係る契約は含みません(旅行業法施行要領第一.3.1))。

 また,特に募集型企画旅行契約については,旅行業者がパンフレット等に記載した旅程のうちどの範囲までが契約の内容となっているのかが問題となることもあります。これは契約解釈の問題ですので,詳細は別の項目で取り上げることとします。

 

3号の行為(手配旅行)

 3号は,「旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為」とされています。「運送等サービス」は,1号と同様に,「旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス」を指します。

 ここで,「代理」,「媒介」,「取次ぎ」という3つの形態が示されています。

 「代理」とは,AがBのためにCとの間で意思表示をし,又は意思表示を受けることによって,その法律効果がBに直接に帰属する制度です*8

 「媒介」とは,いわゆる周旋のことで,他人の間に立って,他人を当事者とする法律行為の成立に尽力する事実行為です*9。例えば,旅行エージェントが,旅行者とホテルとの間の宿泊契約を締結するため,電話だけかけて旅行者の部屋をとってあげる行為は「媒介」にあたります*10。この場合には,旅行者とホテルとの間で直接に宿泊契約が締結されることになります。

 「取次ぎ」とは,自己の名をもって他人の計算において,法律行為をすることを引き受ける行為です*11。例えば,旅行エージェントが,旅行者からの委託を受けて,旅行エージェントの名義でバス会社との間に運送契約を締結することは「取次ぎ」にあたります*12。この場合には,旅行者と旅行エージェントとの間で委任契約が締結され,旅行エージェントとバス会社との間で運送契約が締結されていることになります。

 

4号の行為(手配旅行)

 4号は,3号と同様に,「代理」,「媒介」する行為について規定するものですが,3号が「旅行者のため」にするのであったのに対し,4号は「運送等サービスを提供する者のため」にする場合を想定しています。

 「代理」,「媒介」の意義は,3号に定めるものと同様です。例えば,航空会社の代理人として旅行者と運送契約を締結することなどが考えられます*13

 

5号の行為

 5号は,いわゆる利用運送,利用宿泊といった行為のことを指します。旅行業者が自ら旅行者に対して運送や宿泊のサービスの提供行為を行うこととなり,あたかも,旅行業者が運送業,宿泊業を営んでいることになります。

 現在,このような行為は,貨物の分野では認められているものの(貨物利用運送事業法参照),旅客の分野では免許取得等の関係上認められていません*14

 

付随的旅行業務

 付随的旅行業務は,基本的旅行業務に付随して行われる業務です。基本的旅行業務の存在を前提とするため,基本的旅行業務が行われておらず付随的旅行業務だけ単体で行われても(例えば,プレイガイド,ガイド等),「旅行業」には該当しないことになります(旅行業法施行要領第一.1.3②))。

 

2号の行為

 2号の行為は,1号(企画旅行)の実施にあたり,運送・宿泊業務以外のサービスを旅行者に提供するために,そのサービスを提供する者との間で契約を締結する行為です。

 

6号の行為

 6号の行為は,3号から5号までの手配旅行に付随して,旅行者のために行われる,運送等関連サービスの提供を受けることについての代理・媒介・取次行為を規定するものです。

 同号の行為は付随的旅行業務であって,前述のように基本的旅行業務に付随しなければ「旅行業」に該当しません。したがって,例えば,運送事業者が自ら行う日帰り旅行,宿泊事業者自らが行うゴルフや果樹園との提携企画等運送又は宿泊サービスを自ら提供し(代理,媒介,取次ぎ,利用のいずれにも該当せず,したがって基本的旅行業務とならない。)これに運送,宿泊以外のサービスの手配を付加して販売する場合は,旅行業に該当しません(旅行業法施行要領第一.1.3)①)。

 

7号の行為

 7号の行為は,3号から5号までの行為に付随して,運送等関連サービス提供者のために行われる,運送等関連サービスの提供についての代理・媒介行為を規定するものです。

 例えば,テーマパークの入場券を旅行者に販売する行為がこれにあたります*15

 

8号の行為

 8号の行為は,いずれの基本的旅行業務を問わずこれに付随して行われる,旅行者の便宜となるサービスをていきょうするこういを規定するものです。

 例えば,旅行者のパスポート需給のため,行政庁に対して,手続の代行を行う行為がこれにあたります*16

 

9号の行為

 9号は,「旅行に関する相談に応ずる行為」とあります。

 旅行相談を受けたり,旅行先のアドバイスをしたりする行為は,これにあたります。

 なお,法2条1項1号にいう「旅行」とは,運送や宿泊の各サービスを利用して場所的に移動することや一定地域で逗留することを広く含むものであると考えられている*17ことからすると,相談内容に運送・宿泊サービスが含まれていない場合には本号にあたらない可能性がありますが,その際限は不明確であるため,運送・宿泊サービスについて相談を行わない場合でも,旅行業の登録の要否は慎重に検討する必要があります。

 

②事業として行うこと

 「事業」とは,一般的には,一定の目的をもって反復継続的に遂行される同種の行為の総体を指します*18

 本条における「事業」にあたるかどうかは,旅行業務に関する対価の設定,募集の範囲,日常的に反復継続して実施されるものであること等を踏まえ,総合的な判断を要するとされています(旅行業法施行要領第一.1.1))。したがって,単純な類型化によって「事業」の認定をすることはできません。

 1.対価の設定(営利性)

 法2条1項各号に掲げる行為によって利益が上がれば,それを再投資にまわすことが可能となり,同様の行為が繰り返し行われる可能性が高まります。したがって,営利性が認められると,当該行為が事業として継続される蓋然性が高く,法により行為規制をかける必要性が大きくなります*19

 営利性の判断は,同一社内における他事業からの補填も含め,総合的に収支を確認することによって行います。取り扱う全ての旅行商品について利益が出ない対価設定になっているなど,事業形態として構造的に利益が出ないようになっていれば,営利性はないと考えられます*20

 なお,営利性があることは,あくまで考慮要素の一つにすぎないため,収益が上がる可能性がない行為であっても,それが反復継続的に行われていれば「事業」に該当する可能性は残されています*21

 2.募集の範囲(不特定多数性)

 募集の範囲については,募集の不特定多数性があるかどうかが考慮されています。もっとも,不特定多数性はあいまいな概念であるため,過去の例から類似するケースを探して判断するしかありません。例えば,A市が市内の小学生を対象として行っサマーキャンプには募集の不特定多数性がないとされた一方,ある事業者が全国の小学生を対象として実施しようとした夏の中学受験合宿は募集の不特定多数性が認められています*22

 3.反復継続性

 反復継続性は,「事業」該当性の判断の上で特に重要な要素であると考えられます。

 定量的に日常的に反復継続して実施しているかどうかを判断することは困難ですが,①旅行の手配を行う旨の宣伝,広告が日常的に行われている場合や,②店を構え,旅行業務を行う旨看板を掲げている場合などでは,行為の反復継続の意思が認められやすくなります(旅行業法施行要領第一.1.5))。他方で,B市が市内の独身男女を対象として行った婚活ツアーは年に1度の開催であったため,日常的に反復継続して実施していたとまではいえないとされた例もあります*23

 ここで注意すべきは,実際に反復継続的に行為が行われた場合はもちろん,1回の行為であっても,それが反復継続する意思のもとに行為を行ったと認められる場合には,「事業」にあたる可能性がある点です*24(つまり1回目の行為が,その回限りのものであれば反復継続性は認められず,他方今後も継続して行う意思のもとにされた場合には反復継続性が肯定される可能性があるということです。)。

 

③報酬を得ていること

 「報酬」とは,労務の提供,仕事の完成,事務の処理等の対価として支払われる金銭,物品をいいます*25

 本条における「報酬を得て」とは,法2条1項各号に掲げる行為を行うことによる対価を得てという意味です*26。つまり,法2条1項各号の行為を行うにあたり,その対価となる金銭や物品を受け取れば,それは本条の「報酬を得て」を満たすということになります。したがって,逆に言えば,法2条1項各号の行為を無償で行う場合には,「報酬を得て」行ったとはいえないため,その行為は「旅行業」にはあたらないということになります。

 なお,対価を受けた結果として利益が生ずることまでは必要ではないため,旅行者からいわゆる実費に相当するものしか収受していなくとも,それが法2条1項各号の行為の対価として支払われているのであれば,「報酬を得て」行ったものと認められます*27

 この「報酬」は,運送等サービス等の履行前に旅行者から受ける対価に限られません。したがって,例えば,観光会社がリゾートホテルから金員を得て,同ホテルのために,数回にわたり,同ホテルに対し集客した旅行者の宿泊予約をするなどし,同ホテルが旅行者との間で宿泊契約を締結するのを媒介したのであれば,ここで得た金員は「報酬」にあたります*28

 また,旅行者からの金員の徴収がない場合や,行為と収入との間には直接的な対価関係がない場合でも,①旅行者の依頼により無料で宿を手配したが,後にこれによる割戻し(いわゆるキックバック等)を旅館から受けている場合や,②留学あっせん事業において,留学あっせんと運送又は宿泊のサービスに係る対価を包括して徴収している等,旅行業以外のサービスに係る対価を支払う契約の相手方に対し,不可分一体のものとして運送又は宿泊のサービスを手配している場合のように,相当の関係があれば,報酬を得ていると認められます(旅行業法施行要領第一.1.2)(2))。旅行者からは金員を徴収しないが,旅行者・サービス提供者とは関係のない第三者からの集金(寄付等)によって収益を上げている場合でも,当該第三者から支払われる金員が,法2条1項各号に掲げる行為の対価であると認められる場合には報酬に該当します*29

 さらに,企画旅行のように包括料金で取引されるもので,収支の内訳が明確でなく,法2条1項各号の行為を行うことにより得た経済的収入によって支出を償うことができていないことが明らかでない場合は,旅行業務に関し取引をする者から得た報酬により利益が出ているものとみなされます(旅行業法施行要領第一.1.2)(3))。

 

例外規定

 以上の3つの要件を充足する行為であっても,一定の行為については「旅行業」にあたらないとされています。

 法2条1項柱書かっこ書きには「専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。」と書かれています。航空運送代理店やバス等の回数券販売所等がこれにあたりますが,これらのものは「旅行業」に該当しないことになります(旅行業法施行要領第一.1.4)①)。もっとも,これらの行為を旅行業者が行う場合には旅行業務に該当するため,旅行業者等の営業所として登録が必要となります(旅行業法施行要領第二.2.3))。

 また,ウェブサイトを介して旅行取引を行う場合で,旅行者と旅行業者又はサービス提供事業者との間での取引に対し働きかけを行わない場合(遅くとも予約入力画面から予約確認画面に移行する際(すなわち,予約入力画面に入力された情報を送信する際)までに,旅行者と旅行業者又はサービス提供事業者との間で取引となる旨が明確に表示されている場合)には,法2条1項各号のいずれにも該当しないため,「旅行業」には該当しません(旅行業法施行要領第一.1.4)②)。

 

第3回のまとめ

 今回は,定義規定のうち「旅行業」の部分に焦点をあてて,該当する条文の内容を確認してきました。法2条1項は旅行業にあたり得る行為を細かく類型化して規定していますので,どのような行為がどの規制にかかるのかをよく確認しておく必要があります。また,報酬や事業性についても,旅行業法に限らず,各分野における同様の規定に関する裁判例等が集積されているので,それらも参考にしながら適切に該当性を判断する必要があります。

 次回は,定義規定の残りの部分,「旅行業者代理業」や「旅行手配サービス業」について確認していくこととします。

*1:参議院法制局法律の[窓] 法律における用語の定義

*2:国土交通省総合政策局旅行振興課「「旅行業法令・約款」改正について~平成17年4月1日からの新制度の円滑な施行に向けて~」5頁

*3:第159回国会衆議院国土交通委員会第12号石原国務大臣発言005

*4:前掲「旅行業法令・約款」改正について3頁

*5:松山簡判平成23年11月24日2011WLJPCA11246007

*6:高松高判平成25年1月29日高刑速平成25年259頁

*7:前掲「旅行業法令・約款」改正について4頁

*8:法令用語研究会編『有斐閣法律用語辞典〔第5版〕』(有斐閣,2020年)759頁

*9:前掲法律用語辞典941頁

*10:第65回国会衆議院運輸委員会第9号住田政府委員発言015

*11:前掲法律用語辞典899頁

*12:前掲運輸委員会第9号住田政府委員発言015

*13:前掲運輸委員会第9号住田政府委員発言015

*14:佐々木正人『最新改訂版 改正旅行業法・約款の解説』(中央書院,2005年)20頁

*15:前掲佐々木20頁

*16:前掲佐々木20頁

*17:前掲高松高判平成25年1月29日

*18:前掲法律用語辞典480頁

*19:観光庁旅行業法施行要領の一部改正(平成30年7月改正)に関する参考資料」問13

*20:前掲施行要領改正参考資料問14

*21:前掲高松高判平成25年1月29日

*22:前掲施行要領改正参考資料問8

*23:前掲施行要領改正参考資料問10

*24:前掲施行要領改正参考資料問9,前掲高松高判平成25年1月29日参照

*25:前掲法律用語辞典1052頁

*26:東京高判平成26年6月20日高刑速平成26年67頁

*27:前掲松山簡判平成23年11月24日

*28:前掲東京高判平成26年6月20日

*29:前掲施行要領改正参考資料問4

旅行法令研究〔第2回〕~旅行業法編:旅行業法の概要~

 前回の記事で,旅行に関係する法令を大きく3分類しましたが,今回から数十回にわたって,③旅行業に関する法令について取り上げたいと思います。

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 今回は,その基本となる法律である「旅行業法」の全体像がどうなっているのかについて勉強します。

旅行業法の沿革

 旅行業法がどのような法律なのかを理解するにあたっては,旅行業法制定までの経過を把握しておくことが有用ですので,まずは旅行業法の沿革を概観します。

 

旅行あっ旋業法の制定

 我が国では,終戦後,国民経済の復興とともに,外客来訪数の増加や邦人の国内旅行が増加していきました。それにあわせるように,旅行あっ旋業者も急激に増加していきましたが,その中には,旅行費用の詐取,宿泊交通費の着服,外客に対するあっ旋の強要といったことを行う悪質業者も少なくありませんでした。ひどいものでは,学校の修学旅行の団体から企画,案内,あっ旋等を頼まれた業者が預かった金を全部持ち逃げしたということもあったそうです。

 このような状況に鑑みて,国内旅行の健全化の阻害,国際観光事業,国際親善,友好関係に悪影響を及ぼす悪質業者を取り締まる必要が生じました。そこで,悪質業者の取締りと業者の指導監督による旅行あっ旋業の健全な育成を目的として制定されたのが,旅行業法の前身となる「旅行あっ旋業法」という法律です*1

 同法では,旅行あっ旋業者の登録制度を整備するとともに,特に問題が多かった旅行あっ旋料について届出をさせて著しく高い料金や料率は変更を命じることができるといったことが規定されていました。それまでは,強制力のない行政指導でしか対応することができなかったのが,同法が制定されたことによって,根拠をもって取り締まることができるようになりました。

 このように,悪質業者から旅行者の利益を守るというのが,旅行あっ旋業法の目標だったわけです。

 

旅行あっ旋業法の抜本的改正から旅行業法へ

 旅行あっ旋業法が制定された当時は,業者は,旅行者の依頼を受けて宿泊部屋の予約をとるといったあっ旋業を行うことが中心でした。しかし,その後,国民の生活水準の向上と余暇時間の増大等による内外旅行需要の急出な増加が生じ,これに伴い,旅行の形態が,主催旅行やパッケージツアーといったものに変わっていきました。業者が,旅行者と宿泊施設や輸送機関との間を取り持つ従属的な役割からディベロッパー的な主体的な性格を持つようになってきていたわけです。そうすると,単に旅行あっ旋業という概念で,このような形態の旅行を企画主催する業者を規制するのは,実情から見て適当ではないということが指摘されるようになりました*2。適切な規制ができないことは,結果的に旅行者の保護が十分なものではなくなることを意味します。また,海外の立法で「旅行あっ旋業」という言葉を使っている例はあまりなく,「旅行業」という言葉の方が主流だったようです。

 そこで,このような旅行形態の変化にあわせて,業者の取引の公正を確保し,その業務の運営の適正化をはかることにより,旅行者の保護とその利便の増進に資するため,旅行あっ旋業法を改正し,「旅行業法」に改めました*3

 ここで定められた旅行業法は,①旅行あっ旋業法に引き続き登録制度の実施を行うが,その種別を,一般旅行業,国内旅行業,旅行業代理店業の3種類に区別した点,②取引態様の明示,旅行サービスの内容の説明,書面の交付等の義務を旅行業者に課した点,③営業所ごとに旅行業務取扱主任者を選任させる点,④旅行者等からの苦情の解決,旅行業者と取引をした相手方の有する債権を弁済するなどの業務を行う団体(旅行業協会)を創設した点に特徴があります。

 旅行業法のこれらの規定は,やはり,旅行者の利益保護の実効性を高めるために規定されたものであり,旅行あっ旋業法以来の旅行者の利益保護という目標は変わっていません。

 

その後の旅行業法の改正

 旅行業法への全面改正後も,業界の変化に合わせて,都度,旅行業法の改正が行われています。

 例えば,最近では,平成28年に発生した軽井沢スキーバス転落事故が記憶に新しいところと思われます。この事故では,旅行業者からランドオペレーターを介して,貸切バス事業者に対して下限割れ運賃での運送の手配が行われていたところ,当時の旅行業法ではランドオペレーターを規制対象外としていたため,同ランドオペレーターに対する処分が行われませんでした。このような事態を受けて,平成29年に旅行業法が改正され,「旅行サービス手配業」という業種を追加し登録制を創設するとともに,下限割れ運賃による貸切バス手配を禁止行為として法令上明示することとされました*4

 各改正の詳しい内容は,関係する各論の項目で触れることとしますが,ここでの改正も,旅行業法の目標自体を変更ものではありませんでした。

 

旅行業法の狙い

旅行業法の目的と手段

  以上のような経緯で制定された旅行業法は,お分かりのように,大きな目標として,消費者である旅行者の利益を保護するというものがありますが,改めてどのような目的の下に制定された法律なのかを確認します。法律の多くは,第1条にその法律の目的が書かれています(民法のような古くからある法律には目的規定がないこともあります。)。旅行業法1条には,以下のように記されています。

 (目的)

第一条 この法律は、旅行業等を営む者について登録制度を実施し、あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進することにより、旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的とする。

  長い一文ですが,この条文の結論は「旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的とする」という部分です。つまり,①旅行業務に関する取引の公正の維持,②旅行の安全の確保,③旅行者の利便の増進という3つの目的があるということです。これら3つは,互いに独立したものというよりは,これらが合わさって,先ほどまで述べていた,旅行業法の大きな目標である旅行者の利益保護を実現するという関係にあります。

 そして,これらの目的を達成するために旅行業法が想定している手段が,その前の部分に,「旅行業等を営む者について登録制度を実施し、あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進すること」と示されています。つまり,ⓐ旅行業等を営む者について登録制度を実施,ⓑ旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保,ⓒその〔旅行業等を営む者の〕組織する団体の適正な活動を促進という3つが目的達成のための手段ということになります(以上につき【図2-1】も参照)。

 

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 法1条に目的が書かれていることは,旅行業法の理念を示すだけにとどまらず,旅行業法に定められた様々な条文や契約内容の解釈をする上でも重要な指針となります。例えば,法1条に「旅行の安全の確保を図る」と書かれていることは,旅行者と旅行業者との間で締結される契約において,旅行業者が旅行中に旅行者の安全を確保すべき義務が含まれていることを導くための1つの根拠になり得ます*5。目的規定を理解しておくことは,旅行業法全体を理解する上で必要不可欠でしょう。

 

手段の具体的内容

 上にみたように,旅行業法は,3つの目的を達成するために,3つの手段を用意しています。では,それぞれの手段として,具体的にはどのような手続を踏むことを要求しているのか,詳しくは各論に譲ることとして,簡単に確認します。

 

ⓐ旅行業等を営む者について登録制度を実施

  旅行業法では,旅行業等を営むにあたっては,まず観光庁長官が行う登録を受けなければならないこととされています(法3条)。「登録」とは,一定の法律事実又は法律関係を行政庁等に備える公簿に記載することをいいます*6

 旅行業等は,第一種旅行業,第二種旅行業,第三種旅行業,旅行業者代理業,旅行サービス手配業に区分されており,それぞれの業者の行う業務内容に応じて登録種別の区分も異なります。

 ここでは,法6条に規定された登録拒否事由があるかどうかをチェックし,該当事由がある場合には登録を行わないということで,旅行業に参入することができる業者に一定の絞りをかけています。つまり,類型的に旅行者の利益を害し得るような者は排除することによって,旅行者の利益を守る仕組みとなっているのです。

 旅行業法にいう登録は,その性格から覊束裁量行為であると考えられています*7

 

ⓑ旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保

 旅行業者等の業務運営がいい加減では,旅行者の利益が保護されません。そこで,旅行業法では,旅行業者等の業務が適正に運営されるよう諸規定を置いています。

 例えば,契約締結時に取引条件について旅行者に説明しなければならないこと(法12条の4),旅行業者は旅行者に対しサービスの内容等を記載した書面を交付しなければならないこと(法12条の5)といった旅行業者の義務のほか,旅行業者等は名義を他人に利用させることを禁止する(法14条),観光庁長官が旅行業者等に対して業務改善命令を出すことができる(法18条の3)といった制度が挙げられます。

 

ⓒその組織する団体の適正な活動を促進

 旅行業等を営む者の組織する団体は,旅行業法では,「旅行業協会」として規定されています。旅行業協会は,観光庁長官によって指定される団体ですが(法41条),現在我が国で指定を受けた旅行業協会は,全国旅行業協会(ANTA)と日本旅行業協会(JATA)の2つのみです。

 旅行業協会は,①旅行者・旅行に関するサービスを提供する者からの苦情の解決,②旅行業務等に従事する者の研修,③旅行業者等と取引をした旅行者に生じた債権の弁済,④旅行業者等・旅行サービス手配業者に対する指導,⑤旅行業等・旅行サービス手配業の健全な発展を図るための調査・研究・広報といった業務を行います(法42条)。①や③の業務が旅行者の利益につながることは分かりやすいですが,②④⑤の業務も旅行業者等の業務が改善されることによって旅行者に不利益となる活動が未然に防止され,結果的に旅行者の利益となります。

 旅行業協会は,旅行者の利益の保護を目的として組織された団体ですが,その構成員は旅行業者等ですから,旅行業者と旅行者が対立する場面で,旅行業者に有利な判断をしてしまうおそれもあります。そこで,観光庁長官が旅行業協会を監督・命令することができ(法59条),場合によっては旅行業協会の指定を取り消すことができることとされ(法60条),旅行者を保護するための公正な判断がされるよう担保される仕組みになっています*8

 

旅行業法の全体の構造

 上記のように,旅行業法には,旅行者の利益を保護するという大きな目標のもとに,様々な手続が規定されています。そこで,どの手続が,旅行業法のだいたいどこらへんに書いてあるのかというのを最後に確認しておきたいと思います。

 あらゆる法令の冒頭には,その法令の構成を示す「目次」が書かれていることが多いです。法令の全体像を大まかに把握するときには,この目次を確認することが肝心です。旅行業法の目次は下記のようになっています。

目次

第一章 総則(第一条・第二条)

第二章 旅行業等

 第一節 旅行業及び旅行業者代理業(第三条-第二十二条)

 第二節 旅行サービス手配業(第二十三条-第四十条)

第三章 旅行業協会(第四十一条-第六十三条

第四章 雑則(第六十四条-第七十三条

第五章 罰則(第七十四条-第八十三条

附則

 旅行業法は全部で5つの章立てになっています。

 第1章は「総則」とありますが,これは旅行業法全体を通していえること,つまり旅行業法の核となることが書かれています。第1条は既に触れた旅行業法の目的が書かれており,第2条にはどのようなものが「旅行業」にあたるのかといった定義規定が置かれています。

 第2章は「旅行業等」とあり,「旅行業及び旅行業者代理業」と「旅行サービス手配業」の2つに分かれています。ここでは,上に見た登録手続や営業保証金,旅行業務取扱管理者の選任といった手続のほとんどが,業種ごとに規定されています。手続の書かれている順番は,概ね時系列に沿っており,登録制度から始まり,営業保証金,旅行業務取扱管理者の選任,料金の明示・・・という順になっています。

 第3章は「旅行業協会」とあり,上に見た旅行業協会の業務内容やそれを実践する手続,旅行業協会に対する監督命令の方法等が規定されています。

 第4章は「雑則」とあり,上に規定したこと以外の細かい事項(例えば,意見聴取や立入検査の手続についての規定)が定められています。

 第5章は「罰則」とあり,旅行業法に定める手続のうち一定のものについては,それに違反すると罰則が科せられることが規定されています。刑罰は,法律上に明記されていなければ科すことができないため(罪刑法定主義),どのような旅行業法上の手続違反のときにどのような刑罰を科すのかが細かく定められています。

 旅行業法上重要となる手続については,そのほとんどが第2章に定められているため,手続の根拠条文を見つけ出すにあたっては,第2章の関係する業種の項目をまずは探してみるといいでしょう。

 

第2回のまとめ

 今回は,旅行業法の制定経緯を踏まえて,旅行業法が旅行者の保護を大きな目的としていることを理解してもらえればよかったと思います。次回以降は,旅行業法のさらに詳細,各論に入ります。

*1:第13回国会参議院運輸委員会第23号石村議員発言

*2:第65回国会衆議院運輸委員会第11号住田政府委員発言

*3:第65回国会衆議院運輸委員会第9号橋本国務大臣発言

*4:第193回国会衆議院国土交通委員会第15号田村政府参考人発言

*5:東京地判平成元年6月20日判タ730号171頁,東京地判昭和63年12月27日判タ730号171頁参照

*6:法令用語研究会編『法律用語辞典〔第5版〕』(有斐閣,2020年)867頁

*7:前掲運輸委員会第9号

*8:前掲運輸委員会第11号住田政府委員発言

祝日と法令~令和3年の祝日はどのように決まるのか~

  明けましておめでとうございます。私は,今月からついに弁護士業務を始めました。皆様どうぞよろしくお願い致します。

 さて,正月三が日が終わり,もう仕事に戻られた方がほとんどかと思います。つい先日までの自由な時間を取り戻したい気持ちで頭がいっぱいだという方もいるかもしれませんが,諦めて真面目に仕事をしましょう。

 ところで,正月三が日が休みになるのは慣習の側面が強いですが,1月1日だけは特別です。それは,1月1日は「元日」という祝日とされているからです。我が国では,この元日をはじめとして,様々な祝日が設けられていますが,この祝日はどのようにして定められているのでしょうか。今日は,祝日の根拠は何なのかについて触れてみたいと思います。

 

 

国民の祝日の根拠法令

国民の祝日に関する法律

 国民の祝日は,実は,すべて法律によって決められています。その法律とは,「国民の祝日に関する法律」というそのままの名前の法律です(以下「祝日法」といいます。)。この祝日法2条に,すべての祝日が定められているのです。どのように定められているのか,下記の表をご覧ください。

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 このように,各祝日の名前はもちろん,その日付や,なぜその祝日が設けられたのかという趣旨まで条文として掲げられています。この条文があることによって,はじめて祝日というものが出来上がるのです。これを機に,それぞれの祝日がどのような趣旨で設けられたのかを知っておくと,今後の祝日の迎え方が少し変わるかもしれません。

 もっとも,これらの日を「祝日」と決めただけでは,単なるお祝いをすべき日という意味でしかならず,さらに休日としての効力が当然に発生するわけではありません。そこで,さらに祝日法の条文をみると,3条1項に下記のような規定があります。

第三条 「国民の祝日」は、休日とする。

2,3 (略)

 ここに,国民の祝日は休日にすると定められています。この条文があることによって,ようやく祝日が休日となるわけです。したがって,そもそも祝日がいつなのかを定めた2条と,その祝日を休日にすると定めた3条1項があわさることによって,各祝日が休日となるのです。

 

祝日を変えたり新しく設けたりするには

 祝日が法律で決められているということは,もし祝日の名称や日付を変えたいということになると,この祝日法を改正しないといけません。

 最近でいえば,「体育の日」が「スポーツの日」に名称変更されたほか,天皇陛下の退位に伴い天皇誕生日が12月23日から2月23日に変更されました。また,「山の日」というのも新たに付け加えられました。これらも全て祝日法を改正したからこそ変更できたわけです。

 体育の日の名称変更については「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第57号)」,天皇誕生日の日付変更については「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の附則10条,山の日の新設については「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第43号)」が,それぞれの改正根拠法となります。

 体育の日の名称変更と山の日の新設は,それぞれ「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律」というまさに祝日法を改正する法律によって改正されているのに,天皇誕生日の日付変更はそれによらず皇室典範特例法によって改正されているのは,前者は祝日自体を変える,あるいは新設するというのがメインであるのに対して,後者は天皇が変わることがメインにあってそれに伴って祝日を変更するにすぎないからです。

 

建国記念の日春分の日秋分の日はどう決まるのか

 ところで,上の【表】を見ると,建国記念の日春分の日,そして秋分の日は,具体的な日が決められていないようですが,それではこれらの祝日の日付はどのように決められているのでしょうか。

 

春分の日秋分の日の決め方

 まず,春分の日秋分の日はそれぞれ「春分日」「秋分日」とされています。この「春分日」と「秋分日」というのは,天球上の太陽の通り道である黄道と,赤道を天まで伸ばしていってできる天の赤道とが交差する「春分」と「秋分」を含む日のことをいいます。下の【図】もご覧ください。ちなみにこの【図】を作るのに何回も失敗してめちゃくちゃ時間がかかりました。

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 太陽の見かけ上の動きは地球の公転運動に伴って生じますから,公転運動に変化が生ずれば春分秋分もズレることになります。したがって,春分日・秋分日も,毎年同じ日になるとは限らないのです。このズレについては,国立天文台が観測を行っており,毎年2月1日に翌年の春分日・秋分日が官報で発表されることになっています。

 このように,春分日・秋分日は毎年異なるため,法律でこの日だというのを決めることができず,あくまで春分日・秋分日とするにとどめているということになります。もしも法律で,春分の日は○月○日だと決めてしまい,仮にその日が春分日ではなかったことが判明した場合に,本来の春分日に春分の日を修正するとなると,前述のように法律の改正を行う必要が出てきてしまい,かなり面倒なことになってしまいます。

 

建国記念の日の決め方

建国記念の日の根拠法令

 建国記念の日については,「建国記念の日となる日を定める政令」というものが出されています。この政令は,たった1条しか条文がない短い政令です。その条文には以下のように書かれています。

国民の祝日に関する法律第二条に規定する建国記念の日は、二月十一日とする。

 ここには,建国記念の日を2月11日にすると定められています。これが建国記念の日の根拠規定となるわけです。

 ここで気になるのは,なぜ建国記念の日だけ祝日法ではなく政令で日付を決めているのか,ということです。春分の日秋分の日のように,毎年建国の日が異なるということもないはずですから,具体的な日付を決めてしまっても良さそうにも思えます。

 

建国記念の日の制定経緯

  建国の日を記念日としたのは明治時代の頃のようですが,これを国民の祝日とするに至ったのは,国民の祝日に関する法律が制定された昭和23年から18年も経過した昭和41年です。

 そもそも2月11日というのが何の日なのかというと,神武天皇が即位されたとされている日です。しかしこれは,明治時代に那珂通世博士が唱えた説であり,客観的科学的根拠があるわけではないのです。また,国というものは自然人とは異なる観念的なものであるため,何をもって建国といえるのかについても一義的に定まらない性質があります*1。そのため,建国記念の日を本当に2月11日にしていいのか,国会でかなり争われました(当時の会議録を見ると色んな専門家の先生が意見を述べられていますので,興味のある方は会議録検索で調べてみてください。)。

 最初は2月11日を祝日法に条文として明記することを目指していましたが,以上のように2月11日とするのがふさわしいかどうかについては争いがあったため,総理府(現在は内閣府に統合)に建国記念日審議会をおき,そこでの審議を経たうえで具体的な日を決めることとしました。そのため,祝日法に2月11日と明記することまではできず,あくまで審議会での審議を踏まえて制定された政令で定める日とされたわけです。国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(昭和41年法律第86号)の附則をみると,上記の論争の痕跡が窺えます。

建国記念の日となる日を定める政令の制定)

 改正後の第二条に規定する建国記念の日となる日を定める政令は、この法律の公布の日から起算して六月以内に制定するものとする。

 内閣総理大臣は、改正後の第二条に規定する建国記念の日となる日を定める政令の制定の立案をしようとするときは、建国記念日審議会に諮問し、その答申を尊重してしなければならない。

 ちなみにこの修正案に基づく改正法は昭和41年6月25日施行となっていますが,この修正案が提出されたのは同月7日の内閣委員会の直前ですので,ギリギリまで対応に苦慮していたことが窺われます。

 

祝日法2条に掲げられていない休日

 以上の祝日のほかに,ある条件のもとで休日が発生することがあります。それが,祝日法3条2項及び3項に定められた休日です。

第三条 (略)
 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。

 3条2項は,国民の祝日が日曜日にきてしまった場合には,その分の休日を別でとるという条文です。祝日の日付が「第○月曜日」と決まっている成人の日や海の日などは,日曜日になりようがないのでこの規定の適用はありませんが,「○月○日」という形で決められている山の日や文化の日は,その日が年によっては日曜日になることがあります。祝日は,国民ができるだけ休日として過ごすことが望ましいとして設けられているため*2,これがもとから休日とされている日曜日と被ってしまうと意味が薄れてしまいます。そのため,日曜日としての休日とは別に休日を設けるのが適切との考えから,日曜日より後の日を休日として扱います。このときの休日を「振替休日」と呼ぶこともあります。

 3条3項は,祝日と祝日の間にはさまれた日も休日にしてしまおうという条文です。この規定は,国民の文化的でゆとりある生活を実現し,あすへの英気を養うために設けられたものと説明されています*3。祝日の谷間で1日だけ仕事に出るというのもなかなか落ち着かないので,ありがたい規定です。

 

令和3年の祝日は例年と異なる

 祝日法が存在し続ける限り,我が国の祝日は同法に従って必ず訪れることになります。今年も例に漏れず,基本的には祝日法に定められたとおり,決まった日に祝日がやってきます。

 しかし,今年は,祝日の日付が例年とは異なるところがあります。それは,「海の日」,「スポーツの日」,「山の日」です。今年(令和3年)に限って,「海の日」は7月19日(月)から7月22日(木)に,「スポーツの日」は10月11日(月)から7月23日(金)に,「山の日」は8月11日(水)から8月8日(日)に,それぞれ移動します。

 先述のように,祝日の日付は祝日法に定められたものですから,1年に限ってとはいえ,これを変更するには法律の改正が必要です。改正の根拠となる法律は,「令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」というバカみたいに長い名前の法律です(以下「祝日法特措法」といいます。)。この法律の32条2項には,このように書かれています。

第三十二条 令和二年の国民の祝日国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号。以下この条において「祝日法」という。)第一条に規定する国民の祝日をいう。次項において同じ)に関する祝日法の規定の適用については、祝日法第二条海の日の項中「七月の第三月曜日」とあるのは「七月二十三日」と、同条山の日の項中「八月十一日」とあるのは「八月十日」と、同条スポーツの日の項中「十月の第二月曜日」とあるのは「七月二十四日」とする。

 令和三年の国民の祝日に関する祝日法の規定の適用については、 祝日法第二条海の日の項中 「七月の第三月曜日」とあるのは「七月二十二日」と、同条山の日の項中「八月十一日」とあるのは「八月八日」と、同条スポーツの日の項中「十月の第二月曜日」とあるのは「七月二十三日」とする。

  ここに書かれているように,祝日法2条の海の日,山の日,スポーツの日のそれぞれの日付を修正する形で規定されています。もっとも,この条文は,つい最近,12月28日に改正されたばかりで,それ以前は32条1項にあたる条文しかありませんでした(つまり,令和2年の祝日を移動させる条文しか存在せず,令和3年分の条文は存在しませんでした。)。なぜこのような改正が行われたのでしょうか。

 そもそも,なぜこのような祝日の変更が行われたのかといえば,令和2年に東京オリンピックが開催される予定だったからです。オリンピック開催中は東京に人が多く集まることが見込まれ,特に開会式・閉会式が行われる時期は都心部での混雑が予想されます。そのため,アスリート,観客等の円滑な輸送と,経済活動,市民生活の共存を図るために,開会式・閉会式前後を連休としています*4。そのために,当初は「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」という名称の法律で,令和2年文の祝日を移動させていました。

 しかしながら,ご承知のように東京オリンピックは令和3年に延期されることとなりました。オリンピックが令和3年に延期となれば,令和3年の祝日も移動させる必要が生じてきます。どのようにして令和3年の祝日を変更するのかといえば,皆さんももうお気づきのように法律の改正です。

 今度は「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一部を改正する法律」というさらに長い名前の法律によって,祝日法を改正する根拠となっていた祝日法特措法をさらに改正する形となりました。条文は以下のとおりです。

第一条 平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法(平成二十七年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。

 題名を次のように改める。

 令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法

(中略)

 第三十二条中「平成三十二年」を「令和二年」に、 「)第一条」を「。以下この条において「祝日法」という。 ) 第一条」に、 「いう」を「いう。次項において同じ」に、 「同法」を「祝日法」に改め、 同条に次の一項を加える。

 令和三年の国民の祝日に関する祝日法の規定の適用については、 祝日法第二条海の日の項中 「七月の第三月曜日」とあるのは「七月二十二日」と、同条山の日の項中「八月十一日」とあるのは「八月八日」と、同条スポーツの日の項中「十月の第二月曜日」とあるのは「七月二十三日」とする。

 この条文によって,まず祝日法特措法の正式名称である「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」が「令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」に改題されました。さらに,上に掲げた祝日法特措法32条に新たに2項を追加する形で,令和3年の祝日の変更について規定する形になっています。ここで,上で見た,今年の海の日,山の日,スポーツの日の移動が行われています。このように,祝日法というものに対して修正に修正を重ねて,ようやく令和3年の祝日が移動できているのです。

 また,8月8日(日)に山の日が移動する結果,祝日が日曜日となるため,祝日法3条2項により,翌日の8月9日(月)が振替休日となります。

 以上のことをまとめると,令和3年の祝日は以下のようになります。

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さいごに

 祝日を1つ決めるのにも様々な法令が関係していることが理解していただけたかと思います。今年の祝日移動が手帳に反映されていないという方は,早いうちに修正しておきましょう。

*1:第26回国会衆議院内閣委員会公聴会第1号

*2:第71回国会衆議院内閣委員会第9号山下元政府委員発言

*3:第103回国会参議院本会議第9号林寛子発言

*4:首相官邸2021年の祝日移動について

旅行法令研究〔第1回〕~旅行に関係する法令~

はじめに

 弁護士業務とは関係なく,完全に個人的趣味で始めるシリーズです。「旅行法令研究」と題して,旅行に関係する法令について個人的に気になったことをまとめた記事を不定期に投稿していく予定です。個人的にとはいえ,ブログなので読者がいることは想定しており,法律のことはあまり詳しくないという方も読めるくらいのものにすることを意識しています。一応,旅行業務取扱管理者試験の法令・約款と海外旅行実務の法令部分にも対応していますが,たぶんオーバースペックなので過去問を解いた方がはやいです。

 「旅行法令」とは,ここでは,旅行業や旅行契約など広く旅行にまつわる法令くらいの大雑把に定義したものとして使っています。

 連載の大きな流れとしては,総論→旅行業法→標準旅行業約款→宿泊約款・運送約款等の各種約款→海外渡航法令→その他,という形を考えていますが,変わるかもしれません。

 突然の思い付きで始めた連載であり,何をどれだけ書くのか,一体連載がいつまで続くのか,そもそもこの連載の目的は何なのかといったことは全く決まっていません。連載が進むにつれてなんとなく決まっていくのではないでしょうか。

 この分野は,簡単に調べてみたところ,どうもコンメンタール的なものが出ていないようです。解説本については,この分野では有名な三浦雅生先生が旅行業法と標準旅行業約款について出されており,後者については民法改正直前くらいの比較的新しい時期に改訂されておられますが,前者については少し古くなっているようです。佐々木正人先生の本もありますが,どこにも売っておらず,Amazonですごい値をつけられたものを買うかどうかというところ。

 そのため,なかなか参照できるものも少なく,半ば実験的な内容になってしまうかもしれません。コンメンタールの代わり(には到底ならない)みたいなものを作るのも,この連載の一つの目的かもしれません。

 読者の皆様におかれては,内容の是非に細心の注意を払いながら読まれた方がいいのではないかと思います。

 

旅行と法令

法令の適用場面

 第1回は「旅行業に関係する法令」ということで,旅行業を営む上でどのような規制がかかるのか,契約締結上どのような法令の適用があるのかについてまとめておきたいと思います。

 旅行というと,普段生活している所とは別の土地を訪れて,その土地の観光地を巡ったり,食を堪能したり,旅館に泊まってみんなでワイワイ騒いだりといったことが想起されます。行く先も,国内を堪能したいという人もいれば海外こそ至高という人もいるかもしれません。その土地に行くまでの間には,電車・飛行機・バスといった交通機関を利用することもあるでしょう。また,旅行の日程を組むのも交通機関や宿泊施設を手配するのも全部自分でやるところまで含めて旅行だという人もいますし,他方で旅行会社が募集しているツアーに参加する気軽さがいいという人もいるかもしれません。

 上に見るように,旅行に出かけるにあたっては,旅行計画の策定→利用施設の手配→旅行の実施という過程を経るとともに,その過程の中で,宿泊施設や交通機関,場合によっては旅行会社といった様々な人と関わり合いを持つことになります。このような人たちとのかかわりの中で,トラブルが生じないように,あるいは発生したトラブルの解決のために,法令による利害調整が期待されています。

 また,海外旅行に行く場合には,国内旅行には見られない特有の問題が生ずることがあります。そこで,海外旅行特有の問題に対処するための法令も用意されています。

 さらに,旅行者が旅行会社を利用する場合には,旅行会社がいい加減なことをすると,旅行者の利益が損なわれてしまいます。そこで,旅行会社には,特にその適格を判断するための法令が整備されています。

 旅行にまつわる法令は,大きく分けると以上の3つになります。以下で,①旅行契約に関する法令,②海外旅行に関する法令,③旅行業に関する法令という括りで,その概要について触れておきます。

 

①旅行契約に関する法令

 旅行をするとなったとき,上記のように,全部旅行会社にお任せしてツアーで連れて行ってもらうという人もいれば,自分で行程も組んで電車や宿の手配も全部やってしまうという人もいます。

 基本的に,人と人が何かの契約を結ぶときには,その契約の成立や拘束力については「民法」という法律によって規律されます。旅行会社にツアーを申し込む場面では,旅行者と旅行会社との間で,旅行会社が用意したツアーに参加することを目的とした契約を締結します。自分で行程を立てるのであれば,交通機関を運営している会社や旅館と,運送契約,宿泊契約といった契約を締結することになります。このように,旅行に出かけるというときには,ほとんどの場合,旅行者は誰かしらと契約を締結することになります。ここでの契約関係に何かトラブルが生じたのであれば,「民法」の規定に従ってトラブルの解決を図る可能性があります。

 ただし,「民法」は,旅行に関する契約に限らない,世の中の幅広い契約について規律する法律です。そのため,旅行に関する契約特有の問題が生じたときに,「民法」によっては解決できない問題も生じ得ます。

 そこで,旅行に関する契約特有の問題に対処するために,様々な「約款」が定められていることがあります。旅行会社が企画したツアーに参加する場面では「旅行業約款」,鉄道会社と運送契約を締結する場面では「旅客営業規則」をはじめとする運送約款,宿泊施設と宿泊契約を締結する場面では「宿泊約款」,etc... といった「約款」によって,様々な場面を想定して,こういうときにはこう処理しますということが事細かに定められています。また,これらの「約款」では,上記の「民法」で定められたルールが修正されていることもあります。

 以上から,旅行に関する契約については,まずは各種の「約款」の適用を考え,「約款」に書かれていない一般的なルールについては「民法」が適用されるという関係にあります(【図1-1】も参照)。

 

 

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②海外旅行に関する法令

 海外旅行をする場合には,国内旅行にはない特別なルールが設けられています。例えば,海外旅行をするときにはパスポートを携帯する必要があります。また,海外で買った商品を日本に持ち込む(輸入)ときには,税関をパスする必要があります。海外旅行の経験がある方であれば,イメージはつきやすいと思います。

 これらの法制は,国民が国外にいる場合でも国家としてその安全に配慮しなければならないことや,国内に危険な物を持ち込まれて国内の安全が脅かされることを防ぐことといった,海外旅行特有の問題に対処するために整備されています。

 このような国内旅行にはない海外旅行特有の問題に対処するための法令として,「旅券法」や「出入国管理法」,「関税法」といった法令が制定されています。

 

③旅行業に関する法令

 上記のように,旅行者の中には,旅行会社に頼んで旅行の計画を立ててもらったり,既に旅行会社が設計したツアーに参加したりするなど,旅行会社の援助を受けて旅行に出かけるという人も少なくないと思います。

 しかし,旅行の相談をしていた旅行会社が全然旅行に関する知識を持っていなかったり,旅行中の事故について全く責任をとってくれなかったりすると,もはや旅行会社を信用することができず,旅行者の快適な旅行が阻害されてしまいます。

 そのようなことが起きないためにも,旅行会社には一定の適格があることが要求されます。そのような適格について定めている大本の法令が「旅行業法」です。旅行業法では,登録を受けた者でないと旅行業を営むことができないことであったり,万が一事故を起こした場合に補償ができるように準備しておくことなどが定められています。

 また,「旅行業法」に書ききれなかった細かい事項については,「旅行業法施行規則」,「旅行業法施行令」,「旅行業者営業保証金規則」,「旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則」等に規定されています。

 これらの法制によって,旅行会社が適切に業務を遂行することを担保しています。

 

第1回のまとめ

  このように,普段何気なく出かけている旅行でも,あらゆる場面に法令の適用があることが分かります。それぞれの法令の役割と適用場面を大まかに知った上で,次回以降の法令研究を読んでいただくと,少しは理解しやすくなるかもしれません。

よく分からないブログを開設しました

令和2年12月17日付で弁護士登録をした清水大地です。

とりあえずブログを開設してみました。

元々趣味用のブログはやっていましたが,弁護士用で新たに作り直しました。

はてなブログは,ブログのくせに脚注*1を入れられたり,twitterのツイートの引用が簡単にできたりと,機能面が充実しているため,旧ブログよりも使い勝手が良さそうです。

このブログでは,日頃の弁護士業務や法律的な話題を通じて考えたことを,守秘義務に抵触しない範囲で,ダラダラと書いていくことになりそうです。

これを表示することにどれだけ意味があるのか分かりませんが,「このブログに書いたことは私個人の考えであり,所属団体とは一切関係ありません。」と念のため申し上げておきます。

*1:これである。いつ使えばいいのかは分からない。