はじめに
交通事故事件では、車両の修理費用を相手方に請求するにあたり、特に経済的全損の可能性が指摘された場合に、当該車両の時価額が問題になることがあります。
車両の時価額の算定について、最判昭和49年4月15日民集28巻3号385頁は、「いわゆる中古車が損傷を受けた場合、当該自動車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によつて定めるべきであり、右価格を課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によつて定めることは、加害者及び被害者がこれによることに異議がない等の特段の事情のないかぎり、許されないものというべきである」と指摘しており、実務上もこの要素を拾って時価額が算定されているところと思われます。
本記事では、直近の裁判例(令和以降のもの)において、時価額算定に当たってどのような事情が考慮されているかを概観したいと思います。なお、本記事では、二輪車に関する裁判例は除きました。
- はじめに
- 裁判例一覧
- A 中古車市場によって認定した裁判例
- A-1 大阪地判令和元年10月29日2019WLJPCA10298027
- A-2 名古屋地判令和2年2月19日2020WLJPCA02198014
- A-3 名古屋地判令和2年12月15日2020WLJPCA12158020
- A-4 大阪地判令和3年2月5日交民54巻1号242頁
- A-5 大阪地判令和3年3月25日交民54巻2号473頁
- A-6 名古屋地判令和3年3月29日自保2096号92頁
- A-7 飯田簡判令和3年9月22日2021WLJPCA09226004
- A-8 東京地判令和3年11月1日2021WLJPCA11018007
- A-9 大阪地判令和3年11月12日交民54巻6号1502頁(F-4と同裁判例)
- A-10 名古屋地判令和3年11月26日交民54巻6号1545頁
- A-11 名古屋地判令和3年11月26日2021WLJPCA11268040
- A-12 名古屋地判令和3年12月20日2021WLJPCA12208023
- A-13 名古屋地判令和4年1月11日2022WLJPCA01118009(D-5と同裁判例)
- A-14 大阪地判令和4年3月24日2022WLJPCA03248036
- A-15 大分地判令和4年5月19日2022WLJPCA05196003
- A-16 名古屋地判令和4年6月10日2022WLJPCA06108002
- A-17 名古屋地判令和4年6月29日2022WLJPCA06298002
- A-18 東京地判令和4年8月25日2022WLJPCA08258007
- A-19 東京地判令和4年8月25日交民55巻4号1030頁
- A-20 名古屋地判令和4年9月7日2022WLJPCA09078003
- A-21 東京地判令和4年10月31日2022WLJPCA10318002
- A-22 名古屋地判令和4年11月8日自保2144号164頁
- A-23 名古屋地判令和4年11月11日自保2136号136頁
- A-24 東京地判令和4年11月18日2022WLJPCA11188001
- A-25 大阪地判令和4年11月25日2022WLJPCA11258017
- A-26 東京地判令和4年12月13日交民55巻6号1615頁
- A-27 名古屋地判令和5年1月11日交民56巻1号1頁(D-9と同裁判例)
- A-28 福岡高判令和5年1月20日自保2151号111頁
- A-29 金沢地判令和5年2月21日2023WLJPCA02216014
- A-30 旭川地判令和5年3月16日判時2580・2581号229頁
- A-31 東京地判令和5年3月20日2023WLJPCA03208005
- A-32 東京地判令和5年3月20日2023WLJPCA03208006
- A-33 名古屋地判令和5年3月27日交民56巻2号427頁
- A-34 名古屋地判令和5年5月17日2023WLJPCA05178011
- A-35 東京地判令和5年6月28日2023WLJPCA06288009
- A-36 東京地判令和5年6月30日2023WLJPCA06308023
- A-37 大阪地判令和5年7月28日2023WLJPCA07288019
- A-38 東京地判令和5年9月11日自保2167号175頁
- A-39 東京地判令和5年9月14日2023WLJPCA09148013
- A-40 東京地判令和5年10月3日2023WLJPCA10038004
- A-41 東京地判令和5年10月4日2023WLJPCA10048005
- A-42 東京地判令和5年11月6日2023WLJPCA11068005
- A-43 横浜地判令和5年11月9日自保2170号106頁
- A-44 東京地判令和5年12月1日2023WLJPCA12018002
- A-45 東京地判令和6年2月16日2024WLJPCA02168008
- A-46 名古屋地判令和6年2月28日自保2179号150頁
- A-47 東京地判令和6年3月27日2024WLJPCA03278002
- A-48 東京地判令和6年3月28日2024WLJPCA03288035
- A-49 千葉地判令和6年7月19日交民57巻4号939頁
- A-50 東京高判令和6年8月7日自保2179号111頁
- B レッドブックによって認定した裁判例
- B-1 神戸地判令和元年12月5日交民52巻6号1461頁
- B-2 名古屋地判令和2年6月12日交民53巻3号662頁
- B-3 京都地判令和2年10月28日交民53巻5号1304頁
- B-4 半田簡判令和2年11月18日2020WLJPCA11186009
- B-5 東京地判令和2年12月25日交民53巻6号1606頁
- B-6 大阪地判令和3年1月19日2021WLJPCA01198033
- B-7 函館地判令和3年3月25日交民54巻2号486頁
- B-8 名古屋地判令和3年4月7日交民54巻2号517頁
- B-9 札幌地判令和3年8月17日自保2121号107頁
- B-10 大阪地判令和3年11月12日2021WLJPCA11128025
- B-11 大阪地判令和4年7月7日2022WLJPCA07078004
- B-12 名古屋地判令和4年12月2日2022WLJPCA12028003
- B-13 名古屋地判令和5年1月27日交民56巻1号110頁
- B-14 飯田簡判令和5年3月13日2023WLJPCA03136001
- B-15 名古屋地判令和5年3月24日2023WLJPCA03248051
- B-16 名古屋地判令和5年6月14日交民56巻3号707頁
- B-17 東京地判令和5年11月10日2023WLJPCA11108008
- B-18 神戸地姫路支判令和6年5月21日自保2177号128頁
- B-19 千葉地判令和6年7月26日交民57巻4号972頁
- B-20 大阪地判令和6年12月5日交民57巻6号1566頁
- C 購入価格を基に認定した裁判例
- D 新車価格を基に認定した裁判例
- D-1 東京地判令和2年10月6日2020WLJPCA10068003
- D-2 名古屋地判令和3年6月30日交民54巻3号853頁
- D-3 神戸地判令和3年9月21日交民54巻5号1202頁
- D-4 東京地判令和3年9月30日交民54巻5号1249頁
- D-5 名古屋地判令和4年1月11日2022WLJPCA01118009(A-13と同裁判例)
- D-6 東京地判令和4年3月7日2022WLJPCA03078005
- D-7 東京地判令和4年10月21日2022WLJPCA10218003
- D-8 大阪地判令和4年11月18日自保2136号1頁
- D-9 名古屋地判令和5年1月11日交民56巻1号1頁(A-27と同裁判例)
- D-10 名古屋地判令和5年5月31日2023WLJPCA05318013
- E 定率法又は定額法によって認定した裁判例
- F 分類し難い裁判例
- A 中古車市場によって認定した裁判例
- 若干のコメント
裁判例一覧
A 中古車市場によって認定した裁判例
A-1 大阪地判令和元年10月29日2019WLJPCA10298027
- 原告車両概要 三菱ふそうキャンター、初度登録平成13年6月、走行距離75万5800km
- 事故発生日時 平成27年9月3日
- 原告主張時価 160万円(事故直前の売却予定金額)
- 被告主張時価 35万7000円(不明)
- 裁判所認定額 160万円(中古車市場等)
- 判旨
原告車はトラックであり,トラックは本体価格に加えて,施す架装によって附属品の価格が相当高額になるのが一般的であり(甲8の「車両本体価格」欄及び「付属品」欄参照),かつ,その架装はさまざまであるから完全に同一の車両が存在することはまれであるといえる。そうすると,同一の車種・年式・型の車両による中古車市場は観念し難いともいい得る。
しかし,架装にも一定の類型があるから,それに応じて振り分けを行うことは可能であって,一般的な乗用車ほどに充実した市場は観念できないとしても,振り分けた類型における中古車市場を観念することは可能である。本件においても,カーセンサー,グーネット等のインターネットを利用した販売サイトが存在しており,これらは中古車市場といえるから,再調達価格を算定する際に参考にすべきものである…。レッドブック等の基準価格を参考にして,標準使用年数等を踏まえて算出した時価も無視はできないが,それのみによって再調達価格を算定すべきではなく,中古車市場において実際に販売されている価格も踏まえて,再調達価格を定めるべきである。
この点,甲15ないし20,24ないし28を参考にして検討するも,走行距離が75万キロメートル程度にまで上る車両は見当たらない。ウイング車以外も含め,走行距離に着目すれば,45.7万キロメートルの車両の車両本体価格が118万円(甲16の1・3枚目の下から2つ目の車両・平成15年初度登録),55.1万キロメートルの車両の車両本体価格が220万円(甲16の3・7枚目の一番下の車両・平成15年初度登録),70.6万キロメートルの車両の車両本体価格が45万円(甲16の4・4枚目の上から2番目の車両・平成15年初度登録)であり,これらの価格は開きがあるものの一応参考になる。なお,走行距離が67万キロメートルの車両で265万円の価格が付されているものもあるが(甲28の上の車両),この車両は初度登録が平成20年であり,原告車とは7年もの差異が存在しており,このことは価格に大きな影響を及ぼすと考えられるから,参考にすべきではない。
他方,ウイング車であることに着目すれば,走行距離が40万キロメートルの車両の価格が178万円(甲20の上から2つ目の車両・平成17年初度登録),12.5万キロメートルの車両の価格が148万円(甲20の上から3つ目の車両・平成16年初度登録)である。なお,この2車両を比較すれば,前者の方が,初度登録が1年遅いとはいえ,走行距離ははるかに上回っているが,時価は高額である。そうすると,時価判断の際,走行距離は重要な考慮要素であることは否定できないとしても,必ずしもそれのみによって価格の高低が決定されるものではないといえる。
以上からすれば,平成13年初度登録であり,走行距離が75万5800キロメートルである原告車について160万円(消費税込み)という価格は,走行距離からすればやや高額とも思われるが,ウイング車であることに加え,架装の詳細内容によって価格は左右されるであろうことを踏まえれば,中古車市場においてあり得ない価格とはいえないというべきである。
加えて,原告は,本件事故以前に原告車を160万円(消費税込みの価格)で売却する契約を締結していたのであるところ,その売却が原告と買主の特殊な関係に基づく売却である等の事情は窺われないから,この原告車に付された160万円という価格は,原告車の時価を検討するにあたり,参考になるといえる。
以上を総合して考慮すれば,原告車の時価は160万円(消費税込みの価格)と認めることが相当である。
A-2 名古屋地判令和2年2月19日2020WLJPCA02198014
- 原告車両概要 マツダ・プレマシー20C、初度登録平成17年12月、走行距離12万3987km
- 事故発生日時 平成30年5月9日
- 原告主張時価 27万円(中古車市場)
- 被告主張時価 18万6000円(中古車市場、税込で20万0880円)
- 裁判所認定額 23万5440円(中古車市場)
- 判旨
インターネット上の中古車価格の検索サイトにおいて,原告車と概ね同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離等の中古車の販売価格は,原告の調査によれば27万円(税込み),被告の調査によれば18万6000円(税別)であったことが認められる。
そうすると,本件事故当時の原告車の車両時価額は23万5440円(原告調査額である27万円と,被告調査額の税込み価格20万0880円の中間値)と認めるのが相当であり,これを覆すに足りる証拠はない。
A-3 名古屋地判令和2年12月15日2020WLJPCA12158020
- 原告車両概要 ホンダ・ステップワゴン(Gタイプ特別仕様車,HDDナビスタイルセレクト)、初度登録平成19年8月、走行距離9万5000km
- 事故発生日時 平成30年10月8日
- 原告主張時価 35万8888円(平成31年2月中古車市場)
- 被告主張時価 18万円(令和2年6月中古車市場)
- 裁判所認定額 35万8888円(平成31年2月中古車市場)
- 判旨
尾張自動車損害調査サービスセンターは,平成31年2月頃,インターネットの中古車情報サイトにより,C車と同車種,同年式,走行距離7万km以上の中古車を検索したところ,条件に該当する車両が9台あり,そのうち車両本体価格の上位2台及び下位2台を除いた5台について車両本体価格の平均額を求めると,35万8888円(税抜き)であった。なお,上記5台のうちの2台(車両本体価格が税込みで39万円のものと39万8000円のもの)は,車検の残期間のないものであった。
前記認定事実によると,本件事故によるC車の修理費用相当額を51万0490円,本件事故当時のC車の時価額を35万8888円と認めることができるところ,修理費用相当額が時価額を上回るから,経済的全損として,前記時価額をもって損害額と認めることができる。
控訴人は,C車の時価額は18万円程度であると主張し,インターネットの中古車情報サイトを利用した調査結果(乙1)を証拠提出しているところ,同証拠に記載されたC車と同種・同年式の中古車4台の車両本体価格の平均額は18万1250円であることが認められる。
しかし,前記乙1の調査結果は,控訴人によれば令和2年6月頃のものであり,本件事故から1年半以上が経過した時点のものである。本件事故時のC車の時価額を算定するための資料としては,本件事故時により近い時期に行われた…の調査の結果を用いる方が適切であるといえるから,前記乙1の調査結果は,前記…の時価額の認定を左右するに足りない。
A-4 大阪地判令和3年2月5日交民54巻1号242頁
- 被告車両概要 ミラジーノ、初度登録平成12年6月,走行距離7万1686km
- 事故発生日時
- 被告主張時価 不明
- 原告主張時価 10万円程度(減価償却)
- 裁判所認定額 20万円(中古車市場)
- 判旨
被告車…と同種・同程度の車両は,中古車市場において,12万8000円,13万円,21万円,25万円などの20万円前後の価格帯で取引されていると認められる…。そうすると,被告車は本件事故により経済的全損となり,被告には車両時価額20万円の損害が生じたと認めることができる。
なお,原告は,被告車の車両時価額が10万円程度にとどまる旨主張するが,原告主張金額…は,新車価格から減価償却をして算出したものであり,車両時価額の損害は,同種・同程度の車両の再調達価格とするべきところ,原告の上記主張は採用できない。
A-5 大阪地判令和3年3月25日交民54巻2号473頁
- 被告車両概要 スズキ・ワゴンR(660RR)、初度登録平成14年、走行距離11万4321km
- 事故発生日時 平成30年12月12日
- 被告主張時価 50万円(不明)
- 原告主張時価 9万9750円(不明)
- 裁判所認定額 20万2600円(中古車市場)
- 判旨
証拠…によって認められる,被告車と同車種で年式や走行距離が類似する車両の本体価格(①8万円,②9万円,③28万円,④24万円,⑤9万9000円,⑥13万円,⑦18万8000円,⑧29万円,⑨39万9000円,⑩23万円)の平均である20万2600円をもって被告車の時価額と認めるのが相当である。
A-6 名古屋地判令和3年3月29日自保2096号92頁
- 原告車両概要 事業用大型貨物自動車、初度登録平成26年12月25日、走行距離33万0675km
- 事故発生日時 平成30年11月16日
- 原告主張時価 車両本体855万円+標準架装部分180万円(平成30年11~12月レッドブック)
- 被告主張時価 600万円(中古車市場)
- 裁判所認定額 700万円(中古車市場を修正)
- 判旨
原告車両と同型・同年式であり架装部分は原告車両と同様パブコ社製である車両(ただし,走行距離は原告車の2倍弱である。)がインターネット上で令和元年10月に588万円で販売されていること,訴訟前の交渉過程で東京海上日動が原告に対して時価額として670万円を提示していること,レッドブックには原告車両と同型・同年式の車両について時価額855万円とされていること(なお,証拠…上,「架装部分 180万円」との記載があるが,誰の手による記載か不明であり,採用できない。)が認められる。また,原告は,原告車両の新車価格について,車両本体価格1811万4000円,一次架装価格653万4400円であるとし,架装部分のうち原告仕様とするための追加費用を274万2400円(セトライン特別架装価格653万4400円からウイング車標準架装価格379万2000円を控除した額)であると主張する…。
ところで,原告は,時価額は購入価格によって左右されないとして,原告車両の購入価格を開示しない。しかし,購入価格は入手当時の原告と売り手との間で車両価格について合意した結果であり,購入当時の車両の価値を反映しているといえ,そこからの経過年数や使用状況を踏まえて,事故当時の原告車両の時価を推認させる資料となり得るものである。この点,原告代表者は,原告車両の購入価額に関する資料を会社で保管していない,必要ないと思っている,などと供述する一方で,資産台帳を見ればわかる,など矛盾した供述をしており,それらの資料を本件訴訟においては提出しないと述べる。原告代表者の供述は合理的でなく,このことからは原告が原告車両の購入価格を伏せておく意向を有していることがうかがわれ,原告代表者自身,車両は値切りして購入している,と供述していることも踏まえると,原告車両の購入価格は相応の値引きがされていると推認できる。
以上の認定を前提に原告車両の本件事故時の時価額を検討するに,原告車両の特別な仕様を施された事業用車両の時価額は個別性が強いこと,上記のとおり原告車両の購入価格は相応の値引きをされていることが推認できることからすると,原告が主張するレッドブック等に基づく評価は相当でなく,実際の取引価格を参考に算定するのが相当である。
他方,原告車両の時価額を算定する際には,被告が提出するインターネット上の中古車情報記載の同種,同年式車両の走行距離が原告車両の2倍弱であることを考慮する必要がある。また,原告車両には原告仕様の特別架装がされていることも上記中古車情報記載の車両とは異なり,原告車両の価値を増額させる要素であるから,この点も考慮する必要がある。
そうすると,車両本体部分及び標準架装部分の時価額は合計700万円程度であると認められ…る。
- 備考 特殊装備について「新車価格における原告仕様とするための追加費用は,車両本体価格と一次架装価格の合計の11%程度(274万2400円÷(1811万4000円+653万4400円))であることからすると,特別架装部分の時価額は77万円(700万円×11%=77万円)であると認められる。」とも判示している。
A-7 飯田簡判令和3年9月22日2021WLJPCA09226004
- 原告車両概要 普通貨物自動車
- 事故発生日時 令和2年4月19日
- 原告主張時価 不明(中古車市場?)
- 被告主張時価 10万8900円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 23万1500円(中古車市場)
- 判旨
被告は,原告車の初度登録が平成11年で,本件事故時には初度登録から20年以上経過していたのであるから,本件事故時の原告車の時価額は原告車の新車価格の10%である10万8900円とするのが相当と主張する。しかし,時価額は,当該自動車の事故当時における取引価格であり,本件事故時における原告車の車種,年式,グレード及び同程度の走行距離数3台の取引価格及び1台の見積価格の平均価額23万1500円であることが認められる。
A-8 東京地判令和3年11月1日2021WLJPCA11018007
- 原告車両概要 三菱ふそうスーパーグレード・ウィング12.9t積みバン、初度登録平成24年4月、走行距離28万9700km
- 事故発生日時 平成30年12月12日
- 原告主張時価 500万円(中古車市場)
- 被告主張時価 204万5000円(減価償却)
- 裁判所認定額 470万円(中古車市場)
- 判旨
原告車と同車種・型である三菱ふそうスーパーグレード大型アルミウィングの中古車市場における再取得価格は以下のとおりである。なお,原告車の新車価格は2044万5000円である。
(ア) 年式:平成23年,走行距離69万5000km
448万円
(イ) 年式:平成24年,走行距離44万8000km
660万円
(ウ) 年式:平成23年,走行距離53万9000km
435万円
(エ) 年式:平成24年,走行距離51万7000km
470万円
(オ) 年式:平成24年,走行距離46万9000km
495万円
原告車と同車種の中古車市場における再取得価格のうち最高価格と最低価格を除いた車両の平均価格は471万円であるところ,原告車の年式,走行距離を踏まえると,原告車の時価額は少なくとも470万円であると認められる。
この点,被告は,原告車が累積走行距離32万km,登録から6年を経過している車両であるから,減価償却の方法に従って時価額を算定し,204万5000円である旨主張する。しかしながら,減価償却の方法による時価額の算定は計算上の評価額にとどまるものであって,同様車種の中古車市場が存在する場合は,その価格がより取引価格の実体に合致し,当該車両の時価額を算定するに当たり,これを参考にすべきであるから,被告らの上記主張を採用することはできない。
A-9 大阪地判令和3年11月12日交民54巻6号1502頁(F-4と同裁判例)
- 被告車両概要 日野デュトロ、初度登録平成16年5月、走行距離22万5300km
- 事故発生日時 平成30年7月17日
- 被告主張時価 238万5000円(中古車市場)
- 原告主張時価 55万5000円(減価償却)
- 裁判所認定額 220万円(中古車市場)
- 判旨
被告車両と概ね同年式の中古車両は,中古車市場において198万円(平成16年式:走行距離8.3万km),268万円(平成17年式:走行距離12.8万km)といった価格で販売されていることが認められ,被告車両の車両時価が上記修理費用を上回るものであるとは認められない。
そして,上記各中古車両は,いずれも被告車両(走行距離22万5300km)より走行距離が少ないものであるところ,被告車両の車両時価は,上記中古車価格を参考に220万円と認めるのが相当である。
なお,原告は,減価償却による評価によって被告車両の車両時価が55万5000円であると主張するが,採用することはできない。
A-10 名古屋地判令和3年11月26日交民54巻6号1545頁
- 原告車両概要 トヨタ・クラウンコンフォート、初度登録平成26年2月、走行距離31万5800km
- 事故発生日時 令和2年1月13日
- 原告主張時価 なし(分損前提で修理費用94万9069円のみ主張)
- 被告主張時価 22万2000円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 55万円(中古車市場)
- 判旨
令和2年11月時点で,上記原告車両と同一の車種・年式・型の車両である平成23~26年初度登録のクラウンコンフォート(走行距離は20.8万km~47万km)の販売価格は,概ね50万円~59万7000円の範囲内にあり,その平均的価格は,約55万円程度と認められるから,原告車両の本件各事故当時の時価額を55万円と認める。
A-11 名古屋地判令和3年11月26日2021WLJPCA11268040
- 原告車両概要 ホンダ・ステップワゴンD、初度登録平成15年2月、走行距離13万5000km
- 事故発生日時 令和元年9月29日
- 原告主張時価 27万円(中古車市場)
- 被告主張時価 19万6000円(損保の損害レポート)
- 裁判所認定額 27万円(中古車市場)
- 判旨
令和2年1月8日時点で,上記原告車両と同一の車種・年式・型の車両である平成15年初度登録のステップワゴンD(走行距離は8.1万km~14.6万km)の本体価格は,概ね10万円~45万円の範囲内にあり,その平均的価格は,約27万円程度と認められるから,原告車両の本件事故当時の時価額を27万円と認める。
被告は,原告車両の時価相当額を19万6000円にとどまる旨主張するが,その根拠とする「自動車車両損害調査報告書別紙(時価額算定シート)」は,必ずしもその算定に使用した資料が明らかではなく,直ちに採用することができない。
A-12 名古屋地判令和3年12月20日2021WLJPCA12208023
- 原告車両概要 BMW130iMスポーツパッケージ、初度登録平成20年9月、走行距離14万6810km
- 事故発生日時 平成30年9月13日
- 原告主張時価 なし(分損前提で修理費用96万0783円のみ主張)
- 被告主張時価 60万円(中古車市場)
- 裁判所認定額 80万円(中古車市場の90%)
- 判旨
中古車市場における初度登録が平成20年以前又は走行距離が10万キロメートルを超えるBMW130iMスポーツパッケージ17台の本体価格の平均は86万8000円であると認められる。このことに,上記17台の平均走行距離は9万キロメートルであり,X1車の走行距離よりも5万キロメートル以上短いことを併せ考えると,本件事故当時のX1車の時価額は,上記平均価格よりも1割程度を減じた80万円と認めるのが相当である。なお,原告側は,X1車の時価額に関し,平成28年10月末頃,現金約90万円で購入し,その後約30万円の整備代を支出して,同車を整備したと主張するが,その売買代金額や整備費用を裏付ける証拠はなく,X1車の時価額についての上記認定を左右しない。
A-13 名古屋地判令和4年1月11日2022WLJPCA01118009(D-5と同裁判例)
- 被告車両概要 ダイハツ・ムーヴLリミテッド、初度登録平成16年3月、走行距離9万8475km
- 事故発生日時 令和元年9月7日
- 被告主張時価 13万7000円(中古車市場)
- 原告主張時価 10万2000円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 13万7000円(中古車市場)
- 判旨
被告車については,本件事故当時のレッドブックに掲載はないものの,インターネットの中古車販売サイト上,同年式・同車種・同型式・走行距離9万km以上の車両5台が平均額およそ14万円(消費税10%込み)で販売されている。上記サイトの価格時点は令和3年10月であり,本件事故から約2年が経過していることに照らすと,本件事故時の被告車の時価額は,同価格を消費税8%込みに換算した13万7000円(千円未満四捨五入)を下回らないと認めるのが相当である。
A-14 大阪地判令和4年3月24日2022WLJPCA03248036
- 原告車両概要 ホンダDio110、初度登録平成23年、走行距離5万4600km
- 事故発生日時 令和元年6月19日
- 原告主張時価 10万円(中古車市場?)
- 被告主張時価 不明(原告主張時価の否認のみ)
- 裁判所認定額 10万円(中古車市場の約62%)
- 判旨
原告車と同じ車種・年式の車両について,走行距離2万2831kmの車両につき車両価格14万9000円(支払総額16万9000円),2万8650kmの車両につき車両価格13万5000円(支払総額15万5000円)で販売されていることが認められるところ,これらの事実を踏まえれば,原告車の車両時価額は10万円と認めるのが相当である。
A-15 大分地判令和4年5月19日2022WLJPCA05196003
- 原告車両概要 トヨタ・シエンタ、初度登録平成17年6月、走行距離15万3200km
- 事故発生日時 令和2年7月10日
- 原告主張時価 21万3363円(中古車市場)
- 被告主張時価 14万9000円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 16万円(中古車市場平均の75%)
- 判旨
原告車は、初度登録年月が平成17年6月であり、令和元年12月11日時点の走行距離が15万3200kmであること、原告車と同種の車両(トヨタ シエンタ。初度登録年月平成17年6月)と同種の車両が中古市場において5万9000円から36万円までの間の価格で取引されていること、原告車の右後部に本件事故前から凹痕の傷があったこと等に照らせば、車両時価額は、中古市場における平均時価額(乙7号証により認め得る取引価格のうち最低価格と最高価格を除いたものの平均額)21万3363円から約2割5分を減額した16万円と認めるのが相当である。
なお、被告は、原告車の初度登録年月や走行距離を踏まえれば、原告車の時価額は、新車価格に10%を乗じた14万9000円にすぎない旨主張するが、中古車が損傷を受けた場合、当該自動車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するのに要する価額によって定めるのが相当である(最高裁昭和48年(オ)第349号同49年4月15日第二小法廷判決・民集28巻3号385頁参照)ところ、本件においてこれと異なる扱いをすべき事情があるものとは認められないから、被告の上記主張は採用することができない。
A-16 名古屋地判令和4年6月10日2022WLJPCA06108002
- 被告車両概要 トヨタ・ソアラ、初度登録平成13年5月、走行距離14万1846km
- 事故発生日時 令和2年7月6日
- 被告主張時価 83万4428円(中古車市場?)
- 原告主張時価 60万円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 74万円(中古車市場)
- 判旨
同型式、同年式、概ね同程度の走行距離数の中古車13台(なお、同一の車両を除いた台数である。)を参考に、被告車両の市場価格を算定するのが相当である。
まず、走行距離14万キロメートルから14万5000キロメートルの車両7台の平均価格は約69万5000円であり、さらに走行距離14万9000キロメートルまでの車両6台を加えると、平均価格は74万円となる。
これらの価格に買替諸費用として登録代行費用2万9800円、書類作成費用1万9800円、検査代行料1万9800円及びリサイクル料1万4220円の合計8万3620円を加えると、いずれにせよ被告車両の修理費用72万5087円を超える。したがって、被告車両は経済的全損とはならない。よって、被告車両の損害は、同修理費用である72万5087円と認められる。
A-17 名古屋地判令和4年6月29日2022WLJPCA06298002
- 原告車両概要 プレオL2WDマイルドチャージ、初度登録平成13年、走行距離9万9000km
- 事故発生日時 平成30年8月29日
- 原告主張時価 14万1882円(中古車市場17台)
- 被告主張時価 7万2000円(中古車市場3台)
- 裁判所認定額 9万7200円(中古車市場5台)
- 判旨
別紙「プレオL車両価格一覧表」のうち、2002年式の車両(番号3、8、9、10)、駆動が4WDの車両(番号2、7、13、16)及びスーパーチャージャーの車両(番号3、6)は、原告車の同一の車種・年式・型の車両ということはできない。
また、同一覧表の番号1、15、17の車両は走行距離が原告車と大きく異なっており、また、番号18の車両は価格時点が本件事故時と2年半以上離れており、いずれも参照することは相当でない。
そうすると、原告車の時価額は、上記各車両を除く5台(番号4、5、11、12、14)の平均価格である9万7200円と認めるのが相当である。
A-18 東京地判令和4年8月25日2022WLJPCA08258007
- 原告車両概要 自家用普通乗用自動車
- 事故発生日時 令和2年6月19日
- 原告主張時価 54万1800円(中古車市場)
- 被告主張時価 15万円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 不明(中古車市場)
- 判旨
控訴人X2は、初度登録から10年が経過している車両の時価額が新車価格の10%であることを前提に、被控訴人車の時価額は15万円であるから経済的全損である旨主張する。
しかし、中古車の事故当時の車両価格(時価額)は、原則として、同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するに要する価額によって定めるべきであり、本件において、初度登録から10年が経過した車両の時価額を新車価格の10%と認めるべき事情もなく、修理費用が時価額を超えると認めるべき証拠もない。
したがって、控訴人X2の上記主張は、採用できない。
A-19 東京地判令和4年8月25日交民55巻4号1030頁
- 原告車両概要 事業用準中型貨物自動車
- 事故発生日時 令和2年11月9日
- 原告主張時価 不明(中古車市場)
- 被告主張時価 50万3000円(減価償却)
- 裁判所認定額 不明(中古車市場)
- 判旨
被控訴人車は、平成19年初年度登録のアルミバン架装された2tトラックであり……、中古車市場における価格算定の資料がないと認めるに足りる証拠はなく、控訴人と被控訴人会社との間で定率減価償却による時価額の算定方法を適用するとの合意もない。したがって、修理費用が定率減価償却により算出された時価額を超えていることをもって、経済的全損であると認めることはできず、控訴人の上記主張は採用できない。
A-20 名古屋地判令和4年9月7日2022WLJPCA09078003
- 被告車両概要 トヨタカローラフィールダーベースグレードX特別仕様車X・HIDセレクション、初度登録平成20年、走行距離7万5000km
- 事故発生日時 令和3年1月1日
- 被告主張時価 36万2250円(中古車市場)
- 原告主張時価 16万1000円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 不明(中古車市場)
- 判旨
平成19年式及び平成20年式の原告車と同型車が掲載された中古車販売サイト(グーネット……及びカーセンサー……)の内容は別紙「カローラフィールダー中古車価格一覧表」のとおりであり、原告車と同年式、同型車2台……の販売価格に照らしても、本件事故時の被告車の価額及び買替諸費用の合計額は上記……の修理費用を上回るものと認められる。
原告は、販売サイトに掲載された車両の台数は少ないことから市場性は認められず、被告車の価額は定率法により新車価格の10%に相当する16万1000円と認定すべきである旨主張するが、上記別紙のとおり、被告車よりも年式が古い車両や走行距離が長い車両であっても販売されている上、市場で販売されている中古車のすべてが上記各サイトに掲載されるものでもないから、原告の主張は採用できない。
A-21 東京地判令和4年10月31日2022WLJPCA10318002
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和2年6月26日
- 原告主張時価 28万円(中古車市場)
- 被告主張時価 不明(原告主張時価の否認のみ)
- 裁判所認定額 28万円(中古車市場)
- 判旨
原告車両と同型の車両の中古小売価格は28万円と認められるから……、原告車両の時価額は同額を下らないといえる。
A-22 名古屋地判令和4年11月8日自保2144号164頁
- 原告車両概要 冷蔵冷凍車、初度登録平成18年4月、走行距離82万1300km
- 事故発生日時 平成29年3月22日
- 原告主張時価 220万5492円(中古車市場)
- 被告主張時価 200万円(中古車市場+走行距離)
- 裁判所認定額 200万円(税抜・中古車市場+走行距離考慮)
- 判旨
原告提出に係るレッドブックによれば、原告車両と同型の車両(平成18年式)の平成27年3~4月における中古小売価格は250万円(消費税を含まない。)、平成28年3~4月における中古小売価格は230万円(消費税を含まない。)とされる。また、原告車両のような冷凍車(8トン、平成20年以前の年式)については、これらの価格に9万円が加算される。さらに、(小型)トラックについては、走行距離に応じた加減評価がなされることとなっており、120か月超かつ走行距離が82万kmを超えて83万km以内の車両については、78万円減価(目安)とされる。……
被告提出に係る中古車市場価格の調査資料によれば、原告車両と同じメーカー、車名、年式及びボディの形状(冷凍バン/冷凍ウィング/保冷バン/保冷ウィング)の価格は、走行距離が47万5000kmのものが195万8000円(消費税を含む。)、42万9000kmのものが239万7000円(消費税を含む。上記2台の平均価格は217万7500円である。)にて売り出されている……。
原告車両の修理費用はその時価額を上回り、原告車両は本件事故によって経済的全損に陥ったことが明らかといえるから、本件事故による損害と認められるのは原告車両の時価額に限られる。そして、その金額は、上記……から窺われる相当な市場価格に加え、原告車両の走行距離が極めて長距離に及んでいること等に鑑み、200万円(消費税を含まない。)と認めるのが相当である。
A-23 名古屋地判令和4年11月11日自保2136号136頁
- 原告車両概要 ダットサントラック
- 事故発生日時 令和元年10月24日
- 原告主張時価 91万4667円(購入価格+中古車市場)
- 被告主張時価 11万円(レッドブック)
- 裁判所認定額 少なくとも80万円程度(中古車市場)
- 判旨
原告車の時価については、レッドブック上の価格を参考とすると、多くとも30万円台であり、例年のレッドブック上の価格推移から推計すると、被告らが主張する時価額という見方も成り立ち得る。
しかし、原告車については、年式等において参考にし得る車両に係る取引の実情(市場)があるから、実際上の車両価値を検討するには、こうした取引価格を相応に考慮する必要がある。
そして、当該取引の実情に照らすと、原告が主張するように原告車の車種……について需要が高まっていたり、海外輸出が盛んであったりするかは措くとしても、令和2年以降の実情としては、かなり古い年式のものについても相応に高額で取引されている事例があること(したがって、必ずしも時間の経過のみによって、通常の車両と同程度に価値が減殺される車種であるとまではいい難い。)、原告車自体についても、原告が令和元年6月に89万8737円で購入しているが、この価格は上記の取引の実情に照らして不自然とはいえず、これが当時の原告車の価値を示すものとして一定程度考慮し得ることなどによれば、少なくとも本件事故当時の原告車の時価を算出するにあたって、レッドブックの記載を過大視すべきではなく、これら具体的な取引価格を参酌すべきであると解する。
そして、原告車の取引の実情を見ると、令和2年及び令和4年当時の検索結果によれば安いもので55万円、高いもので213万円の価格がついており、令和2年当時も安いもので59万円、高いもので198万円の価格がついているのであり(その平均は、一番高い198万円の車両を除いても70万円を上回る。)、原告車……については、少なくとも60万円から百数十万円程度の市場価格があるものと認められる。なお、こうした取引価格の幅は、当該車両に係る仕様や装備、整備の状態等を反映しているものと解される。そして、原告車は令和元年6月頃に約90万円で購入されているが(この価格についても、原告車の整備状況等を一定程度反映したものと推察される。)、原告車の価値が本件事故までの数か月の間(長くとも5か月程度)に10%を超えて低減するとは考えにくい。
以上を総合すると、本件事故当時の原告車には、少なくとも80万程度の価値があり、また、車両の再取得においては、一定の諸経費(少なくとも原告主張に係る検査登録手続代行費用2万5000円、車庫証明代行費用1万5000円、ナンバープレート1440円、検査・登録印紙代3220円、車庫証明費用2700円といったものは認めることができる。)を要することも考慮すべきである。
そうすると、原告車の時価額は少なくとも修理費用である81万2559円を上回るといえる。したがって、修理費用81万2559円をもって原告車に係る車両損害と認めるべきである。
A-24 東京地判令和4年11月18日2022WLJPCA11188001
- 原告車両概要 日産クリッパートラック、初度登録平成21年11月
- 事故発生日時 令和元年7月1日
- 原告主張時価 25万1000円(中古車市場)
- 被告主張時価 不明(原告主張時価の否認のみ)
- 裁判所認定額 25万1000円(中古車市場)
- 判旨
平成20年式及び平成21年式の日産クリッパートラック13台の中古車価格の平均額は25万1000円であるから、原告車の時価額は同額であること、他方、原告車の修理には27万9742円を要することがそれぞれ認められ、これに反する証拠はない。
A-25 大阪地判令和4年11月25日2022WLJPCA11258017
- 原告車両概要 スバル・フォレスター、初度登録平成13年1月、走行距離15.2万km
- 事故発生日時 令和2年4月21日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 18万6000円(不明)
- 裁判所認定額 42万1102円を下回らない(中古車市場)
- 判旨
本件事故により原告車両は左リヤドア等が損傷し、その修理には42万1102円を要するものと認められる……。
被告Y1は、原告車両の車両時価額が18万6000円であり、同額を超える損害は認められない旨主張するが、本件で提出された原告車両と概ね同年式の同種車両……の価格資料……による市場価格は別紙「中古車市場価格」のとおりである。そして、原告車両のモデル(S/tb-StiⅡ)は同種車両の中でもグレードが高く、新車価格は他のモデルより高額な255万5000円(「2.0 S/tb 4WD」は219万7000円、「S/20タイプA」は211万円)であったと認められるところ……、原告車両の時価額を検討するにあたって下位モデルの中古価格を直ちに参考にするべきとはいえず、同じモデルの中古車市場価格は、原告車両……よりも走行距離がやや少ない車両のものであるとはいえ、平均で50万6000円であるから、原告車両の車両時価額が上記修理金額を下回ると認めるには足りないというべきである。
したがって、原告Xには、本件事故により修理費用相当額である42万1102円の損害が生じたものと認められる。
A-26 東京地判令和4年12月13日交民55巻6号1615頁
【原告車両】
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和元年5月21日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 65万4400円(不明)
- 裁判所認定額 162万4979円を下回らない(中古車市場+パワーゲート)
- 判旨
本件事故による原告車の修理費は162万4979円であると認められる。この点、被告は、原告車が本件事故当時法定耐用年数を大きく超過していたとして、原告車は経済的全損である旨主張する。しかしながら、原告車は、販売価格195万円のパワーゲートを装着した車両であるところ、パワーゲートを装着していない原告車と同様の車種で年式が原告車より古い車両でも100万円以上で販売されていることに鑑みると、原告車の時価が、原告車の修理費を下回っているとは認められない……。
したがって、原告車が経済的全損であるとは認められないから、原告車の車両損害は、修理費である162万4979円であると認めるのが相当である。
【被告車両】
- 被告車両概要 タクシー
- 事故発生日時 令和元年5月21日
- 被告主張時価 100万円程度(中古車市場+架装)
- 原告主張時価 34万7000円ないし37万4000円(不明)
- 裁判所認定額 50万円(中古車市場+経年)
- 判旨
本件事故により、被告車が損傷し、その修理費は106万4677円であると認められる……。
しかし、被告車の新車価格は347万円であるものの、初度登録平成19年であり、被告車と同車種の時価は平成29年当時63万円であったことが認められる。そして、本件事故があったのはさらに2年後の令和元年であるから、本件事故当時の被告車の時価は50万円程度であったと認めるのが相当であり、被告車の価値が上記修理費を下回るから経済的全損である……。
被告は、被告車はタクシーであり、種々の架装がなされていることから本件事故当時の時価額が100万円程度であった旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
したがって、本件事故による被告車の損害は50万円であると認められる。
A-27 名古屋地判令和5年1月11日交民56巻1号1頁(D-9と同裁判例)
- 被告車両概要 北米トヨタセコイヤ、製造年平成20年
- 事故発生日時 令和3年1月31日
- 被告主張時価 298万円(不明)
- 原告主張時価 220万5000円(中古車市場・同グレード)
- 裁判所認定額 240万円(中古車市場・最高額と最低額を除く)
- 判旨
被告車両の走行距離については、輸入の過程でメーターに細工がされていると被告Y1が供述しているところ、自動車検査証上の数値(令和2年8月4日時点で5万9100マイル……)が正確な数値とは認めがたい上、メーターの上がり方(1マイル毎か、1km毎か)も明らかでなく、購入後の走行距離も明らかでないことから、本件事故時の被告車両の走行距離は不明というほかない。また、中古車市場の販売状況……を見ても、販売価格と走行距離との相関関係が強いとは言い難い。そのため、走行距離は、時価算定の観点では重視しない。
そこで、被告車両の時価は、上記10台のうち、最低価格の車両(甲23の出品番号27149)及び最高価格の車両(甲23の出品番号70238)を除いた8台の平均売買価格を参考に240万円と認める。なお、被告車両はプラチナムグレード・後輪駆動であるが、グレードないし駆動方式と売買価格の相関関係はいずれも必ずしも明らかでなく、またプラチナムグレード・後輪駆動に限定すると参照できる車両が限定されてしまい、車両ごとの特徴が価格に及ぼす影響が大きくなり、相当でないから、他のグレード・駆動方式の車両も含むこととした。(なお、被告らが援用する中古車価格(298万円……)は、製造年が明らかでなく、参考にしない。)
A-28 福岡高判令和5年1月20日自保2151号111頁
- 原告車両概要 日野レンジャー、初度登録平成14年6月
- 事故発生日時 令和元年9月18日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 60万円(保険価額)又は74万円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 100万円を下回らない(中古車市場)
- 判旨
被控訴人車両と同じ車種……で、年式が平成13年から平成15年まで……、走行距離18万km以上の中古車の価格をインターネットの中古車情報のウェブサイトで検索した結果……によれば、その販売価格はいずれも100万円を下回らないことが認められる。
……被控訴人車両が損傷した場合に、被控訴人会社が被控訴人車両を被保険車両として被控訴人保険会社と締結した自動車保険契約に基づいて支払われる保険金の上限は、車両保険協定価額60万円であることが認められるが、この事実をもって、被控訴人車両の本件事故当時の時価額が60万円を超えないということはできない。
また、証拠(……自動車車両損害調査報告書)には、被控訴人車両の時価が74万円である旨の記載があるが、これは、被控訴人車両の新車価格を740万円であるとした上でその10%の金額を時価とするという便宜的なものであり、10%という数値の根拠も示されていないから、これをもって被控訴人車両の本件事故当時の時価額が74万円を超えないということはできない。
A-29 金沢地判令和5年2月21日2023WLJPCA02216014
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和元年8月15日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 9万4000円(不明)
- 裁判所認定額 53万4000円(中古車市場)
- 判旨
証拠……によれば、原告車両の時価額は、同種車両の取引価格に照らし、53万4000円と認められることからすれば、本件事故による車両損害の額は、53万4000円と認められる。
A-30 旭川地判令和5年3月16日判時2580・2581号229頁
- 原告車両概要 ホンダステップワゴン、初度登録平成17年9月走行距離10万6600km
- 事故発生日時 令和3年2月3日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 7万1765円(不明(初度登録が古いこと等の指摘))
- 裁判所認定額 36万円(中古車市場(買替諸費用込み))
- 判旨
平成27年当時のシルバーブック上の価格が61万円程度で……、令和3年12月当時の同年式及び同程度の走行距離の車両中古価格(諸費用込)は概ね31万円から42万円程度である……。以上の諸事情、特に甲6を踏まえると、ステップワゴンの本件事故当時の時価額としては、買替にかかる諸費用を含めて36万円の限度で認めるのが相当である。
A-31 東京地判令和5年3月20日2023WLJPCA03208005
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和元年9月27日
- 原告主張時価 18万9333円(中古車市場)
- 被告主張時価 なし(原告主張時価の否認のみ)
- 裁判所認定額 18万9333円(中古車市場)
- 判旨
証拠……によれば、原告車両の修理費は39万3756円であること、原告車両と同じ車種、年式の中古市場の平均額が18万9333円であることが認められる。したがって、原告車両は、時価額が修理費を下回ることから、経済的全損といえ、時価相当額の18万9333円が本件事故と相当因果関係ある損害となる。
A-32 東京地判令和5年3月20日2023WLJPCA03208006
- 原告車両概要 ニッサンセレナ、初度登録平成20年8月、走行距離10万7900km
- 事故発生日時 令和2年12月23日
- 原告主張時価 なし
- 被告主張時価 21万4000円(不明)
- 裁判所認定額 39万円(中古車市場)
- 判旨
証拠……によれば、C車の修理費用は50万9445円と認められるところ、反訴被告らは、C車の本件事故当時の時価額は21万4000円であり、修理費用を下回るから、経済的に全損である旨を主張するので、以下検討する。
C車と同車種、年式の車両(ニッサン・セレナ)のうち、走行距離が9.1万kmであった車両2台の価格は、それぞれ19万1000円(買替諸費用を含む価格は32万8000円)、39万円(買替諸費用を含む価格は49万9000円)であったことが認められる。
C車の本件事故当時の走行距離は少なくとも上記10万7900km以上であったと認められるところ、C車と同車種、年式の車両のうち走行距離が近い車両については、買替諸費用を含む価格がいずれも上記修理費用を下回ることが認められるから、C車は経済的全損であって、反訴原告は本件事故当時のC車の価格及び買替諸費用の賠償を受けるにとどまる。そして、C車と同車種、年式の車両のうち走行距離が近い車両のうち、本件事故発生日に近い価格等は39万円(買替諸費用を含む価格は49万9000円)であると認められる(同価格が記載された乙第6号証は、令和3年1月時点のものであり、本件事故に近い車両の価格等を示すものと認められる。)。
A-33 名古屋地判令和5年3月27日交民56巻2号427頁
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 平成30年12月13日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 不明
- 裁判所認定額 40万円(中古車市場)
- 判旨
原告AIGは、車両保険金を支払うに当たり、F車を40万円と査定している……。
F車の時価額は、F車と同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離の自動車の中古市場価格によって認定すべきところ、被告F及び原告AIGの提出する中古車販売広告……には、F車と同年式又はそれよりも古く、かつ、排気量が2300ccの車両が4台掲載されており(乙14の5枚目の1台目及び3台目、同6枚目の3台目、同8枚目の2台目)、その価格はいずれも40万円を上回っている。上記販売広告は令和4年8月時点のものであることからすると、原告AIGの査定額は相当といえる。
A-34 名古屋地判令和5年5月17日2023WLJPCA05178011
- 原告車両概要 トヨタカローラフィールダー1.5X Gエディション、初度登録平成20年10月、走行距離10万2819km
- 事故発生日時 令和3年7月4日
- 原告主張時価 33万6000円(被告主張時価争わず)
- 被告主張時価 33万6000円(中古車市場)
- 裁判所認定額 33万6000円(中古車市場)
- 判旨
原告車と同種・同年式であり、かつ、走行距離が10万km前後の車両の市場価格については、本体価格28万円(支払総額41.6万円)、本体価格41.8万円(支払総額55万円)、本体価格31万円(支払総額39.9万円)のものがあり(グーネットによる検索結果)、その本体価格の平均は33.6万円となる。
原告車の価値について検討するに、上記認定事実(原告車に係る市場価格)によれば、33万6000円と見るのが相当である。
A-35 東京地判令和5年6月28日2023WLJPCA06288009
- 被告車両概要 普通貨物自動車
- 事故発生日時 令和3年3月14日
- 被告主張時価 26万6750円(インターネット)
- 原告主張時価 22万6571円(インターネット)
- 裁判所認定額 22万6571円(インターネット)
- 判旨
被告は、中古車検索サイトの検索結果……に基づき、被告車と同じ車種及び年式として該当した8台の中古車の平均価格が26万6750円であったと主張する。しかし、被告が提出する検索結果のうち1台は冷蔵冷凍車の改造がされ、54万8000円という高額となっているから、被告車と同等価値の車両とはいえない。したがって、被告車の車両時価額は、他の7台の平均価格である22万6571円とするのが相当である。
A-36 東京地判令和5年6月30日2023WLJPCA06308023
- 原告車両概要 スバルフォレスター、初度登録平成22年3月、走行距離約3万km
- 事故発生日時 令和4年2月22日
- 原告主張時価 148万9100円(インターネット+部品代・取付工賃)
- 被告主張時価 33万7000円(不明)
- 裁判所認定額 80万円(インターネット+部品代を考慮)
- 判旨
インターネット上の中古車販売サイトにおいて、平成22年式の反訴原告車と同車種の車両7台(走行距離2万9000km~9万5000km)が本体価格49万8000円から78万円で販売されていることが認められる。
そうすると、反訴原告車の車両本体の時価額は、反訴原告が主張するとおり70万円と認めるのが相当である。
次に、反訴原告は、反訴原告車に合計37万7100円相当の部品が取り付けられていた旨主張し、証拠……によれば反訴原告車に多数の部品が取り付けられていたと認められる。しかし、本件全証拠によってもこれらの部品の購入から本件事故までの経過期間及び本件事故時における部品の状態が十分に明らかにされたとはいえないことからすれば、部品による反訴原告車の増価分は、反訴原告が主張する上記部品代の4分の1強である10万円を超えないというべきである。
以上によれば、車両損害は80万円(=70万円+10万円)とするのが相当である。
A-37 大阪地判令和5年7月28日2023WLJPCA07288019
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和3年8月9日
- 原告主張時価 139万9000円(不明)又は97万5865円(レッドブックに事故前からある損傷を考慮し買替諸費用を上乗せ)
- 被告主張時価 24万2000円(不明(事故前からある損傷を考慮))
- 裁判所認定額 39万5818円(市場価格に事故前からある損傷を考慮)
- 判旨
本件事故当時の原告車両と同等の車両の時価は、86万3818円と認められる……(計算式:(139万9000円(税込み価格)……+73万6636円(税抜き価格)×1.1×10台)÷11台≒86万3818円)。
原告車両には、本件事故より前に損傷が生じており、その損傷を修理するための費用は46万8000円と認められる……。第1事件原告は、本件事故より前に生じていた損傷の修理費用について、概算お見積書……を前提として、14万3759円であると主張するが、同見積書の内容は、原告車両の損傷の全ての箇所に対応するものということはできないから……、第1事件原告の前記主張を採用することはできない。
第1事件原告が原告車両を買い替えるに当たって要する諸費用は10万円を下回らないと認められる……。
以上を踏まえると、本件事故当時の原告車両の時価は、39万5818円(=86万3818円-46万8000円)と認めるのが相当である。
A-38 東京地判令和5年9月11日自保2167号175頁
- 原告車両概要 ホンダフォルツァ・Z、初度登録平成25年
- 事故発生日時 令和3年4月8日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 不明
- 裁判所認定額 28万7072円(インターネット?)
- 判旨
双方当事者が提出する原告車と同種同等の車両の中古車(合計11台)の車両価格の平均額は28万7072円であることが認められ、原告車の時価額として同額を損害と認める。
A-39 東京地判令和5年9月14日2023WLJPCA09148013
- 原告車両概要 ニッサンキャラバン、初度登録平成16年
- 事故発生日時 令和3年7月6日
- 原告主張時価 46万8250円(不明)
- 被告主張時価 32万8000円(不明)
- 裁判所認定額 44万2166円(インターネット?)
- 判旨
平成14年式から平成16年式までの同車種の車両8台が、支払総額33万5000円~74万3000円(車両本体価格28万5000円~63万3000円)で売却に付されていること、上記8台のうち最低価格の車両と最高価格の車両を除く6台の支払総額の平均額が44万2166円(車両本体価格33万5833)であることが認められる。
以上によれば、被控訴人車の時価額は上記支払総額の平均額である44万2166円と認めるのが相当である。
これに対し、控訴人X1は、①諸費用を含む支払総額の平均額をもって時価額とすることは相当ではないし、②被控訴人車とは年式の異なる車両を含めて平均額を算出することも相当ではない旨主張する。
しかし、上記①について、車両を購入する際に法定費用及び手続代行費用等の諸費用を要するのは公知の事実である上、上記のとおりの支払総額の平均額と車両本体価格の平均価格の差額からすれば、諸費用の平均額の水準が不相当であるともいい難いから、諸費用を含む支払総額の平均額をもって被控訴人車の時価額とすることは何ら不相当ではない。上記①は理由がない。
上記②について、支払総額の平均額を算出するに当たって取り上げた各車両の年式は、いずれも被控訴人車の年式に近接するものである上、被控訴人車と異なる年式の車両はいずれも被控訴人車よりも古く、特段の事情のない限り、その時価額は被控訴人車の時価額よりも低額となるはずであり、これらの車両を含めて平均額を算出することによって、それが不当に高額となるおそれはないものと解される。そして、証拠上、年式の古い車両の時価額が高額となることをうかがわせるに足りる特段の事情は認められない。したがって、被控訴人車とは年式の異なる車両を含めて平均価格を算定することが不相当であるとはいえない。上記②も理由がない。
A-40 東京地判令和5年10月3日2023WLJPCA10038004
- 原告車両概要 トヨタノア(グレードS1)、初度登録平成28年4月、走行距離2万7000km
- 事故発生日時 令和4年1月1日
- 原告主張時価 251万円以上(インターネット?)
- 被告主張時価 不明
- 裁判所認定額 217万1800円(インターネット?)
- 判旨
控訴人提出の中古車販売価格に関する書証……によっても、平成28年式の同程度の走行距離のトヨタ、ノア(グレードS1)の令和4年時の時価額は217万1800円であり、控訴人は、上記修理費用相当額と買取代金とを合わせて、これとほぼ遜色のない211万円以上の車両価値を回収していることになる。
なお、控訴人は、前記の中古車販売価格に関する書証により、控訴人車の車両時価額があたかも251万円以上であるかのような主張をするが、平均価格を算定する対象車両としてより若い平成29年式の車両も混在していて、抽出条件の設定が平成28年式の控訴人車の車両時価算定方法として不適切であり、採用の限りでない。
A-41 東京地判令和5年10月4日2023WLJPCA10048005
- 原告車両概要 日産リーフ、初度登録平成28年9月、走行距離2万1800km
- 事故発生日時 令和2年7月17日
- 原告主張時価 154万7000円(レッドブック)
- 被告主張時価 62万円(インターネット?)
- 裁判所認定額 125万1066円(インターネット?)
- 判旨
同年初度登録、走行距離2万キロメートルから3万キロメートルの同車種の中古車15台の平均価格は、125万1066円である……。
以上によれば、原告車の時価額は125万1066円であり、これを損害額と認めるのが相当である。
A-42 東京地判令和5年11月6日2023WLJPCA11068005
- 原告車両概要 ベンツG500ロング4WD、初度登録平成21年、走行距離7万5200km
- 事故発生日時 令和3年4月17日
- 原告主張時価 648万円(インターネット)
- 被告主張時価 500万円(インターネット)
- 裁判所認定額 574万4900円(インターネット)
- 判旨
証拠……及び弁論の全趣旨によれば……、②原告車と同種・同程度の年式(いずれも2006年から2009年までの年式)・同程度の走行距離(いずれも6万6000kmから12万1000kmのもの)を条件とするインターネット上で取引される中古車10台(別紙「本件被害車両との比較表」の1番(甲2)、同比較表の2番から8番(甲9、なお、8番は乙3の一番目の車両と同じ。)、被告提出の乙3号証の二番目と三番目の車両の合計)の車両本体価格の平均額は、買替諸費用を除いても574万4900円であることが認められる。
そうすると、原告車の時価額は、買替諸費用を含めて580万円を下らないというべきである。
被告は、原告車と同種の車両は500万円程度で購入可能である旨主張するが、上記10台のうち500万円程度で購入できるものは上記のインターネット上で取引される中古車10台のうち2台にとどまる上、同10台は全体的に原告車よりも年式が古く走行距離が長い車が相当数含まれているもので、特に高額な車両のみを集積したものとも認められないのであるから、500万円を時価額と認めるのは低額に過ぎる。
A-43 横浜地判令和5年11月9日自保2170号106頁
- 原告車両概要 レクサス・GS350、初度登録平成17年12月、走行距離16万9873km
- 事故発生日時 令和2年4月15日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 52万円(新車価格10%)又は58万4000円(中古車市場)
- 裁判所認定額 58万4000円(中古車市場)
- 判旨
同年式のレクサス・GS350の中古車10台の平均価格が58万4000円であることからすると、原告自動車の時価額は58万4000円であると認められる。そうすると、原告自動車の修理費用は81万8158円……であるから、修理費用が時価額を上回る経済的全損であり、上記時価額が原告自動車の損害と認められる。
これに対し、原告X1は、原告自動車と同じ平成17年式でも修理費用を上回る数多くの売出し事例が存在するから、原告自動車の整備状態が良好であったことを踏まえると、原告自動車は分損であり、修理費用である81万8158円が損害と認定されるべきであると主張する。
しかし、原告X1が指摘する売出し事例は、走行距離が4万2000kmから9万8000kmと、いずれも原告自動車よりも走行距離が大幅に少ない車両ばかりであり、これらの売出価格をもって原告自動車の時価額と認めることはできない。
よって、原告X1の上記主張は採用できない。
A-44 東京地判令和5年12月1日2023WLJPCA12018002
- 原告車両概要 ホンダS2000、初度登録平成13年、走行距離11万4500km
- 事故発生日時 令和4年4月29日
- 原告主張時価 298万円(インターネット?)
- 被告主張時価 159万円(レッドブック)
- 裁判所認定額 269万円(インターネット)
- 判旨
原告車と同種同年式の車両が以下のとおりインターネット上で販売されている(下記aないしcに関する記載は左から順に走行距離、車両本体価格(消費税を含む。)、修復歴の有無である。)……。
a 10万7000km 298万円 なし
b 14万3000km 233万円 あり
c 11万4000km 240万円 なし
前記認定事実によれば、原告車の本件事故当時の時価額は、修復歴がなく走行距離が近接する前記……a及びcの各車両の車両本体価格の平均額である269万円とするのが相当である。
A-45 東京地判令和6年2月16日2024WLJPCA02168008
- 原告車両概要 ホンダPCX125、初度登録平成30年11月
- 事故発生日時 令和3年10月24日
- 原告主張時価 27万8005円(インターネット)
- 被告主張時価 17万7000円(レッドブック)
- 裁判所認定額 27万8005円(インターネット)
- 判旨
同年式・同車種の車両がインターネット上で多数販売に付されていることが認められ、これらの販売価格の傾向(車両価格の最安値19万8000円、最高値33万4700円)からすれば、亡A所有車の時価額を原告らが主張する27万8005円と認めるのが相当である。
これに対し、被告は、時価額がレッドブックに記載された17万7000円を超えない旨主張するが、同価格には消費税及び買替諸費用が含まれていないことからすれば、上記主張には理由がない。
A-46 名古屋地判令和6年2月28日自保2179号150頁
- 被告車両概要 トヨタシエンタ、初度登録平成19年2月、走行距離10万8800km
- 事故発生日時 令和2年11月18日
- 被告主張時価 なし(分損前提で修理費用29万2735円)
- 原告主張時価 15万2000円(中古車市場)
- 裁判所認定額 15万2000円(中古車市場)
- 判旨
被告車両は、平成19年2月初度登録のトヨタシエンタであり、令和2年10月6日時点の走行距離は10万8800kmであり、これと同車種、同年式、同程度の走行距離の中古車市場における車両本体価格(税込み)は、平均して約15万2000円であることが認められ、これを被告車両の時価額と認める。
A-47 東京地判令和6年3月27日2024WLJPCA03278002
- 原告車両概要 ジムニー・シエラ、初度登録令和元年
- 事故発生日時 令和3年2月16日
- 原告主張時価 299万0230円(購入金額)
- 被告主張時価 193万5000円(スタンダードプライスガイド)
- 裁判所認定額 250万円(中古車市場+スタンダードプライスガイド等)
- 判旨
インターネットのウェブサイトにおける令和4年7月時点の価格情報によれば、同サイトに掲載されたベージュ色のジムニー・シエラの平均価格は、268万7000円であるところ、これらの車両の初度登録年は、令和2年から令和3年までであるのに対し、原告車は初度登録年が令和元年であることから、原告車の車両時価額について、同金額をそのまま採用することはできない。同金額に加え、原告車の購入価格や使用年数、スタンダートプライスガイドの小売基準価格等に照らすと、原告車の車両時価額を250万円と認めることが相当であり、同金額が原告車の車両損害であると認められる。
なお、原告は、原告車の購入金額を車両損害として主張するが、原告車の車両時価額がその購入金額以上であることを認めるに足りる証拠はない。
A-48 東京地判令和6年3月28日2024WLJPCA03288035
- 原告車両概要 スズキアドレス、初度登録平成27年以降
- 事故発生日時 令和3年3月27日
- 原告主張時価 13万8000円(中古車市場)
- 被告主張時価 1万9000円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 7万8500円(中古車市場平均の57%)
- 判旨
原告車と同種の車両のレッドブック上の中古車価格が10万円であり、販売価格平均が13万8000円程度であると認められるところ、本件事故により原告車には相当程度の損傷が発生し、同車の損傷状況を確認した修理業者からも修理に否定的な見解が述べられたことから同車を修理するには少なくとも上記販売価格平均以上の修理費が必要となることがうかがわれる一方、同車は既に廃車にされているためその詳細な状態等が明らかでなく、時価額を正確に評価するのが困難であることからすると、本件事故により原告車が経済的全損となったものとみて、その時価額を上記販売価格平均よりもやや控えめに見積もり7万8500円(上記販売価格平均13万8000円の約57%)と認めてもおよそ不相当であるとはいえない(なお、控訴人X2は、本件事故当時の時価額は新車価格19万円の10%である1万9000円とするのが相当であると主張するが、これを認める根拠はなく、上記認定に照らして理由がない。)。
A-49 千葉地判令和6年7月19日交民57巻4号939頁
- 原告車両概要 ダイムラー(型式E-DLW)、初度登録平成3年
- 事故発生日時 平成31年1月13日
- 原告主張時価 572万4000円(中古車市場1台)
- 被告主張時価 126万5000円(新車価格10%)
- 裁判所認定額 378万0800円(中古車市場5台平均)
- 判旨
被告は、原告車両は初度登録から約28年経過しているから、その時価額は新車価格の10%程度である126万5000円であると主張する。しかし、いわゆるクラシックカーについては、初度登録からの経過年数に応じて時価額が下がるとは直ちにはいえない。
他方、原告は、同種・同等の車両の市場価格は572万4000円であると主張する。しかし、いわゆるクラシックカーについては、車種や年式が同じであっても、その状態等に応じて価格が大きく異なり得るところ、原告らが提出する甲第9号証の車両が、原告車両と同等の価値があるかは明らかでない。
そこで、原告車両と車種や年式が同じである甲第9号証の車両及び乙第19号証記載の4台の車両の価格の平均値である378万0800円(=(572万4000円+365万円+385万円+330万円+238万円)÷5)を、原告車両の時価額として、損害と認めるのが相当である。
A-50 東京高判令和6年8月7日自保2179号111頁
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和2年8月14日
- 原告主張時価 300万円(中古車市場)
- 被告主張時価 244万7000円(新車購入価格・登録落ち・レッドブック)
- 裁判所認定額 300万円(中古車市場)
- 判旨
原告車両は、本件事故当時、新車登録から約7か月が経過していた車両であるところ、原告車両と同グレードの初年度登録から1年以内の中古車において、新車購入価格より高額で取引されている事例が複数あること、2023年(令和5年)登録、2024年(令和6年)登録の、原告車両と同じグレードの中古車において、販売価格300万円を超える金額で販売されている事例が複数あること、原告車両は経済的全損となっており、買替諸費用が発生するものであることがそれぞれ認められ、これらに照らせば、原告車両の時価額は、少なくとも300万円を下回らないものと認められる。
被告は、時価額算定チェックシートを基に、本件事故当時の原告車両の時価額が300万円であることを否定するが、時価額算定チェックシートをみても、本件事故時(令和2年8月)という時期において、その新車購入価格(254万5000円)につき「一般的値引き」をして算定することや、「登録落ち(10%控除)」の算定をすることについての合理的根拠の有無が明らかでなく、上記説示に照らし、その信用性を肯定することは困難といわざるを得ない。
B レッドブックによって認定した裁判例
B-1 神戸地判令和元年12月5日交民52巻6号1461頁
- 原告車両概要 マツダ・タイタン、初度登録平成29年2月、走行距離5万9671km
- 事故発生日時 平成30年5月2日
- 原告主張時価 353万8692円(減価償却)
- 被告主張時価 257万円(レッドブック)
- 裁判所認定額 257万円(レッドブック)
- 判旨
レッド・ブックに車種や型式の他,取引価格が記載されていることからすれば,原告車と同種・同等の車両は,中古車市場において,一定数の取引が行われているものと認めることができる…。
したがって,原告車の時価額は,中古車市場における価格を参考に算定するのが相当であり,レッド・ブックによれば,原告車と同種・同等の車両は,中古車市場に存在し,平成29年時点において,その中古車価格は,270万円であることが認められる…。レッド・ブックに記載の取引価格を算定の資料とすべきではない合理的な理由は認められない。この点,原告X社は,株式会社神戸マツダにおいては原告車と同種のタイタンの中古車取引がなかった旨を主張し,それに沿った記載のある同社作成の書面…を提出するが,同社において取引がなかったとしても,中古車市場の一マーケットにすぎない同社の取引経過をもって,中古のタイタンの中古車市場がないとか,あるいは,原告車と同車種の車両の入手が困難であると認めるに足りない…。
そして,本件事故時における原告車の走行距離が5万9671キロメートルであることからすれば…,走行距離による減額をするのが相当であり,初度年月から本件事故までの月数が18か月以内であることを考慮し,13万円の減額をするのが相当であるから…,原告車の時価額は,257万円となる。
そうすると,上記修理費用は,原告車の時価を上回るから,原告車は,本件事故により経済的全損の状態になったと認めるのが相当である。
- 備考 原告は経済的全損でも修理費用を損害と認めるべきである旨主張したのに対し、裁判所は「確かに,損害の公平な分担の観点からすれば,被害車両と同種同等の自動車を中古車市場において取得することが至難であるとか,あるいは,被害者の所有車が,被害車両の代物を取得するに足る価格相当額を超える高額の修理費用を投じても被害車両を修理して引き続き使用したいと希望することを社会通念上是認することが相当な事由が存する場合にあっては,これを特段の事情があるものとして時価額を超える修理費用を認める余地もある」との一般論を示しつつ、本件については「原告車と同種・同等の車両については中古車市場が形成されており,その入手が至難であるとは認め難いし,特段希少性があるとも認め難く,原告X社主張に係る特段の事情があるということはできず,他に,特段の事情があると認めるに足りる証拠はない」として排斥している。
B-2 名古屋地判令和2年6月12日交民53巻3号662頁
- 被告車両概要 マツダ・タイタントラック・ロング・WH63H・DX・4600、初度登録平成12年8月
- 事故発生日時 平成29年10月12日
- 被告主張時価 39万8000円(中古車市場)
- 原告主張時価 33万8000円(レッドブック)
- 裁判所認定額 33万8000円(レッドブック)
- 判旨
原告東京海上及び原告あいおいの双方の損害調査会社が,被告車の時価額を,レッドブック記載の小売価格の10%として33万8000円と算定していたことが認められるから,同額を被告車の時価額と認定するのが相当である。
原告東京海上は,乙16(中古車情報サイトの検索結果)に基づき,被告車と同車種の車両13台の平均価格は100万5200円であるから,被告車の時価額は39万8000円を下らないと主張するが,同証拠によると,同13台の価格には相当な幅があり,荷台部分の形状等が大きく異なるものも含まれていることが認められるから,直ちに採用できない。
原告X2は,スクラップ価格5万2000円を控除すべきであると主張し,この点,前記前提事実,証拠…及び弁論の全趣旨によると,原告東京海上は,被告車に係る車両保険金額を算定するに当たり,スクラップ価格を5万2000円と算定していたことが認められる。しかし,証拠…によると,実際に被告車が本件事故後直ちにスクラップにされたわけではないことが認められ,上記スクラップ価格がどのように算定されたのかは明らかでなく,他に被告車のスクラップ価格を裏付ける的確な証拠もないことからすると,上記スクラップ価格を控除するのは相当でない。
B-3 京都地判令和2年10月28日交民53巻5号1304頁
- 原告車両概要 自家用普通乗用自動車、初度登録平成20年8月
- 事故発生日時 平成29年8月24日
- 原告主張時価 不明(修理費用の請求であり時価額主張なし)
- 被告主張時価 16万円(新車価格の5%)
- 裁判所認定額 33万円(レッドブックの4分の1)
- 判旨
甲5(見積書)の添付写真によれば,原告車の各所に本件事故以前からの多数の損傷がみられるなど保守状態が相当に悪いから,大幅な減価が避けられないと推察され,中古車価格137万円の4分の1程度(約34万円),新車価格321万9000円の1割程度(32万円)の時価額となるものと見込まれる。加えて,修理費が時価額を上回る経済的全損の場合には,時価額に買替諸費用を加算した金額が損害となるところ,買替諸費用に10万円程度を要するのが通例である。そうすると,原告車の損害額は42万円~44万円程度となるところ,その中間額43万円をもってその損害額と認める。
B-4 半田簡判令和2年11月18日2020WLJPCA11186009
- 原告車両概要 ニッサンノート15G、初度登録平成22年5月
- 事故発生日時 令和2年1月18日
- 原告主張時価 40万6700円(中古車市場)
- 被告主張時価 不明
- 裁判所認定額 31万9000円(レッドブック)
- 判旨
原告Xは,原告車の車両時価額として,中古車サイトで検索した車両9台の「支払総額」…の平均値約40万6700円を主張するが,「支払総額」には「車両本体価格」にどのような費用が加算されているのか不明であるから,「支払総額」の平均値で求めるのは相当でない。また,一般的に中古車の「車両本体価格」には,装備内容や外観程度等による価格差が反映されており,「車両本体価格」の平均値で求めた金額も正確な時価額とはいえない。そこで,本件においては,個々の車両の個別の特性を除いた一般的な価格基準として用いられるレッドブックの小売価格を基準にするのが相当であり,同基準によれば,原告車の車両時価額は,29万円(税込み価格31万9000円)と認めることができる…。
B-5 東京地判令和2年12月25日交民53巻6号1606頁
- 原告車両概要 事業用大型貨物自動車、初度登録平成18年5月
- 事故発生日時 平成30年9月21日
- 原告主張時価 450万円(レッドブック修正)
- 被告主張時価 187万1900円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 448万3234円(レッドブック修正)
- 判旨
証拠…によれば,C車と同種同年式の車両の価格は,本件事故の2年前時点で485万円(消費税抜き)であり,さらに1年前の時点で550万円(消費税抜き)であると認められる。また,ウイングボディの本件事故当時の時価は75万円(消費税抜き)であると認められる。したがって,次のとおり,ウイングボディを含む本件事故当時のC車の時価は448万3234円(消費税込み)であると認められ,同額がC車の車両損害額となる。
〈計算〉
4,850,000×4,850,000/55,000,000×4,850,000/55,000,000×4,850,000/55,000,000=3,325,668
3,325,668×0.1=332,566
750,000×0.1=75,000
3,325,668+750,000+332,566+75,000=4,483,234
B-6 大阪地判令和3年1月19日2021WLJPCA01198033
- 被告車両概要 普通乗用自動車
- 事故発生日時 令和元年8月23日
- 被告主張時価 172万6250円(中古車市場)
- 原告主張時価 101万5000円(レッドブック)
- 裁判所認定額 101万5000円(レッドブック)
- 判旨
証拠…及び弁論の全趣旨によると,本件事故によって時価額101万5000円のC車が損傷し,経済的全損が生じたことが認められる。
したがって,本件事故と相当因果関係のある車両損害は101万5000円であると認めるのが相当である。
これに対し,被告は,C車と同種車両の中古車市場における平均価格である172万6250円が被告の車両損害であると主張し,インターネットの各種ホームページの印刷物…を証拠として提出する。しかし,前記101万5000円はレッドブックに依拠して認められる時価額であり,同印刷物に記載された情報をもってしても,前記時価額の認定が不相当であるとまではいえないから,この点に係る被告の主張は採用することができない。
B-7 函館地判令和3年3月25日交民54巻2号486頁
- 原告車両概要 冷凍車、車軸3軸のうち車両後方の車軸2軸が駆動輪となっている「ツーデフ」と呼ばれる大型トラックである、初度登録平成16年9月
- 事故発生日時 平成27年12月26日
- 原告主張時価 439万円(レッドブック修正?)
- 被告主張時価 268万8700円(減価償却)
- 裁判所認定額 439万円(レッドブック修正)
- 判旨
原告車のシャーシー部分となったトラックについて,レッドブックに掲載された中古車市場価格は平成17年初度登録の車両の価格360万円までであるが,平成18年初度登録の車両の価格400万円からの減価率(90%)をもとに計算すると324万円となり,10t冷凍車の特装部分の平成20年以前のものの価格115万円を加算すると,原告車の時価額は439万円と認められる…。
これに対して,被告は,法定耐用年数をもとにした減価償却率によって時価額を算定すべきと主張するが,同種同等の車両を中古車市場で調達した場合の価格が時価額というべきであるから,被告の主張は採用できない。
B-8 名古屋地判令和3年4月7日交民54巻2号517頁
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 平成29年4月12日
- 原告主張時価 1318万2400円(減価償却)
- 被告主張時価 1290万円(レッドブック)
- 裁判所認定額 1290万円(レッドブック)
- 判旨
車両の時価額は,同一の車種・年式・型,同程度の使用状態・走行距離等の自動車を,中古車市場において取得するに要する価格をもって決するのが相当である。
本件においては,B車と同一の車種・年式・型の自動車について,レッドブックの記載があり,本件は市場価格が判明する場合といえるから,定率減価償却法によるべきであるとの原告Aの主張は採用できない。
そして,上記レッドブックではB車と同種車両の時価について1290万円とされている。なお,B車は本件事故の約半年前の時点での走行距離は約2万キロであり,初度登録から8年経過している自動車としては,走行距離がさほど長いとはいえないから,レッドブック記載の上記金額から走行距離や使用状態を踏まえて減価する必要はないものと認められる。したがって,本件事故時のB車の時価額は,1290万円と認められる。
B-9 札幌地判令和3年8月17日自保2121号107頁
- 被告車両概要 車種不明、初度登録平成21年7月、走行距離11万8598km
- 事故発生日時 令和2年1月26日
- 被告主張時価 36万2593円(購入価格)
- 原告主張時価 21万3700円(レッドブック)
- 裁判所認定額 21万3700円(レッドブック)
- 判旨
被告は,被告車両の購入価格である36万2593円をもって本件事故時における時価額とすべきと主張するが,本件事故の1年以上前の購入価格をもって相当な時価額として評価すべきとする被告の主張は採用することができない。証拠によれば,被告車両の初度登録は平成21年7月であり,本件事故時直近の走行距離は11万8598キロメートル,車検有効期間満了日は令和2年9月9日であったことが認められ,有限会社オートガイド発行のレッドブックの最終掲載時(平成31年1月)における被告車両の同型・同年式車の小売価格は39万円である。同額に前年小売価格からの減額率を乗じた上,同誌における被告車両の年式及び走行距離並びに車検残期間による修正を考慮して被告車両の時価額を21万3700円とする原告の主張は概ね合理的なものであるといえ,これを覆すに足りる主張立証はない。したがって,被告車両の時価額は同額を相当と認める。
B-10 大阪地判令和3年11月12日2021WLJPCA11128025
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 平成31年2月16日
- 原告主張時価 253万円(レッドブック)
- 被告主張時価 なし(修理費用のみ争い分損である旨主張)
- 裁判所認定額 253万円(レッドブック)
- 判旨
原告車の時価額は,230万円(レッドブック価格)に消費税を加えた253万円(2,300,000×1.1)であるところ,精算見積書によれば,原告車の修理費として451万7834円を要することが認められる。したがって,原告車は,経済的全損であると評価されることから,車両時価額として標記の金額を認めるのが相当である。
B-11 大阪地判令和4年7月7日2022WLJPCA07078004
- 原告車両概要 スズキハスラー(型式DAA-MR41S)、初度登録平成27年12月、走行距離8万3383km、車検残月数22か月
- 事故発生日時 令和3年2月1日
- 原告主張時価 99万7700円(平成31年1月発売車両のレッドブック)
- 被告主張時価 不明
- 裁判所認定額 68万9000円(レッドブック)
- 判旨
原告車両は、軽自動車であるスズキハスラー(型式DAA-MR41S)であり、初度登録年月平成27年12月であって、本件事故当時の価格としてレッドブック上80万円であり、走行距離が8万3383キロメートルであること、車検残月数が22か月であることに照らして11万1000円を減額し、本件事故当時の原告車両の時価は、68万9000円と認められる。
これに対し、原告らは、時価額算定チェックシートを根拠として99万7700円と主張するものの、同チェックシート記載のレッドブック価格は平成31年1月発売の車両のものであることに照らして、採用できない。
B-12 名古屋地判令和4年12月2日2022WLJPCA12028003
- 原告車両概要 トヨタbB・5ドアワゴン(QNC21)、初度登録から12年経過、走行距離9万6000km
- 事故発生日時 令和2年10月3日
- 原告主張時価 33万円(レッドブック)
- 被告主張時価 16万4300円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 33万円(レッドブック)
- 判旨
本件事故後に被控訴人車両と同一の車種・年式・仕様の車両は、本件事故のあった令和2年10月のレッドブックには掲載がなく、また、本件事故の約1年2月後(令和3年12月頃)に中古車販売サイトで検索したところ、該当件数は0件であった。……
レッドブックによれば、被控訴人車両と同一の車種・年式・仕様の車両の中古車販売価格は、平成30年10月時点において61万円、令和元年10月時点において49万円(その差額は12万円で、1年間の減価率は19.7%である。)であった。また、被控訴人車両は、本件事故時において車検残月数が1か月以上2か月未満、令和2年10月29日時点において走行距離が9万6116kmであったところ、レッドブックによれば、被控訴人車両の車両クラスの車検残月数による価値評価は、1か月以上2か月未満の車両につき4万5000円の減価、初度登録から120か月超かつ走行距離9万km超10万km以下の車両につき4万円の減価とされている。被控訴人会社側のアジャスターはこれらを踏まえ、被控訴人車両の本件事故時の時価額を、基本価格39万円(≒令和元年10月時点の時価額49万円×減価率(1-0.197))とし、上記各減価要素を加味して、30万円(税抜)と算定した。
以上によれば、被控訴人車両の本件事故時の時価額を、レッドブックに基づいて33万円(税込)と見積もることには一定の合理性があると認められる。
控訴人は、被控訴人車両の同年式、同型車両が、本件事故があった月のレッドブックや中古車販売サイトに掲載されていないことを指摘して、中古車市場価格による時価額の算定が不相当である旨主張するが、中古車販売サイトの掲載状況はあくまで一時点におけるものにとどまることに加え、レッドブックへの掲載も終了から1年程度しか経過していないことを併せ考えると、控訴人の主張を踏まえても、上記算定の合理性は左右されない。他に上記算定の合理性を覆すに足りる証拠はなく、被控訴人車両が本件事故によって経済的全損に陥ったとは認められない。
B-13 名古屋地判令和5年1月27日交民56巻1号110頁
- 原告車両概要 トヨタハリアー、初度登録平成17年12月、走行距離10万9500km、車検残月11月以上12月未満
- 事故発生日時 平成28年1月28日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 不明
- 裁判所認定額 85万円(レッドブック・税抜)
- 判旨
原告車両と同種車両……の時価額は、平成27年11月のレッドブックによれば103万円、同年12月のレッドブックによれば101万円とされる……。
レッドブックによれば、原告車両の車両クラスについては、車検残月数が11月以上12月未満の車両については5万円の減価を、初度登録から120月超かつ走行距離10万km超11万km以内の車両については9万円の減価がなされるべきとされる……。
原告車両の本件事故当時の時価額は、99万円(本件事故前1か月間で、平成27年12月時点の時価額から更に2万円(=103万円-101万円)程度減価すると考えられる。)であり、これに車検残月数減価(-5万円)、走行距離減価(-9万円。なお、被告は、上記……以降の走行距離を推計して本件事故当時の原告車両の走行距離が13万kmを超えると主張するが、あくまで推論にとどまり、これを認めるに足りる証拠はない。)をすると、その時価額は85万円となる。
B-14 飯田簡判令和5年3月13日2023WLJPCA03136001
- 原告車両概要 ダイハツムーヴコンテ、初度登録平成25年11月、走行距離8万6378km
- 事故発生日時 令和4年3月28日
- 原告主張時価 77万3000円(中古車市場)
- 被告主張時価 62万7000円(レッドブック)
- 裁判所認定額 62万7000円(レッドブック)
- 判旨
令和4年3月、4月版のレッドブックにおける原告車と同じ年式の同種・同型式・同仕様車の価格は57万円(本体価格。消費税抜き)であること、被告保険会社担当者が上記事項〔車種、年式、走行距離を含む〕を考慮し、原告車の時価額を62万7000円と査定したことがそれぞれ認められ、上記の事実からすると、本件事故当時の原告車の時価は、62万7000円であると認められる。この点、原告が、原告車の時価を示すものとして提出した資料に基づき、原告車の車両価格は77万3000円である旨を主張するが、その算定根拠は明らかではなく、上記資料を原告車の時価の算定の基礎とすることはできない。また、原告は、令和4年4月時点のインターネット検索の結果では、原告車と同種・同年式・同型式・同仕様で売り出されている車両は原告主張の時価額同様に高価格で売り出しされているとも主張するが、原告車は、売出し事例に比して走行距離が長いことが認められ、原告主張の車両価格が一般的価格ということはできない。したがって、原告の車両価格に関する主張は採用できない。
B-15 名古屋地判令和5年3月24日2023WLJPCA03248051
- 原告車両概要 車種不明、初度登録平成21年、走行距離8万8000km
- 事故発生日時 令和3年8月1日
- 原告主張時価 16万円(レッドブック)
- 被告主張時価 8万2000円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 16万円(レッドブック)
- 判旨
控訴人Y1は……、X車両と同車種の中古車市場価格の資料として4台分の中古車情報サイトのページ……を提出するが、同資料は登録台数が15台であるのに対し4台分の中古車情報しか記載されておらず、これをもってX車両と同種、同年式、同走行距離の車両の市場価格が控訴人Y1主張の価格にとどまると認めるには足りないというべきである。
却って、証拠……によれば、令和元年7月時点のX車両と同車種、同年式(平成21年式)の車両(新車価格82万円)の中古車価格は、レッドブックで27万円(税抜き)とされていたことが認められ、初度登録後の10年間の減価額が55万円(計算式:82万円-27万円=55万円)であることから、特段の事情がない限り、上記令和元年7月時点の価格(27万円)から本件事故時(令和3年8月)までの約2年間に11万円(計算式:55万円÷10年×2年=11万円)を超えて減価することは想定し難いというべきであり、本件事故時点のX車両の車両本体の時価額も16万円(税抜き)(計算式:27万円-11万円=16万円)を下らなかったと推認できる。
B-16 名古屋地判令和5年6月14日交民56巻3号707頁
- 原告車両概要 三菱ふそうトラック、初度登録平成27年4月、走行距離46万4874km
- 事故発生日時 令和3年3月30日
- 原告主張時価 1034万円(レッドブック)
- 被告主張時価 786万5880円(減価償却)
- 裁判所認定額 1034万円(レッドブック)
- 判旨
令和3年3月発行のレッドブック(商用車)によると、原告車と同年式・同型車の中古車小売価格は税抜940万円(ウィングボディのため加算された95万円を含む。)であり、これに消費税(10%)を加算した1034万円が、原告車の時価額と認められる。
被告らは、レッドブック価格は参照すべきでなく、原告車の時価額を減価償却方法で算定すべきと主張する。
しかし、被害車両の時価額は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するのに要する価額によって定めるべきであり、右価格を課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によって定めることは、加害者及び被害者がこれによることに異議がない等の特段の事情のないかぎり、許されないものというべきである(最高裁判所第2小法廷昭和49年4月15日・民集28巻3号385頁)。
被告らは、上記特段の事情として、原告が原告車を新車として購入する際に値引きを受けていることや原告車が事業用大型貨物自動車である点を指摘するが、いずれも同事情に該当するものではないと思料する。
したがって、被告らの主張は採用できない(なお、東京海上日動火災も、令和3年8月18日に作成した損害確認報告書において、原告車の時価をレッドブックに基づいて1034万円と査定していた……。)。
B-17 東京地判令和5年11月10日2023WLJPCA11108008
- 原告車両概要 アウディS4、初度登録平成22年6月
- 事故発生日時 令和元年10月3日
- 原告主張時価 不明(インターネット?)
- 被告主張時価 139万7000円(レッドブック)
- 裁判所認定額 139万7000円(レッドブック)
- 判旨
経済的全損をいう被告Y1の主張に対し、原告X1は同種車両の取引事例……を引用し、原告車両の時価は修理費用よりも高額であると主張する。しかしながら、レッドブック……の内容と比較して見ると、甲13号証に表示されている価格(791万円など)は、本件の原告車両のような相当の使用歴のある中古車の交換価値ではなく、新車等の価格であるように思われ、これ以外に原告X1から特段の立証もない。そうすると、原告車両の当時の時価としては、レッドブック(平成22年の同型のアウディの標準中古価格を170万円とし、走行距離等により43万円の減算を行う内容)に基づき、消費税込みで139万7000円……との被告Y1の主張額を超える時価を認定することはできないから、同額による経済的全損と認める。
B-18 神戸地姫路支判令和6年5月21日自保2177号128頁
- 原告車両概要 生産期間の短い人気モデル
- 事故発生日時 令和4年8月5日
- 原告主張時価 83万円(中古車市場2台)
- 被告主張時価 56万9000円(レッドブック)
- 裁判所認定額 56万9000円(レッドブック)
- 判旨
原告車両の生産期間が短く人気モデルとされているが、原告が提出する証拠はわずか2例に過ぎないことからすれば、原告車両が人気モデルであることを考慮しても、この平均額をもって原告車両の時価額とすることは相当ではない。
B-19 千葉地判令和6年7月26日交民57巻4号972頁
- 被告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和4年1月10日
- 被告主張時価 31万8000円(レッドブック)
- 原告主張時価 43万円(中古車市場)
- 裁判所認定額 34万9800円(レッドブック+消費税)
- 判旨
被告車両の時価額は、同年式の同車種のレッドブックの価格である31万8000円(基本価格である43万円から、走行キロによる10万円の減算、車検残り月数による1万2000円の減算をしたもの。)に消費税を加えた34万9800円と認めるのが相当である。
なお、乙第13号証及び乙第14号証に記載された取引事例は、修復歴の有無や装備品の有無が被告Y1車両と異なっていることが窺われるから、直ちに参照することができないというべきである。
B-20 大阪地判令和6年12月5日交民57巻6号1566頁
- 原告車両概要 メルセデス・ベンツ
- 事故発生日時 令和3年10月25日
- 原告主張時価 297万円(損害レポート)
- 被告主張時価 218万円(レッドブック・税込239万8000円)
- 裁判所認定額 239万8000円
- 判旨
被告らは、レッドブックを根拠として原告車の時価額を218万円(税抜)と算定しており…、かかる算定には合理性が認められる。
よって、原告車の車両損害として218万円及びこれに対する消費税21万8000円の合計239万8000円を認める。
これに対し、原告らは、原告X1車の車両時価額が270万円であると主張し、原告三井住友作成の車両損害調査報告書…には原告車の時価額が270万円である旨が記載されている。しかし、上記車両損害調査報告書には、その根拠となる車価表等は添付されておらず、どのような根拠で原告車の時価額を270万円と算定したのか明らかでない。原告らの主張は採用できない。
C 購入価格を基に認定した裁判例
C-1 名古屋地判令和2年2月12日2020WLJPCA02128007
- 原告車両概要 ニッサンセレナ・ハイウェイスター(型式DBA-CC25)、初度登録平成19年9月
- 事故発生日時 平成28年6月23日
- 原告主張時価 132万7000円(不明)
- 被告主張時価 63万5400円(不明)
- 裁判所認定額 95万円(購入価格×レッドブック下落率)
- 判旨
平成26年3月,原告は,原告車を157万4250円(車両本体販売価格)で購入した。購入時の原告車の走行距離は3万0385kmであった。平成26年10月2日当時の原告車の走行距離は3万8600kmであった。
平成28年7月当時のインターネット上(グーネット,カーセンサー)の原告車と同年式(平成19年9月初度登録),同車種の中古車販売価格は,最低価格が16万8000円,最高価格が115万円であった。最高価格の次に高額であったのは79万8000円,次に高額であったのは76万8000円であった。
平成26年3月当時の原告車の時価額は,当時の購入価格である157万4250円と認めるのが相当である。
そして,本件事故当時の原告車の時価額については,平成26年3月から本件事故時(平成28年6月)のレッドブック価格の下落率(40%)に照らし,95万円と認めるのが相当である。
なお,上記金額は,本件事故当時の原告車と同年式,同車種の中古車販売価格に照らしても,不相当ではない。
したがって,原告車の車両損害は95万円と認められる。
C-2 大阪地判令和2年9月3日2020WLJPCA09038011
- 原告車両概要 トヨタ・ヴィッツ、初度登録平成18年5月、走行距離6万2000km
- 事故発生日時 平成29年6月9日
- 原告主張時価 不明(修理費用の請求のみで時価額主張なし)
- 被告主張時価 11万6000円(不明)
- 裁判所認定額 16万8000円(購入価格の80%)
- 判旨
平成17年式のトヨタのヴィッツで,走行距離が原告車と同程度の中古車14台の本体価格は,10万円から38万4000円まで幅があるが,うち10台は15万円を上回っていること…,原告車を購入した当時の車両価格は21万円であるから,本件事故時には,車両価格はこれより低くなっていると考えられること,もっとも,上記購入から本件事故まで約4か月であり,車両価格が大幅に低下しているとは考え難いことからすると,本件事故時における原告車の時価は,購入時の価格の8割である16万8000円をもって相当と認め…る。
C-3 東京地判令和3年12月20日自保2117号164頁
- 原告車両概要 マセラティシャマル、初度登録平成4年4月、走行距離5万5154km
- 事故発生日時 平成30年10月31日
- 原告主張時価 1480万円(査定)
- 被告主張時価 93万5000円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 200万円(購入価格の3分の1)
- 判旨
原告車両が希少な外国車であり,高額で取引される事例があるとしても,原告車両の取得時の価格と対比すると,一般的な中古市場が形成されているとは認められないこと,原告が,原告車両を入手してから本件事故までに約13年が経過していること,走行距離が5万kmを超えていること,本件事故後の原告車両のオークションの入札額などを考慮すると,取得時の価格の約3分の1に当たる200万円とするのが相当である。
原告は,原告車両の時価額が1480万円と主張し,これに沿う査定書を提出する。しかし,同査定書を作成したマイクロ・デポ株式会社は,原告と取引関係にあることが認められ,その査定内容に中立性,客観性が担保されているとはいい難い。また,同査定書は,原告車両について,希少性,原告の整備等による付加価値,マイクロ・デポ株式会社のブランド力等を根拠に高額な車両としているが,その内容は,車両価格だけではなく,営業利益や付加価値等を考慮しているところ,それらを車両価格に反映させる合理的根拠が明らかではなく,にわかに信用することはできない。よって,原告車両の時価額について,マイクロ・デポ株式会社の査定書を採用することはできず,原告の主張には理由がない。
- 備考 原告は、時価額の査定料も請求していたが、本件事故と相当因果関係のない損害であると判断されている。
C-4 東京地判令和5年9月29日2023WLJPCA09298011
- 原告車両概要 アストンマーチンDB9のミッション車
- 事故発生日時 令和4年6月11日
- 原告主張時価 1132万7150円(国内外の取引実績)
- 被告主張時価 440万円(原告車の購入経緯)
- 裁判所認定額 600万円(原告車の購入額+整備費用の85%)
- 判旨
原告は、知人から原告車を購入するに当たり、当初802万9080円(消費税及び諸費用を含む。)との売却価額を提示されたが、タイヤの摩耗及び走行中の異音等の不具合があったことから、これを減額した574万2280円(消費税及び諸費用を含む。)で令和3年3月30日に購入した……。
原告は、原告車を購入した後、合計127万0616円を費やして部品交換等を行った……。
……原告は原告車の入手及び整備に合計701万2896円(=574万2280円+127万0616円)を要しており、原告車の入手から本件事故までの経過期間をも併せ考慮すれば、原告が主張する前所有者との関係性を踏まえても、原告車の本件事故当時の時価額は、上記701万2896円の約85%相当額である600万円とするのが相当である。
これに対し、原告は、①原告車と車種、年式、型、使用状態、走行距離等を同じくする車両を中古車市場で入手するには1132万7150円を要する、②令和2年以降中古車市場が高騰している旨主張する。
上記①については、証拠……によれば国内外において原告車と同種の車両5台が804万円~1761万0900円で取引されたことが、証拠……によれば1台が1350万円で売却に付されていることが、それぞれ認められる。しかしながら、これらの車両の使用状態が、前記のとおり原告の購入前には通常の走行にも支障を来たす程度の不具合を有し相当の費用を投じての整備を要した原告車と同程度であったことを認めるに足りる主張立証はないから、同種車両の取引例から直ちに原告車の時価額を算出するのは相当でない。
また、上記②については、原告が提出する証拠……によっても、原告車と同種の車両の本件事故までの時価額への外的な事情による具体的な影響は明らかでない。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
C-5 東京地判令和5年11月17日2023WLJPCA11178015
- 原告車両概要 スバルサンバー(冷凍車)、初度登録平成22年8月
- 事故発生日時 令和2年11月8日
- 原告主張時価 100万円以上?(インターネット?)
- 被告主張時価 51万8186円(購入価格+部品交換費用等?)
- 裁判所認定額 51万8186円(購入価格+部品交換費用等)
- 判旨
原告車は……、原告が令和2年8月頃車両本体価格11万円で購入し、40万8186円を費やして部品交換や整備等を行ったことが認められ、これらの事実によれば、原告車の本件事故当時の時価額は上記各金額の合計である51万8186円を超えないというべきである。
これに対し、原告は、①前記51万8186円は車両の購入価格、エンジン等のパーツ費用及び工賃の実費であり、原告によるエンジン換装等の手間賃相当額や登録諸経費を含んでいない、②原告車の買替えには100万円以上を要するなどと主張する。
しかし、車両購入後の部品交換及び整備に要した費用全額が車両時価額の増価分になるとはいえない上、原告が購入代金として支払った11万円が購入当時の時価額を大幅に下回ることをうかがわせる事情も見当たらないことからすれば、買替時には車両本体以外の費用を要することを考慮しても、上記①の主張は前記……の認定判断を左右しない。
また、インターネット上に掲載された本体価格115万円の車両……は原告車と異なる車両である上、走行距離が約9000kmで原告車(走行距離64万kmを超える……。)より大幅に少ないため、原告車の時価額を算定する根拠とはなり得ず、他に原告車と同等の車両を購入するために100万円以上を要することをうかがわせる証拠もないから、上記②の主張も採用できない。
D 新車価格を基に認定した裁判例
D-1 東京地判令和2年10月6日2020WLJPCA10068003
- 被告車両概要 ホンダフィット、初度登録平成16年1月、走行距離27万4500km
- 事故発生日時 平成28年3月6日
- 被告主張時価 35万円(中古車市場)
- 原告主張時価 13万5000円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 13万5000円(新車価格の10%)
- 判旨
控訴人会社は,Y1車と同一登録年の車両が令和元年6月頃に39万8000円で中古車市場に流通していると主張し,それに沿う証拠…を提出するが,同車両の走行距離は18万6000kmとY1車のそれより約10万km少ないものであり,これをもってY1車と同等の車両が中古車市場を形成しているとまでは認め難いから,控訴人会社の主張は採用できない。
D-2 名古屋地判令和3年6月30日交民54巻3号853頁
- 原告車両概要 初度登録平成29年1月(車種不明)
- 事故発生日時 平成29年6月22日
- 原告主張時価 137万4000円(不明)
- 被告主張時価 109万円(中古車市場?)
- 裁判所認定額 129万円(新車価格から10万円引き)
- 判旨
原告車両の初度登録年月は平成29年1月と認められ,その時価額の認定に当たっては,平成29年1月式の同種車両の価額を参照すべきところ,平成28年11月式の同種車両の新車価格は139万円(税抜き)と認められる。また,同種車両の初度登録後1年半後の中古車価格は概ね30万円程度新車価格から下落していることが認められるから,同事実から,初度登録後半年の下落額は約10万円と推認することができ,かかる事実から,原告車両の時価額は,上記新車価格から10万円を減価した129万円(税抜き)と推認することができる。
D-3 神戸地判令和3年9月21日交民54巻5号1202頁
- 原告車両概要 車種不明、初度登録平成14年7月、走行距離8万7742km
- 事故発生日時 平成28年6月28日
- 原告主張時価 13万2000円(不明)
- 被告主張時価 10万円(新車価格の約10%)
- 裁判所認定額 10万円(新車価格の約10%)
- 判旨
証拠によれば,原告車は本件事故により大きく損傷し,経済的全損となり,その時価額は10万円であると認められる。
D-4 東京地判令和3年9月30日交民54巻5号1249頁
- 原告車両概要 普通乗用自動車
- 事故発生日時 平成23年1月30日
- 原告主張時価 45万円(車両価格協定保険額)
- 被告主張時価 27万9800円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 41万9700円(新車価格の15%)
- 判旨
原告は,保険会社との自動車保険契約における車両価格協定保険額を基に,本件事故当時の原告車の時価は45万円であると主張する。この額は,同程度の条件の中古車の市場販売価格を踏まえたものと解されるものの,具体的な算定根拠は証拠上必ずしも明らかではない。
原告車が新車登録後約13年を経過していることも考慮すると,原告車の時価は,新車価格279万8000円の15%に当たる41万9700円と認めるのが相当であり,これを左右するに足りる証拠はない。
D-5 名古屋地判令和4年1月11日2022WLJPCA01118009(A-13と同裁判例)
- 原告車両概要 トヨタ・アリオンA15、初度登録平成18年3月、走行距離6万8000km
- 事故発生日時 令和元年9月7日
- 原告主張時価 23万円(同車種他型式車両の販売価格を参照)
- 被告主張時価 16万円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 17万3000円(新車価格の10%+消費税8%)
- 判旨
本件事故当時のレッドブックに掲載はなく,同年式・同車種・同型式の中古車販売事例も発見されなかったというのであって,本件事故時の時価額としては,新車価格160万円の10%である16万円に8%の消費税(本件事故当時)を加算した17万3000円(千円未満四捨五入)と認定するのが相当である。
原告は,原告車とは別の型式の車両が,同型式の新車価格の10%よりも高額(1.44倍)で販売されているとして,原告車の価格も同様に算定すべきである旨主張するが,原告が参照する別の型式の車両の新車価格は,原告車と同型式の車両と比較して数十万円も高額であり,かかる別の型式の車両の傾向を,原告車の時価の資料として用いることは相当でない。
D-6 東京地判令和4年3月7日2022WLJPCA03078005
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和2年6月29日
- 原告主張時価 不明(修理費用の主張のみ)
- 被告主張時価 1万8500円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 5万5000円(新車価格の30%)
- 判旨
原告車両は,平成19年ころに購入されたものであること,原告車両と同型の車両の新車価格は約18万5000円であること,原告は,令和元年12月15日頃にも原告車両に乗っていた際に追突事故に遭い,一部のパーツを交換して修理したこと,原告車両は,本件事故により,右STIレバーが曲がったほか,車体に複数の細かい損傷が生じたことが認められる。以上の事実によれば,原告車両のパーツの一部は,本件事故の約半年前に交換されており,一定の価値は維持されているとはいえるが,これにより,原告車両の価値が新車価格と同じかそれ以上の価値まで増大したとはいえない。よって,上記認定の事情に鑑みれば,原告車両の時価額は,新車価格の約3割は残存しているということができ,5万5500円とするのが相当である。
D-7 東京地判令和4年10月21日2022WLJPCA10218003
- 原告車両概要 BMW・M535iA、初度登録昭和62年11月、走行距離33万km
- 事故発生日時 令和2年6月18日
- 原告主張時価 549万0970円(中古車市場)
- 被告主張時価 74万6900円(新車価格の10%)
- 裁判所認定額 187万円(新車価格の25%)
- 判旨
原告車が属するBMWの5シリーズの車両の中古車価格は、製造時期からの期間経過により徐々に低下し、いわゆる旧車と称される程度に期間が経過した場合には車両の状態等により左右される度合いが高まるといえる。
原告車は、平成26年3月頃までは毎月1500km~2000kmに及ぶ距離を走行し、本件事故時には33万kmを超えていた上、車検の有効期間が経過してから5年を超える期間が経過していたものである。
そして、原告車とは車種が異なり、その希少性の程度も異なるとはいえ、製造時期から相応の期間が経過し、原告車より走行距離が遥かに少ない5シリーズの車両の前記の販売価格をも踏まえれば、製造時期から長期間が経過した車両については旧車として独自の市場価値が付与され得ることを考慮しても、原告車の本件事故当時の時価が新車購入価格746万9000円の約25%である187万円を超えるとは認められない。
これに対し、原告は、頻繁な部品交換や整備等の原告車の維持管理状況によれば原告車の状態は良好で、原告車と同一車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の車両を取得するには500万円以上を要する旨主張し、これに沿う証拠(甲11、12)を提出する。
しかし、上記証拠は、前記のインターネット上の中古車情報サイト上の記載のように中古車市場に直接公開されたものとはいえないところ、時価額算出過程・根拠が明らかではなく、前記認定事実のとおり期間が経過した車両の価格については販売店の定め方次第である旨の指摘がされていることをも踏まえると、上記証拠に記載された見積額を直ちに原告車の時価と認めることはできない。
また、原告が主張する維持管理状況については、原告が提出する証拠(甲15)自体によって明らかとはいえず、同証拠に関する原告代表者の供述(本人調書19頁)を併せても的確に裏付けられているとはいえない。
これに加え、①原告が常時2台同一型式の車両を保有し、業務用運行準備に備え、あらかじめ両車共通定期交換保守部品、消耗部品を取り寄せていた旨主張する(訴状3頁)一方で、遅くとも平成25年末頃までには「常時2台同一型式の車両」を保有する状態ではなかった旨主張していること(第2準備書面2頁)、②本件事故当時において、車検を近々取得する予定だった旨主張する(訴状4頁)一方で、平成28年末頃に不具合が判明したスタータモータの交換を要し、令和3年12月7日時点でも取寄せ中であり(原告第2準備書面2頁)、令和4年8月19日時点でも入手していないこと(原告代表者)、③本件事故直前の2か月間はコロナ禍で緊急事態宣言が発出され地方出張の予定がなくなったこともあり原告車のエンジンをかけていなかった旨主張する(第1準備書面4頁)一方で、原告代表者が東北出張等の業務多忙のためエンジンをかけていなかった旨供述し(本人調書8頁、23頁)、さらに、令和2年4月~6月は繁忙期でないとも供述していること(本人調書2頁)から、主張相互間、主張と供述間、供述相互間、主張と客観的状況との間の各整合性に疑問が残ることを併せ考慮すれば、原告の主張する維持管理状況を認めることはできない。
以上によれば、原告車は、修理費用494万8612円が時価額187万円を超えるから、経済的全損であり、187万円の限度で相当因果関係ある損害と認められる。
D-8 大阪地判令和4年11月18日自保2136号1頁
- 被告車両概要 ホンダフィット、初度登録平成15年2月
- 事故発生日時 平成27年11月11日
- 被告主張時価 11万5000円(新車価格の10%)
- 原告主張時価 不明(時価額を争点化していない?)
- 裁判所認定額 11万5000円(新車価格の10%)
- 判旨
A車両の車両時価は11万5000円とするのが相当であり(……A車両は平成15年2月初度登録のホンダフィットであり、本件事故当時、初度登録後12年以上が経過していたから、新車価格の概ね1割相当額である上記金額を時価とすることは相当であるといえる。)、A車両の損傷状況……を踏まえると、修理費用が上記車両時価を上回ることは明らかであるから、被告Aには上記車両時価額の損害が生じたと認められる。
D-9 名古屋地判令和5年1月11日交民56巻1号1頁(A-27と同裁判例)
- 原告車両概要 納車から7日のランドクルーザープラド、走行距離70km
- 事故発生日時 令和3年1月31日
- 原告主張時価 588万6220円(新車価格+買替諸費用)
- 被告主張時価 437万3000円(レッドブック)
- 裁判所認定額 530万6909円(新車価格の95%)
- 判旨
原告車両は、本件事故当時、納車から7日しか経過しておらず、走行距離も70kmと極めて短距離であった。本件事故当時の原告車両の上記状態を踏まえると、原告車両は購入価格より若干減価した程度の価値を保持していたものというべきであり(原告車両は本件事故の7日前に納車されて、通常の運転利用に供されていた以上、新車価格をもって損害とすべきとの原告らの主張は採用できない。また、原告車両の時価額はレッドブック……記載の限度であるとの被告らの主張も採用できない。)、その時価額は新車価格から5%減価した530万6909円と認める。
D-10 名古屋地判令和5年5月31日2023WLJPCA05318013
- 原告車両概要 不明
- 事故発生日時 令和3年9月18日
- 原告主張時価 8万4000円(新車価格の10%)
- 被告主張時価 なし(原告主張時価に対する否認のみ)
- 裁判所認定額 8万4000円(新車価格の10%)
- 判旨
原告車両の修理費用は36万3341円と見積もられたことが認められるが、証拠……及び弁論の全趣旨によれば、原告車両の時価額は8万4000円にとどまると認められるから、いわゆる経済的全損と認められ、同金額を車両損害と認める。
E 定率法又は定額法によって認定した裁判例
E-1 神戸地判令和元年12月5日交民52巻6号1454頁
- 原告車両概要 トヨタクラウンコンフォート(型式TA-YXS10)、初度登録平成14年7月、走行距離67万4401km
- 事故発生日時 平成28年12月12日
- 原告主張時価 不明(修理費用の請求のみで時価額主張なし)
- 被告主張時価 20万1000円(新車価格+装備費用に減価償却残率を乗じた額)
- 裁判所認定額 17万1000円(新車価格に減価償却残率を乗じた額)
- 判旨
一般に,中古車の価額評価については,原則として,これと同一車種・年式・型,同程度の使用状況・走行距離等の自動車を中古車市場において取得し得るに要する価額によって定められるべきであり,課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によって定めることは原則として許されないと解されているが,市場価格が形成されないために個別的,具体的な価格算定の資料がない等の事情がある場合など特段の事情があるときは,減価償却の方法によることは損害額の算定として許されると解される。
原告車は,LPガスを使用した走行距離が約67万キロメートルのタクシー車両であるところ,その時価については,中古車市場が存在する同一車種,同一年式のガソリン車を使用する車両の中古車価格を参考として,その時価を認定するのは困難である。また,インターネット上では中古タクシーを取り扱う業者も存在し,中古タクシーの出品も見られるが…,こうした業者のホームページには価格表示の記載はなく…,中古タクシーの市場はないか,あるいは,少なくとも中古車市場が形成されている状況にあるとは認め難い。
そうすると,中古車市場が存在せず,また,原告車のように相当年式が古く,走行距離も極めて長い中古タクシー車両については,前記…に記載の方法により損害額を算定するのが相当であり,そうすると,原告車は,本件事故時においてすでに残価率は10パーセント程度であったと認められ(弁論の全趣旨),しかも,タクシー車両の耐用年数は3年…あるいはタクシー中古車業者によっても長くて7年程度…であるから,原告車は,その初度登録年月からすれば,すでにタクシー車両の一般的な耐用年数も超えていたと認められる。
そうすると,このようなことを総合すれば,本件事故当時の原告車の時価は,新車購入価格に架装費用を加えた額の10パーセント程度と認めるのが相当である。
E-2 大阪地判令和元年12月10日2019WLJPCA12108014
- 被告車両概要 日野デュトロに油類運搬用のタンクを設置するなどの特殊架装をしたタンクローリー、初度登録平成25年2月
- 事故発生日時 平成29年9月4日
- 被告主張時価 不明(修理費用の請求のみで時価額主張なし)
- 原告主張時価 296万8000円(購入価格に減価償却残率を乗じた額)
- 裁判所認定額 361万5000円(購入価格に減価償却残率を乗じた額)
- 判旨
証拠…及び弁論の全趣旨によれば,被告車は特殊車両であり,中古車市場に出回っている車両数が極めて少なく,中古車市場における取引価格を算定するのが困難である。そのため,被告車の時価については,被告が主張する定率法による減価償却価格を考慮して算定するのが相当である。
そして,被告車の購入価格は665万円…であることから,同額を基準とし,標準使用年数については,平成29年度の自動車平均使用年数が16.71年とされていること…,また,被告がタンクローリーを一番古いもので十何年間使用している旨を述べていること…も考慮し,17年程度とするのが相当である。残存価値については,甲第21号証では5パーセントとして計算しているが,これを10パーセントとするのが相当である(この場合,使用年数に係る償却率は約0.126673838,使用月数に係る償却率は約0.011223605となる。)。以上を基に計算すると,本件事故時点(初度登録から約4年6か月経過した時点)における被告車の時価額は,約361万5000円となる。
なお,被告は,中古のタンクローリーが500万円を超える金額で取引されている旨の証拠…を提出しているが,これらの証拠に挙がっている車両は,被告車とは車種もタンク等の架装状況も異なるものであるから,当該証拠をもって被告車の時価額を算定することは相当でない。
したがって,被告車の時価額は,361万5000円と認めるのが相当であり,そうすると,時価額が修理費用額を下回るため,本件事故による被告車の車両損害は,同額と認めるのが相当である。
E-3 大阪高判令和2年8月27日2020WLJPCA08276014
- 原告車両概要 クラウンコンフォートLPGスタンダード(型式TA-YXS10 AEPRN)、初度登録平成14年、走行距離67万km
- 事故発生日時 平成28年12月12日
- 原告主張時価 101万6628円(不明)
- 被告主張時価 不明
- 裁判所認定額 25万6000円(新車価格+架装費用の最終残価率10%)
- 判旨
業界最大手を宣伝文句とする中古タクシーのインターネットサイトをみても,中古車市場において,控訴人車と同一の車種・年式・型,同程度の使用状態・走行距離等の車両を見出すのは困難である。また,控訴人が見積書を提出する中古車は,年式,走行距離において控訴人車と大きく異なり,これによって控訴人車の中古車市場における価格を認定することもできない。したがって,控訴人車については,損害額の算定につき減価償却の方法によることが認められる特段の事情があるというべきである。
そして,前記認定事実によれば,控訴人車と同一の車種・年式・型の車両の新車価格は171万円であり,タクシー車両用の架装費用は約85万円と認められる。したがって,本件事故当時の控訴人車の時価は,その合計額の10%である25万6000円と認めるのが相当である。
控訴人は,控訴人車については,タクシー営業車として頻繁に点検整備,改装がされ,1日4万円を超える収益を上げていたことを考慮すると,一般的な自家用車のように減価償却の方法によるべきではない旨主張する。
しかし,一般的な自家用車についても,定期点検や車検の際,劣化した部品は交換するのが通常であって,減価償却の方法により車両の評価額を算定する場合には,そうした部品の交換等も考慮されているとみるのが相当であるから,控訴人が主張する点は,タクシー営業車についてのみ特別に考慮すべき事情とはいえない。控訴人車について本件事故に近接した時期にされた車検の作業内容をみても(甲20),特別の作業や部品の交換が行われたとは認められないし,他に,外装の塗り直しやシートの交換等の改装が頻繁に行われていたことを認めるに足りる証拠もない。
また,控訴人は,控訴人車は,本件事故当時1日4万円を超える収益力があり,本件事故により少なくとも車検期間満了日までの使用価値68万6000円(1日2000円×343日分)を失ったとも主張する。しかし,車両価格は,事故当時の被害車両の再取得価格を基に算定されるべきものであること,タクシーの収益力は,当該タクシーが配車され,走行する場所,地域や運転手の稼働時間等によって左右され,車両の状態から決まるものではないことからすると,収益力をもって評価額を算定することが相当とはいえない。
E-4 大阪地判令和3年7月6日交民54巻4号873頁
- 原告車両概要 BMW530iMSport、初度登録平成31年2月28日、走行距離1320km
- 事故発生日時 平成31年4月15日
- 原告主張時価 841万円(値引き前車両本体価格)
- 被告主張時価 691万1500円(購入価格に減価償却残率を乗じた額)
- 裁判所認定額 691万1520円(購入価格に減価償却残率を乗じた額)
- 判旨
原告が原告車両を新車として購入した際の車両本体価格は,841万円のところが127万円の値引きがされて714万円であった。
被告の契約する保険会社の担当者は,原告車両の時価額につき,新車価格に耐用年数6年を前提とした減価償却残率0.968を乗じて査定している。
原告車両は,本件事故当時,初度登録から約1か月半が経過し,走行距離も約1320kmであったもので,一定の使用利益を得ているものであって,新車価格を原告車両の車両本体価格と認めることはできない。
また,上記のとおり初度登録からの期間が限られており,中古車市場があるとはいえず,また,レッドブック等による中古車価格の認定をすることもできない。
これらによれば,減価償却率を考慮して,車両本体価格を認定することも許されるものというべきである。
そこで,本件事故当時の原告車両の車両本体価格は,原告が原告車両を購入した際の値引き後の価格である714万円に減価償却率0.968を乗じた691万1520円(計算式:714万円×0.968)と認めることができる。
この点,原告は,減価償却率を用いる場合,値引き前の価格に減価償却率を乗ずるべきである旨の主張をしている。しかしながら,原告は,従前にもBMW社製の車両を所有し,原告車両についても上記の値引きで購入できたことに照らすと,原告は,これからも同程度の値引きで同車種の新車を購入できる可能性が十分にあるというべきところ,値引き前の価格に減価償却率を乗ずると814万円となり(計算式:841万円×0.968),現実に取得し得る新車の車両本体価格(714万円)を大きく超過し得るものであって,そのような算定が合理的なものと言い難く,原告の上記主張は採用できない。
E-5 東京地判令和4年8月24日交民55巻4号1023頁
- 被告車両概要 トヨタジャパンタクシー匠、初度登録から2年11月、走行距離29万5000km
- 事故発生日時 令和2年12月14日
- 被告主張時価 84万5640円(新車価格の26.1%(タクシーの一般的な使用期間5年・最終残価率10%))
- 原告主張時価 37万4414円(新車価格の10.7%(耐用年数3年))
- 裁判所認定額 84万5640円(新車価格の26.1%(タクシーの一般的な使用期間5年・最終残価率10%))
- 判旨
被告車のようなLPガスを使用する運送事業用車両の中古車市場はうかがわれないところ、被告車のリース期間からもうかがわれるタクシー車両の一般的な使用期間からすると、法定耐用年数を基準として定率法により減価償却して車両時価を算定することは適切ではないから、被告車の時価は、タクシー車両の一般的な使用期間5年間を前提に、最終残価率を10%として算定するのが相当である。
そうすると、被告車は、本件事故当時には初度登録から約2年11か月が経過していたことから、その時価は新車価格324万円(税抜)に26.1%を乗じた84万5640円であったと認めるのが相当である。
F 分類し難い裁判例
F-1 名古屋地判令和3年1月13日自保2092号145頁
- 原告車両概要 トヨタ・ヴォクシーグレードX、初度登録平成30年、レンタカー
- 事故発生日時 平成31年2月24日
- 原告主張時価 220万8000円(中古車市場)
- 被告1主張時価 136万8100円(減価償却)
- 被告2主張時価 198万円(平成31年2月レッドブック・税込で213万8400円)
- 裁判所認定額 217万3200円(中古車市場とレッドブックの平均)
- 判旨
レッドブックは裁判実務における中古車価格の認定において一定の役割を担ってきたものであり,少なくとも5台平均価格と同等の客観性を有するといえるから,Y1車の本件事故時の価格は,レッドブック価格と5台平均価格の中間値である217万3200円と認めるのが相当である。
なお,被告Y2は,インターネットに掲載されている中古車価格は売主の希望価格にすぎないなどと主張するが,5台平均価格は本件事故から約半年後のインターネットに掲載されていたものであり,本件事故時のY1車の時価の資料としては抑制的な価格といえるし,甲10号証に掲載されていた5台の中古車は原告代理人が令和2年9月に同一条件で検索した際には掲載されていなかったというのであるから…,5台平均価格をY1車の事故時の時価の参考とすることが不相当とはいえない。
- 備考 被告からは、原告車両がレンタカーであることから減価すべきである旨主張されていたが、裁判所は「平成31年3月20日に中古車業者向けオークションにおいて,レンタカーとして使用されていた,走行距離1万4106キロ(Y1車よりも5000キロ程度長い),平成30年4月初度登録(Y1車よりも2月古い)の同年式の同型車が,210万6000円(消費税を含む。)で落札されていること…に照らすと,レンタカーとして利用されていたことをもって,減価する必要があるとは認められない。」と判示している。
F-2 名古屋地判令和3年4月7日2021WLJPCA04078007
- 原告車両概要 ホンダN-BOX・CustomG・Lパッケージ、初度登録平成24年4月、走行距離2万1004km
- 事故発生日時 平成31年2月20日
- 原告主張時価 なし(分損前提で修理費用のみ主張)
- 被告主張時価 91万円(レッドブック)
- 裁判所認定額 110万1275円(中古車市場+レッドブックの中間値)
- 判旨
年6回(奇数月)発行されるオートガイド自動車価格月報・軽自動車(以下「レッドブック」という。)の平成31年1-2月号において,原告車と同型式の車両の価格は90万円(消費税抜き)である。
本件事故時における初度登録からの経過年数,走行距離を勘案すると,原告車は,5万円加算され(レッドブックにおける「84ケ月以内」と走行距離2.5万km以下のクロスする欄),他方,残存車検期間から4万円減算されるので(レッドブックにおける「3ケ月未満」。乙2の4枚目参照),レッドブックから算定される車両時価は91万円(消費税抜き)となり,消費税を含めると98万2800円となる。
平成31年2月当時,原告車と同年式かつ同型式の車両が車両本体価格128万9000円(消費税込み)で広告に掲載されていた(以下「参考価格1」という。)。
また,原告が,平成31年4月ころ,ディーラーを通じて取得した,原告車と同年式かつ同型式の車両の購入見積書(商談メモ)によれば,車両本体価格は125万円(消費税込み)であった(以下「参考価格2」という。)。
本件事故から相当期間経過後の時点で,原告車と同年式かつ同型式の車両が車両本体価格119万円(消費税込み),115万円(消費税込み)で広告に掲載されていた(以下,それぞれ「参考価格3」,「参考価格4」という。)。
この点,原告が提出する証拠における同年式・同型式の4台の価格は上記参考価格1ないし4のとおりであり,その平均は121万9750円(消費税込み)である。被告は,原告の提出する証拠は,少数の事例に基づくにすぎず,原告車の時価(市場価格)を反映しているとはいえない旨主張する。しかし,原告が提出する証拠のうち,参考価格3及び4は,それが本裁判に提出された時期に照らし,本件事故後相当期間が経過した時点での価格であるし,このうち参考価格3については走行距離が6万7000kmという条件の悪い車両を対象とするから,いずれも本件事故時の原告車の時価の資料としては抑制的な価格といえるのであって,これらを原告車の事故時の時価の参考とすることが不相当とはいえない。
もっとも,レッドブックは裁判実務における中古車価格の認定において一定の役割を担ってきたものであり,少なくとも参考価格1ないし4の4台平均価格と同等の客観性を有するといえるから,原告車の本件事故時の価格は,レッドブックにおける査定価格と参考価格1ないし4の平均価格の中間値である110万1275円と認めるのが相当である。
これに対し,原告は,本件事故当時の原告車の時価を150万円(消費税抜き)と主張するが,原告車の新車価格が152万6191円(消費税抜き)であることからすれば,高額にすぎ,採用できない。
F-3 名古屋地判令和3年6月16日交民54巻3号757頁
- 原告車両概要 日野レンジャープロ、初度登録平成14年3月、走行距離25万2800km
- 事故発生日時 平成30年3月28日
- 原告主張時価 なし(分損前提で修理費用のみ主張)
- 被告主張時価 82万5000円(本体価格・クレーン価格合計額の10%)又は170万円から195万円(中古車市場)
- 裁判所認定額 不明
- 判旨
なお,被告Y1らは,本件車両の本件事故時の時価額は82万5000円である,被告Y7らは本件車両と同車種,同型式の中古車小売価格は170万~195万円であると主張するが,原告が本件事故の約2年4か月前に購入当時初度登録から約13年9か月経過した本件車両を495万円程度で購入したことや本件車両のよう貨物自動車は個別性が強いことに照らし,レッドブック記載の金額は本件車両の時価額を的確に反映したものとは認められない。本件事故時の車両価格が本件車両の修理費用(代車費用45万円を除くと,293万7204円)を優に超えることは明らかである。したがって,本件事故による車両損害としては,修理費用の賠償が認められる。
F-4 大阪地判令和3年11月12日交民54巻6号1502頁(A-9と同裁判例)
- 原告車両概要 キャブオーバ、初度登録平成18年6月、走行距離67万4200km
- 事故発生日時 平成30年7月17日
- 原告主張時価 不明
- 被告主張時価 67万8000円(減価償却)
- 裁判所認定額 324万円(原告が事故後購入した同種車両との比較)
- 判旨
原告会社は,原告車両と同車種である本件代替車両を344万8760円で購入している。
そして,原告車両が平成18年6月初度登録の走行距離67万4200kmの車両であるのに対し,本件代替車両が平成19年2月初度登録の走行距離46万1500kmの車両であり,一般に中古車両の価格は,初度登録からの経過月数と走行距離に応じて加減評価されることによれば,本件代替車両より走行距離が20万km以上多い原告車両の車両時価が本件代替車用の購入価格を超えるものと認めることはできず,むしろ,同価格を一定程度下回るというべきである。そして,走行距離1万kmごとに1万円程度の減価評価があり得ることを踏まえると,原告車両の車両時価は324万円とするのが相当というべきであり,本件事故による原告会社の車両損害(経済的全損による車両時価額の損害)は324万円であると認められる。
なお,被告は,原告車両の車両時価につき取得価格から減価償却を行う方法により残価が67万8000円であるとして,同額が原告会社の車両損害であると主張する。しかし,車両時価は特段の事情がない限り同種車両を中古車市場で再調達する場合の価格(再調達価格)をもって評価するべきであり,上記主張は採用できない。
F-5 東京地判令和4年6月15日2022WLJPCA06158005
- 原告車両概要 サーブ9000エアロ2.3ターボのオートマチック車、初度登録平成9年8月、サンルーフ装備、外装色シルバー塗装、右ハンドル車、走行距離19万5355km
- 事故発生日時 令和2年8月31日
- 原告主張時価 370万円(中古車市場)
- 被告主張時価 30万円(減価償却)
- 裁判所認定額 50万円
- 判旨
原告は、原告車両の時価額について、別件車両の販売価格を基準に370万円とすべきである旨主張する。
しかしながら、前記認定事実のとおり、原告車両は、平成9年式で右ハンドルのオートマチック車であり、走行距離が19万5355kmと多いこと、室内は経年劣化によるシートの亀裂が見られ、外観をみても経年に応じた塗装のむら等が見られるのに対し、別件車両は、平成5年式で特に希少とされる左ハンドルの5速マニュアルミッション車であり、走行距離が約4万4000kmと少ないこと、別件車両の保管状況は良く、室内シートの経年劣化は少なく、外観は比較的人気の高いブラック塗装であって良好に保持されていることといった点で大きく異なるのであり、特にビンテージ車とみるのであれば保守状態も重要な要素となるのであるから、別件車両の販売価格を基に原告車両の時価を算定すべき旨の原告主張は採用できない。調査報告書(甲5)では、原告車両と別件車両の違いを考慮した上で、原告車両の価格を別件車両から若干減額した300万円と算定しているが、減額の具体的な根拠を示しているものではなく、直ちに採用することはできない。
他方、原告車両において、別件車両と同様、一部の愛好者間で高額で取引される希少価値のある車両であることも否定できない。もっとも、原告は、平成25年6月頃、インターネット上のオークションサイトで原告車両を6万円で購入したところ、上記オークションでの出品期間や参加者の状況等が明らかではなく、原告車両の車種の特性等を踏まえるとこれを参考とするのにも限度があるが、その当時から本件事故時までの間に価格が高騰するような事情は見当たらないことからすれば、一定の市場での価格として参考になるべきものである。
以上によれば、一定の希少性の認められる原告車両の車種・年式・型、使用状態・保守状況、走行距離、原告車両の新車価格、原告の購入価格等を踏まえ、原告車両の時価額を50万円と認めるのが相当である。
若干のコメント
1 一般論
経済的全損が問題となる事案では、経済的全損を主張し修理費用全額の賠償を否認する側が、車両時価額が修理費用を下回るものであることを主張立証する必要があります(東京地判令和5年2月14日交民56巻1号196頁参照)。したがって、通常は加害者側において、被害者側車両の時価額を積極的に争うことになります。
B-1は、経済的全損であっても修理費用を請求できる場合について言及している点で注目されますが、このように例外的に修理費用が請求できる場面はごく限られていると思います。
同一車両が同一機会に多重に衝突するなどして複数個所に損傷を来したような場合、先行事故の時点で経済的全損に至ったときは、後行事故では新たな価値的損害は発生しないため、後行事故の加害者に損害の賠償を請求できないとした裁判例があります(東京地判令和3年9月21日2021WLJPCA09218012)。多重事故の場合には、請求の相手方と損害の整理に留意が必要です。
2 最判昭和49年4月15日の各要素について
前記最判昭和49年4月15日は、中古車市場における時価額を参照する場合に比較すべき車両について、車種・年式・型については「同一の」、使用状態・走行距離等については「同程度の」としているため、車種・年式・型については近似のものとの比較も許さない趣旨にも読むことができます。
もっとも、A-28、A-39、A-50は、初度登録年の前後1年の年式の車両についても比較対象に含めています。年式は、それだけで直ちに時価額に影響を与える要素ではなく、むしろ使用状態や走行距離と相まって時価額を左右する要素であるといえますので、全く同一の年式でなければならないというものではないと思われます(ただし、A-47は、初度登録と1、2年異なる中古車の販売価額はそのまま採用できないとしています。)。
D-5は、同車種他型式の車両の市場価格の算定方式を参照すべきであると主張したものですが、型式が異なることで新車価格にも乖離が大きいことを理由に参照すべきでないとされています。これ自体は当然の結論だと思いますが、他型式であっても新車価格が近似しており、その他の相違部分も大きくないのであれば、時価額算定において参照できる余地はありそうです。
3 中古車サイトによる立証
A-10及びA-11は、前記最判昭和49年4月15日の判示内容をさらに敷衍して、「事故車両がいわゆる経済的全損に至っているかの判断に関して当該車両の時価相当額を認定することになるところ,中古車市場における中古車の価額は,基本的に(具体的,個別的な価格算定の資料がないときを除き)その車の製造会社,車種,年式,使用状態,走行距離,その車種の需要度,市場の動向等の具体的要因により具体的,個別的に定めるものと解され,事故当時の車両価格は,事故車両と同一の車種・年式・型の車両について,インターネットの中古車関連サイトの販売価格情報等の資料を参考に判断するのが相当である。」と述べ、中古車サイトを基本として捉える姿勢を見せています。上記裁判例の多く(A1~50)は中古車サイトをベースとして判断しており、この傾向にあります。
インターネット上の中古車サイトにおいて比較対象となる車両を検索したとき、車種等によっては類似車両のヒット件数が少ないこともあります。このときに、わずかしかない台数によって算出される時価額が中古車市場として参照に値するのかは疑問が残るところです。もっとも、A-20では、中古車サイトに掲載されている車両の台数が4台しかなかったケースですが、被告車よりも年式が古い車両や走行距離が長い車両であっても販売されている上、市場で販売されている中古車のすべてが中古車サイトに掲載されるものでもないことを理由に、なお中古車サイト上の車両をベースに時価額を算出しています。また、F-2も4台の事例ですが、うち2台は相当期間経過後に掲載されているものであるため抑制的な金額を算出していることなどから、なおサイト上の車両を考慮して時価額を算出しています。わずかな台数しかヒットしないにしても、現実にその金額で販売されている中古車が存在するわけですので、市場価格を推し量るうえで重要な要素となり得ます。
中古車サイトに掲載されている中古車は、取引が行われていく結果、調査時点によって車両が入れ替わり、金額も変動します。中古車サイトを調査するときは、事故から時間が経過しないうちに一度行っておくべきです(A-3)。
B-4は、中古車サイトの「支払総額」には本体価格以外にどのような費用が加算されているか不明であること等を理由に中古車サイトの支払総額の平均値は採用できないとしています。しかしながら、多くの中古車サイトで「支払総額」という表示をしていると思われますし、加算されている費用も通常は買替諸費用に相当するような費用や自賠責保険料です。それを、何が加算されているか分からないというだけで切り捨てていたのでは、中古車サイトを用いた時価額の認定はできなくなってしまいます。少し調べたら凡その費用の内訳は分かることが多いですので、想像するに裁判所が当事者にも求釈明しないまま、このような判断をしたのではないでしょうか。少し非常識な判断だと思います。
A-48は、事故車両が既に廃車されているため正確な時価額の評価が困難であるとし、中古車市場の平均額から割合的に減額しています。通常は、事故車両の損害レポートが作成されているはずですので、事故車両の状態等はそれをもって立証されるはずですが、この裁判例の事案ではどのような立証がなされていたのか不明です。あまり一般化できない事例であるように思います。
F-1は、レンタカー車両であることを理由に減価を主張された事案で、このような主張は損害保険会社から時々なされます。走行距離が比較的長くなることなどを理由とするものだと思われますが、同程度の走行距離で中古車市場を設定しているのであれば、比較対象となる車両は同程度の価値を有することになりますので、レンタカーか否かは時価額算定にはあまり関係がないと思います。
4 レッドブックによる立証
一方で中古車サイトによる時価額が主張され、他方でレッドブックによる時価額が主張されているときに、大体の傾向としては中古車サイトによる時価額が採用されます(A-6、A-41、A-44、A-45、A-50)。
もっとも、事故車両の個別性が高く、中古車サイトでヒットした車両と乖離するなど、中古車サイトによる時価額が適切でない場合には、レッドブックによる時価額が採用されることもあります(B-2)。しかし、個別性が高いことによる乖離はレッドブックにも当てはまり得ますので、必ずしも中古車サイトによる時価額を採用しないでレッドブックの価額を採用する理由にはならないと思います。結局、中古車市場もレッドブックも的確に参照できるものがない場合には、減価償却の方法によることも検討する必要が出てくると思います(後記5)。
なお、F-1は、中古車市場とレッドブックの平均値を採用していますが、このような手法はこの裁判例以外には見られません。
レッドブックは、頻繁に発刊されていますし、年式等も細かく掲載されていますので、レッドブックを用いて時価額立証を行う場合は、年式等の選択を誤らないように留意が必要です(B-11)。
B-3のように、事故前の既存傷がある場合には、レッドブックを基準として割合的に減額する手法も見られます。
5 減価償却による場合
前記最判昭和49年4月15日は、定率法又は定額法によって時価額を算出することは、当事者間で異議がないような場合でなければ許容されないとしています。中古車市場がある場合には、大体の場合、減価償却によって算出される価格よりも中古車市場での価格の方が上回ることが多いと思われますので、あえて減価償却によることで合意するメリットはないように思われます。
一方で、中古車市場がないために個別的,具体的な価格算定の資料がない等の事情がある場合などには,減価償却の方法によることは損害額の算定として許されるとする裁判例が見られます(E-1~5)。この場合、まずは中古車市場がないことを、車両時価額を争う側において主張立証する必要があると思われます(A-19参照)。
6 その他
時価額の調査にあたり専門業者の査定を入れる場合が見受けられますが、査定額をそのまま採用している裁判例はほとんど見当たりません。調査手法や比較対象とした車両等によって、その信用性が厳格に判断されているためだと思われます。このような査定を経た場合に、査定料が発生しますが、査定額が信用できないとして採用されない場合には、査定料も否定されることになります(C-3)。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
お問い合わせ・ご相談は下記までどうぞ
弁護士 清水大地
TEL : 06-6311-8800
Email : d.shimizu@kyowasogo-lawoffice.jp
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆